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柔らかいトラウマ

エディは深夜まで試験勉強を行っていた。日が変わって少したった頃にドアをノックする音が聞こえた。


「まだ起きてたのね。試験勉強頑張ってるわね」


「姉さんもまだ起きていたの?」


「可愛い弟がこうやって頑張ってるのに私だけ先に寝てたら悪いわよ。はい、ホットミルクよ」


「ありがとう、ホットミルク。久しぶりだね。姉さんと一緒に暮らし始めた頃はよく作ってもらってたよね」


「あれからもう二年にもなるのね。なんだか信じられないわ。生きるか死ぬかの私が、今はこうして領主の姉をやっていて要職にまで就けているなんて」


「そうだね、あの頃は日銭を稼ぐのに毎日必死だったね。でも僕なんかそれ程苦労することなく順調にここまで来れたから運がよかったんだよ」


「まあ、運もあるけど運命よね。貴方が魚を売らなかったらセレス伯と出会う事もなかったし、ここセレオンなんて夢のまた夢だったでしょ」


「そう言われてみると感慨深いよね」


「今勉強しているのって国立学院に行くためというのは判るのだけど、どうしてそこまでして学院に行きたいの?」


「そうだね、僕の目標のためかな?ミノル君との野望の約束もその一つなんだけど」


「知略で世の中を征するだっけ?」


「うん、でもそんな大それたもんじゃないんだよ。僕は将来、といってもなるべく早くなんだけど使い道の判らない才を持った人が不当な扱いを受けない様な社会を作っていきたいんだ。

そのためには世の中をもっと沢山知って才の種類やその使い道にしても知られていない事が多いから解明していきたいんだ。

それで僕みたいな親から見放される様な子供がいなくなればいいなと思って」


「そういった理由だったのね・・・」


「ん?どうしたの?姉さん」


「あなたはやっぱり立派な弟よ。そんなこと考えていたなんて。姉さん嬉しいぞ」


「ちょ、ちょっと!姉さん苦しい!胸!胸に顔が押しつぶされる・・・息が・・・」


感極まったユキノに突然抱きしめられ、座ったままのエディは大きな胸に顔を圧迫され呼吸が出来くなるという危機に瀕した。

その後エディは胸の大きな女性を苦手としたとかしないとか。





13歳となったエディは10歳の小さかった頃とは別人と言っても良いくらいに背が伸び体格も良くなった。

もう既に立派な大人と言える。貴族になってからも武術の鍛錬は毎日続けている。

立場が上になる程に狙われる可能性が高くなる。護衛に任せきりだとイザと言う時に動けないでは話にならない。


この世界は戦争が絶えず行われている乱世の時代と言ってもいい。たまたま今はどことも戦っていないだけでいつ相手が攻めてこないとも限らない状態にあった。


戦争となった場合に領民とともに戦場に出向かなくていけなくその中で陣頭指揮をとるのが貴族の役目だからだ。

そのためにエディは武術のみでなく実から軍略も学びつつあった。



<数日後の夜>


「この将棋っていうやつは何度やってもミノル君には適いませんね」


「そりゃあそうだよ。僕は一応アマチュアだけど大会で何度も優勝しいるくらいだからね」


エディと実も出会ってから既に3年となる。実も高校を卒業して今は大学生だ。大学に入ってからは高校よりも自由な時間が増えたためまた世界のあちらこちらに飛び歩いている。だがどこに居ても夜はエディと一緒の空間になるみたいだ。

実も背は伸びた。伸びたが既にエディには抜かれていた。自分より五歳も年下の男の子に抜かれたことを悔しがっていたのは言うまでもない。


「で?君は国立学院に行くんだね?」


「はい、これから入学試験なのでまだ入学が決まった訳ではないですけどね」


「国立学院って才の能力を活かすための授業をしてくれる学校なんだっけ?」


「そうですね、大体はそれで合っています。才の能力もありますが、どちらかというと職に就くために相応しくなるための訓練所と言った意味合いが強いですね。あとは一般常識とか教養も学びます。

学生は生産系の人も戦闘の授業がありますし、武系の人でも座学を学んだりして自分に無いものも最低限補う様にしているみたいです」


「なるほどね。まあ君なら大丈夫だよ。君も僕と同じ学生になるわけだ。なんだか面白いな。とは言っても僕はあまり学校へは行ってないんだけどね」


「そうですか?ミノル君がどんな学校に通ってるかは判りませんけど僕もやりたかった事が出来て嬉しいです。ところでミノル君は学校を卒業したら何をするのですか?」


「卒業したら・・・そうだねえ・・・まだ入学したばかりだから先の事はあまり考えないんだけど、いつまでも両親のスネを齧っている訳にはいかないからね。そろそろ稼がないとね。まあ適当に事業を起こしてお金を稼ぎながら世界を飛び回ろうと思っているよ」


「それでは今までとあまり変わりないのではないですか?・・・」


みのるは学生だがいくつかの企業に投資を行っており、この投資した会社はかなりの成長を遂げている。

配当だけでも学生では到底稼げない額を得ていたのだ。

両親のスネ齧りと本人は言っているが全て自分で賄っており、むしろ今までに世話になった分の恩返しをしたい事を言っているんだろうとエディは思った。


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