脅威に備えて
<解説>エディのいる国について
国の名前はナルタニア王国といい王都はケルン。ナルタニア8世が
国王となっている。
ナルタニアの形は銃のホルスターの様な形をしており、銃身部を南向きにした方向で丁度銃身部分になる位置がカーソン辺境伯領となる。尖った部分を領地とし、南をウルセア聖国、西をマルーン公国、東をザリウス帝国と隣している。
カーソン辺境伯領の北部には深緑の森と呼ばれる深い森に囲まれていてエディが川の源流を見つけたあたりがそれにあたる。
王都ケルンは北北西に位置し、国のほぼ中心に構える。
王都とカーソンは深緑の森を迂回した形で街道が繋がっている。
セレオン領はカーソンの北北東にあり、東にはザリウス帝国との国境がある。
セレオンを除く属領三子爵はそれぞれの国に対する防衛拠点として領地を構える。西のマルーンに対しコルソン子爵、南のウルセアに対してエドモン子爵、東のザリウスに対してタレネイド子爵がその任に就いている。
王都ケルンからカーソンまでの距離は馬車で二日間の距離にある。
有事の際にはすぐに援軍は望めず陸の孤島となる可能性があった。
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エディは工場の建設予定地を造成し、簡易な地図を眺めながら一人の男と話をしていた。
男の名前はトーマス·カーソン。領主であるセレス·カーソンの実弟だった。実の弟と最初に聞いた時には耳を疑った。全く似ていないからだ。兄は粗暴な感じなのだが弟は知的で理性的なので性格は真逆と言っていい。容姿も逞しい武人たるセレスに対してトーマスは線が細く頼りない感じがする。
領主セレスがセレオンの領主代行として実弟を派遣したのだが兄弟の性格は似ていないが仲が悪いという訳ではなかった。
むしろセレオンが重要だと考えたからこそ一番信頼出来る人間を寄越したと見る方が正しいだろう。
「それにしてもトーマスさんがあの領主様の弟だなんて未だに信じられませんよ」
「あはは、よく言われます。あまりにも似てないので小さい頃、僕は血のつながりが無いのかと悩んだこともありますから。
でも、力では兄には及びませんが、頭を使うことなら僕の方が長けていますよ」
「そうみたいですね。領主様は直観的というか野性的な感じがしますからね」
会話をする二人の背後に一つの影が迫った。
「おう、坊主!誰が野性的だって?」
領主がエディの頭をガシガシしながら登場した。
「兄さん、こちらに来ていたんですね」
「領主様、こういうところです。野性的なのは・・・」
領主のガシガシはしばらく続いた。
「この前の報告ではここが軍事的にも考慮された拠点となるって事だったんでよ、見に来たって訳だ」
「やはり他国に何か動きがありますか?」
「まあいつでも隙あらばと狙っている奴らだからな。今までは貧乏な領地なんかにゃ興味がなかっただろうがよ。このところカーソン領もだいぶ潤ってきたからな。
だからと言ってすぐに来るとは思えねえが、数年以内ってところだろうな」
「また戦争ですか・・・どうして平和に暮らせないのでしょうね」
「ここは四国が交わるって事で軍事的にも経済的にも重要な役目を果たす場所だからな。この一帯を押さえるだけでも戦略的にはかなり大きな意味があるのさ。
で、坊主の防衛手段っていうのに今後の俺たちの命運が懸かっているって事だ」
ようやく解放されて領主から抜け出したエディが応える
「さりげなくプレッシャーを与えてくれますね」
「聞いた限りじゃかなり使えそうじゃねえか。ここだけでなくカーソンや各防衛拠点にも使えそうなら取り入れたくてな」
「はい、それは可能です。セレオンが終わった後にカーソンの体制を整えて順次国境の防衛拠点に移行しようと思っています」
「おう、それでいい。問題はそれの効果がどれ程のものかだな。実際に目にしてみないと判らねえな」
「そうですね。セレオン自体があと2ヶ月で完成する予定ですのでそれが出来次第お披露目としたいと思います」
「楽しみにしてるぜ」
話に納得したのか領主は機嫌よく去って行った。
「兄もずっと気にはしていたんですよ。今までも国境付近で小さな小競り合いは何度も行ってきましたから。
カーソン領の兵は他の領地よりも人数は多いですが、三方の国に対して睨みを利かせておく必要があるので人数も分散されてしまうのです。
いつ本格的に攻め入られてもおかしくない状況にあっても打つ手がないと言うのが現状だったのです」
「なるほど、そうだったんですね。兵の増員は見込めそうにないですか?」
「常駐となると厳しいでしょうね。兵の数が多くなるとカーソンだけの税収では維持していけなくなります。有事の際には増援部隊が王都から駆けつけてもらえますが、兵を動かすとなると通常の馬車で二日の距離ですが兵の移動だと三日から四日は掛かってしまいます。その間我々がここを死守できるかが問題なのです」
「それでは期待に応えられる様なものを作らないといけませんね」
「はい、セレオン卿が私たちの救世主になってくれると皆が期待していますよ」
「あはは、またプレッシャーが・・・」
とにかくプレッシャーには弱いエディだった。




