エディの望み
セレオンに建設した各職の工房が稼働し始めたことによって人と物資が行き交う様になり街は活気付いてきた。周りは全て目新しい施設ばかりで道路も広く整備されており環境も申し分なかった。
セレオンにはカーソンからだけでなく、国内の遠方からも噂を聞きつけて移住してくる者も少なくはなかった。
カーソン領は国の南の辺境の地であるため家財道具を持ってやってくるのも一苦労なのだが、一旗揚げたいと思うのは人の常で一時の苦労を気にしていては出遅れてしまうとばかりに我先にと雪崩込んできていた。
街に人が集まると商売が盛んになり、経済も活性化し大きく発展していく。エディの家の周辺には住宅地が建てられて役場やギルドの出張所も用意されることとなった。
セレオンには十分な土地があるため区画も大きくとられているのだが、居住区を全て一戸建てにしてしまうと街の許容人数に制限が出てしまう恐れがある。
それを避けるために移住者に向けて集合住宅を用意している。この世界でも王都やカーソンの中心では集合住宅は珍しくない。
その多くは二階建てのアパート形式で一つの建屋に10世帯程度が入居出来るくらいの建物だったのだが、ここセレオンの住宅は地上四階、地下一階のマンション形式で一棟で80世帯、それを20棟用意していた。
地下のスペースは倉庫と何かあった際の避難シェルターを兼ねている。この地下シェルターはこのマンションだけでなくセレオンの全施設の地下に備わっていた。
マンションの一階には店舗が出店出来る様にもしているのでパン屋や魚屋、肉屋など生活食料品に関する店がいち早く入居していた。
研究会が発足して約1年足らずの短い期間ではなるが領内は急激に成長を遂げ、成功例としての報告は王都へも伝わっている。
その噂を聞いた人達が集まる様になり人口も経済も飛躍的に成長していった。
人が集まると善人ばかりとは限らず悪さを行うものも増え治安も悪くなりがちなものだ。
セレオンでは下町と呼ばれる区域を作らない様に配慮をする。
これは病気や何等かしらの原因で仕事にありつけない人達が出ることで行くあてもなく集まるのが原因で、職の斡旋、福祉施設の充実化を図り、孤児を路頭に迷わせる事のない様にしなくてはならない。
街の治安はセレオンの警備隊が警備にあたっているのが、城壁や国境警備といったところまでが守備範囲となっているため十分に人が確保出来ていない状況だ。
その不足分を補うために武人ギルドが中心となって自警団組織を発足させ街の警備にあるようになり、セレオンの警備隊と連携して活動を行いはじめた。
ここセレオン領は領都であるカーソンの北東にある属領なのだが、カーソンには他に3つの属領がある。
それぞれ子爵が受け持っており、各子爵たちとも研究会を通じて毎週顔合わせをしており良好な関係を保っている。
取りまとめ役となるカーソン辺境伯だが、後から判ったことだが領主の爵位は辺境伯で国での地位としては伯爵でありながら二階級上の公爵と並ぶ程の影響力がある国の重鎮らしい。辺境伯領は他国と接しているため力を与えることで対外的な圧力にもなっている。
研究会が発足してからの一年間の実績を評価され、工人ギルドと商人ギルドでもエディのシルバーランクへのアップが決定した。エディの身に付けられた青いバンダナと額当てが誇らしげだった。
エディが親から売られた商家も商人ギルドに属しているのだが歴史は古いがブロンズ止まりでエディにあっという間に抜かれてしまったことになる。この商家とは特に接することもないし解雇はされたがそれ以上に何かをされた訳ではないので関わることもなかった。
エディも13歳となった。
この13歳になることをエディは心待ちにしていた。
国立学院で学ぶためだ。そのための入学試験に合格しなくはならない。
カーソンにある国立学院は由緒正しい公的な学校で才の能力をより高めて将来の職に就く時に役立てる様に養成を行う機関だ。
学院に入学した時点で下民でも学人という一段上の身分となる。
学人になったとしても卒業後に就職できなければ身分は元の下民となってしまう。
エディが学院に行きたかったのはこの学院を通じて自分の知らない知識を学ぶ事により理を育てたかったからだ。
一般の図書館は庶民には一部のみ公開され貴族は全て閲覧できる。
そういった意味ではエディは図書の閲覧に困ることがないのだが、学院の図書館には一般の図書館でも見ることが出来ない様な貴重な図書が保管されているらしくエディはこれらが閲覧できるのを楽しみにしているのだ。
とはいえ、この学院は誰でも入れる訳ではない。入学試験が存在し、しかるべき試験に合格しなければらないのだ。試験の内容は学力と実技の両方で行われる。どの様な試験であってもエディは油断することなく事前に準備は怠ることはなかった。
領主代行のトーマスに無理を言って機会を貰った訳なので試験に落ちましたでは恰好がつかない。
「トーマスさんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいきませんからね。頑張って入学試験に合格しなければ」
エディは毎晩、寝る時間を削って試験勉強を行っていた。




