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言い出せない話

ユキノに頼んでいた諜報員の育成だが、初日に問題は起こったもののその後は順調に進んでいる様だ。


この諜報機関をかすみと呼ぶことにしたのだが、これは実体が定かではない組織という意味を込めている。


霞の候補生は現在、男女合わせて20名程だ。この20名を一期生とし、年々増員をしていく予定でいる。

諜報活動はすぐに情報を得られるものもあれば長年時間を掛けて少しずつ入手するものもあり人手は想像以上に掛かるものとなっている。


任務によって男性あるいは女性でなくてはならない場合もあるため比率としては半々に置いてある。


そして候補生は所属や本人の特定をされないために組織では別名で呼ばれている。


女性はアカネ、シズネ、カエデなど、男性はゲンゾウ、コタロウ、サイゾウと言った具合だ。

みのるから指定された名前はエディにとっては聞きなれないものばかりだったがユキノにはどうやらしっくりきている様だった。


アカネとコタロウは既にザリウス帝国の状況を探るために夫婦の商人に扮して潜入を行っている。他にも何人かが途中で抜けて任務に順次就いていた。


「姉さん、言われた通りに手裏剣というのを用意したけど、これって本当に役に立つの?」


「そうよ。手裏剣は暗器として定番なんだから。手裏剣は投げた時に確実に刺さる様にできているの。今回用意した四つの歯の手裏剣を十字手裏剣って言うんだけど、卍字型や歯がもっと多いものもあるわよ。


これは殺傷能力を得るというよりも相手を怯ませる目的で使う場合が多いの。手裏剣ではないけど苦無といった投擲用の矢じりを大きくした様なものもあるから。少しずつ色んなものを試してみたいのでお願いしてもいいかしら」


「やっぱりお姉ちゃんに頼んで正解だったみたいだね。よく判らないけど詳しいことは判ったよ。欲しい物があったら紙に描いてくれたら作ってみるよ」


ユキノは本格的に忍者部隊を作るべくエディに武器や道具の注文を行っていった。


こうした諜報員の選定は能力によるものが大きかった。諜報術として隠密性の高い能力や聴力の優れる者、遠視出来る者などの身体能力から火や水、風などの属性能力の高い者は遁術使いとして育てるつもりだ。


ユキノ自身は回復系の術しか使えないが遁術使いとして火遁の術を目の前で見た時は我を忘れて興奮していた。やはり映画やアニメで見た術が現実として見れることに感動したのだった。


能力があれば何でも実現しそうだが分身の術は実際は身体が複数になるのではなく幻術で焦点をずらすことで人が複数いる様に錯覚させるものであったり実際は地味だったりしてガッカリすることもあった。


「それにしても姉さん、以前よりも強くなってない?前はもう少し手合わせしても勝てそうな感じだったんだけど、最近どんどん実力差が出てるように思えるんだけど・・・」


「やっぱりエディもそう思う?いやあ、毎朝エディの稽古に付き合っているうちに昔の勘を取り戻したというか闘争本能が目覚めたというか調子がいいのよ」


「まあ姉さんが強くなってくれるのは嬉しい事だよ。僕ももう少ししたらここをしばらく離れないといけないから。

この調子だと大丈夫みたいだね」


「ここを離れるって前から言ってた国立学院の話?もうそんな時期なのね」


「うん、今年ようやく受験資格の年齢になったから受けれるんだ。学院では一般には公開されていない本が図書館にあるらしいからこの機会を逃したくなくてね」


「そうなんだ?それってどれくらいの期間なの?たまには帰ってくるわよね?」


「もちろんだよ。学院はカーソンだから船ですぐだし、夏と冬には長期の休みがあるからその間には戻ってこれるよ」


「寂しくなるわねえ。こっそり顔見に行こうかしら?」


「それは駄目だよ。部外者は立ち入れないんだから」


「何よ!私だってエディの家族よ。部外者じゃないわ」


「だったら、正式に面会で来てよね。忍び込んだら不審者として捕まるよ」


「まあ、学院に隠密行動をとる訳にもいかないわね。


そうそう、ところで学院の話、ちゃんとトーマスさんに話はしたの?」


「それが・・・言い出せる雰囲気ではなくて・・・」


「何やってるのよ!そう言う大事な事は早く言わなきゃダメでしょ!」


「そうなんだよね。判っているんだけど、ただでさえ多忙のこの時期に領主自らが抜けるなんて言えなくて・・・」


「もう、男だったらちゃんとケジメをつけなきゃ駄目よ。キチンと話せばトーマスさんも判ってくれるわよ」


「うん、わかった。明日話をしてみる」


そして翌日、政務を共にこなしているトーマスに学院の話をしたところ卒倒しかけたのだった。


トーマスの反応を見て駄目かと思ったエディだったが、その後トーマスに事情を話したところ何とか協力してもらえる事になった。

トーマスも普段は子供であるエディを大人として扱っているのだが、考えてみると学校に通いたいというのは同世代の子供にとって普通の事なのだ。

領主にとっても学院での見聞は今後役に立つはずと思い直してエディの学院行きを快諾したのであった。


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