表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/114

河川輸送

セレオンの工房地区で工房の建設に立ち会っている二人の姿があった。一人はセレオン領主であるエディ、そしてもう一人が領主代行のトーマスだった。


「それにしても領主の仕事ってこんなに沢山あるとは思いませんでした。息つく間もないとはこの事ですね」


「そうですね。他の領地などは代々引き継がれているものなので仕事も定常的ですね。あとは戦後復興の都市などはやる事も沢山ありますが、ここは全てが新規ですから、その比ではありませんよ」


「やはりトーマスさんが居てくれて助かりました。僕一人では絶対無理でしたよ」


「いやいや、なかなか立派だと思いますよ。私はフォローをしているだけですが、セレオン卿はここを開拓する初期の段階からやられている訳ですから。私の方こそよくぞここまでと感心しておりますよ」


「そう言ってもらえると嬉しいですね。この街が本格的に稼働するまでには輸送経路を何とか確保しないといけないですね」


「以前に言われていた河川輸送でしょうか?」


「はい、船を使って物資の運搬や人を乗せればかなり便利になると思います」


「そうですね。でも船の場合、一つ問題があるかと思います」


「ええ、僕もそれを考えていたんです。セレオンからカーソンに向かって川が流れているので船で下れば30分と掛からずに着くことが出来るでしょう。

でも、問題はカーソンからセレオンに向かう場合ですよね」


「はい、川の流れに逆らって船を進めなくてはいけません。通常ですと船の帆先にロープでつないで馬などで引くのですが、下りの四倍の時間が掛かってしまいます」


「下りが30分ということは登りだと2時間は掛かるということですね。2時間だと歩いて行くのとそう変わらなくなって船のメリットがなくなりますね。それに運行をさせると登りの船の到着を待たなくてはいけませんしね」


「はい、河川に大型船を入れる訳にはいかないので小型船を多く運行させて物量を稼ぐ必要がありますから、そこが悩みどころですね」


「その辺についてはアイデアがあります。一度船大工と通常の大工を数人集めて貰えないでしょうか?」


「おお!セレオン卿の発明が見れそうですね。判りました。至急手配致します」


すぐにトーマスはその場を離れて船大工と大工を集めに行った。

行動が早いのはいいのだが、これから行く筈だった所の予定はどうするのだろうと心配していた。


トーマスは二時間後に4人の船大工と3人の大工を連れてきた。


「お待たせしました。こちらの船大工と大工になります」


「随分早かったですね。もう少し掛かるのかと思ってましたよ」


「善は急げといいますからね」


「皆さんを待たせては申し訳ないので早速こちらを見てもらいましょう」


エディはトーマスを待っている間に手持ちの紙に船のイラストを描いていた。


「この船は通常の船の帆と違う形のものが備えられています。この帆を使えば風向きの真逆でない方向であれば風に向かって走らせることが出来ます。

河川敷は遮るものがありませんので風が強く吹く様になっています。この風を利用して船を川上に向かって進ませるというものです」


「セレオン卿、言っておられる事は判るのですが、風上に向かって逆向きに走らせる事ができるのでしょうか?今一つ信じられないといった感じなのですが・・・」


「まあそうなるでしょうね。なので一度模型を作って試してみましょう」


エディは大工の親方に小型模型の船を作れるか聞いたが問題ないとの事だった。


二日後、小型模型が出来たので池に小型模型を浮かべて鍛治で使う ふいごで風を作ってみる。


「おお!風の方に向かって走っている!信じられない!」


「実際は絶えず変わる風向きに対して帆の角度を変えて船を進ませるという具合です。完全に風下だった場合は船を斜めに走らせてジグザグで行けば航行は可能です」


その場に居た者達は構造は判っても原理は判らず仕舞いだったが、同じものを原寸大で作れば良いということだけは判った。


このヨットに使われる帆の原理は飛行機の翼と同じで丸い形をした翼に風が通ると上向きに浮力が働くのと同様で丸ませた帆を風が通ると丸まっている膨らみの方向に力が働く原理を利用したものだ。


エディもこの理屈を理解するのに結構時間が掛かった。無理もない。この世界の人は飛行機という存在すら知らないので揚力や浮力と言ってもピンとこないのだから。


「あと、もう一つあります。船の後方の両側に水車をつけます。この水車を風力で回す様にすれば風向きに関わらず船は進み続けることが出来ます。この水車と先程の帆を使えばどんな状態でも問題なく進むことができるでしょう」


水車の方は見ている方も理解できた。風車が回転してその回転力を伝達させて水車を回すといった具合だ。


「よくこんなものが思い付きましたね。いや、流石セレオン卿です。でも、これが軍事目的で使われる様になったら怖いですね」


「まあ、その時はその時ですね。進む速度は知れてますから。とは言え軍事利用は避けたいですけどね」



このエディの立案で河川運搬が飛躍的な発展を遂げることとなった。帆の原理はやがて大型船にも取り入れられる様になり航海にも影響を及ぼすのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ