徴税
二ヶ月の月日が流れセレオンが本格稼働するようになった。
セレオンの街は工房が中心になっており、街の7割が工業区域となっている。残り2割が商業区で住宅区域は1割程度だ。
セレオンに住まいを構える人もいるのだが、職人の多くはカーソンに家を持っておりセレオンに出稼ぎに来ている人が殆どだ。
まだセレオンには生活に十分な施設が整っていなかったのだが、これから利便性が上がっていくに従ってセレオンに家を構える人も増えていくだろう。
エディの住む領主館も完成している。
城とまではいかないが石造りの頑丈な建物だ。通常なら煉瓦や石を積み上げて造るのだがエディが造形で一気に作りあげたので継ぎ目もなく高密度の強度の高い構造になっている。
職人の仕事を奪ってしまってはいけないので内装関係は人の手で施工をお願いしていた。
領主館にはエディとユキノ、教育係のカターシャ、そして領主代行トーマスの四人が住んでいる。
住んではいないのだが政務を行うために日中は事務方の人間が多数出入りしていた。
カターシャによるエディへの貴族として相応しくなるための教育は順調とはいかなかったが二ヶ月も経つとそれなりの形にはなりつつある。
「セレオン様、また背中が曲がっておられますよ。右腕の袖のボタンも外れております。領主は常に誰の目から見ても完璧にしておかなければなりません」
と、この様な調子で仕事をしながらも朝から晩まで指導が入るのだ。
平民育ちのエディは貴族の苦労を身に染みて感じており、一見楽そうに見えて大変なことを理解した。
「セレオン卿、どうにか期日までに間に合わせる事ができましたね」
「はい、これもトーマスさんが色々と動いてくれたお陰です。僕は法律面や手続き関連については全くわかりませんでしたから」
「いえ、それをこなすのが私の役目ですから」
「ありがとうございます。それで、今の入居状況はどうでしょう?だいぶ埋まりましたか?」
「工房でおおよそですが9割、商店で8割といったところでしょうか。割り当ては全て終えていますが移転には時間の掛かるところもあるのでこればかりは仕方がないですね」
「そうですね。それと、税収の事ですが、今年度は非課税でいきたいと思います。カーソンへの納税も僕の方でカーソンにいろいろ施しているので相殺しても良いと領主様に確認をとっています」
「今年度はセレオン卿の私財からの充当でなんとかやっていけると思います。来年からはどうしましょうか?」
「税収の方法として売り上げから経費を差し引いた残りの分、所謂利益と呼ぶものですね。これの額に応じて課税をしたいと思います。これは商店とか工房などを一つの店として扱って店単位での計算となります。それで店から雇われて給金として受け取っている人達は年間の給金の額に応じて課税をします」
「それは初めて聞く税の徴収方法ですね。今までは職種に応じて一定額を納税していたに過ぎませんので管理が大変になりますね」
「確かに計算は大変になりますが今のやり方だと多く稼いでも一定額しか徴収できません。逆に病気で働けなくなっても職種で納税しないといけない場合もあるので公平に徴収するための仕組みなんです」
「なるほど、それには気付きませんでした。よくこの様な仕組みをお考えになりましたね」
「まあ僕の考えというよりも遠い国で実際に行われている方法を真似ただけですよ」
「それでもですよ。博識で頭が下がります」
「細かい事はこれから詰めていきましょう。今までの徴税官だけでなく税金を専門に扱う事務所も作らないといけませんからね」
エディは実の助言により住民や工房・商店などを登記することとし、誰がどこで働いているか、どこに住んでいるのかを役所で管理する仕組みを取り入れ徴税と連動させることにした。
まだ構想段階であるが施行は来年からなので十分時間があるので住民への説明も時間を掛けて行う余裕があった。
「それと河川の運搬もなんとか軌道に乗せることが出来ました。最初の頃は船頭に操作を覚えさせるのに苦労しましたが、慣れてしまえば嘘のように問題なく扱えています」
「そうですか、それは良かったです。物資の輸送用と人の旅客用の二種類の船になっているんですよね?」
「はい、船着き場も離れているので大丈夫です。輸送用は十隻、旅客用は八隻で今は回しています」
「では陸路の方も仕上げを急がないといけないですね」
「街道の整備ですか?」
「はい、河川は洪水などの恐れがある場合運行できませんので回避する手段が必要となりますので」
「なるほど。荷馬車が通りやすい道の整備を行うわけですね」
「今までの道では幅が狭かったので倍以上に道幅を広げて曲道の少ない直線にちかい道路になりますよ」
「それだけ聞くと河川の利用が霞んできますね」
「やはり一度の運搬料は船の方が勝りますからね。理想は両方が機能していることですよ」
従来は街道はもともとあった道を修復して利用するに留まっており、道路を作り直すという作業は滅多に行われなかったのだが、利便性があがり経済発展に繋がる事が理解される様になり街道の整備は領地にとって重要施策となっていった。




