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セレオン男爵

夜中に行われたエディの施工工事を工人ギルドマスターが立会人として同行していた。


「ほほほ、エディ君はすばらしい能力をもっておるのう。これはもう神業と呼んでも良いレベルじゃ。

これでこの街も異臭から解放されて流行り病をいくらか防げる様になると良いのう」


工人ギルドマスターは長年の人生の中で何度も大きな流行り病を目にしており、その原因が街の不衛生に起因している事を理解しているが故に今回の衛星面の改善には期待をしていた一人だ。



一方、領主の館では


「領主様。爺は驚いております。あの少年の実力は想像以上でございます。これらを通常の事業として行った場合、領内の税収の何年分が必要となったことでしょうか」


「おう!そうだろう。あれがあの坊主の実力だ。恐らく実際はあんなもんじゃないんだろうよ。その気になれば国一つ消滅させる事も出来るかも知れねえからな」


「それは他国にとって脅威でしょうな。この国の味方で幸いでした」


「まあ、強制はしねえけどな。こういうのはお互いの信頼が大事なんだ。俺も坊主も損得勘定抜きで協力出来る関係になれればいいな」


領主と執事は何ら予算を使うことなく成功させた事業を高く評価すると共に街の衛星面を改善させるという偉業を成したエディを最大限褒め称えた。


エディが提案したこのプランもみのるとの相談の上で決まったことだが、実は更に先を読んでおり、下水道が発達すると今度は下水に生息するネズミも考慮しなくてはならない。昔欧州で大量発生したペストなどはネズミが媒介となって一気に蔓延したことを教訓として定期的な害虫駆除と繁殖防止策を考えていた。



先日の施工の後もいろいろとフォローすることが多かった。今後は職人達の手作業で作業が出来る様にしないといけないので土管を作る段取りや施工の仕方などを職人達を交えて話し合っている。



そして一週間が経ち次の研究会の日がやってきた。

今回の研究会は領主も参加していた。


「おう坊主、どうやらすげえことをしてくれたみたいだな。皆驚いてたぞ」


「ほほほ、まだですぞ。次には便器が待っておりますのじゃ、待望の便器ですぞ」


「爺さんの話は後だ。先ずは坊主と話をさせてくれ」


領主に話を遮られた工人ギルド長は話足らないかの様だが納得して話を譲った。


「で、次は何を考えている。爺さんの言う便器以外でな」


「はい、便器も手はずを整えておりますのでご安心下さい。それで次なのですが、これから産業が盛んになる事を考えた場合、ここの様な街中では問題が発生してきます。

それを見越して工業団地を作りたいと考えております」


「問題というのはどんなものだ?」


「これから立ち上げるのはいくつもの産業です。当然場所も必要となります。問題は場所だけでなく、工房が増えてくると騒音や排煙、排水、廃材の処理などいろいろと問題も伴ってきます。

このカーソン市だけではすぐに限界が来てしまいますので郊外に工房を集めた工業団地を作りたいのです」


「なるほど。今のここじゃあ問題となる程も工房もねえからな。そういえば王都でも同じ様な問題が出ていたのを聞いた事がある。

流石坊主だな。そういうところまで考えているとはな。

それで場所のあてはあるのか?」


「はい、ございます。私の住んでいる北の元廃村の近辺であれば広い土地と近隣には森林もあり木材の確保も出来ます。

それと先日もお話しました河川を使った運搬でカーソンと工業団地を結べば大量輸送が出来ます。

何れはカーソンから海へと運河を繋げて他国や他領との交易も可能になると考えております」


「そうか、候補があるのか。判った。誰かに現地を確認させよう。問題なければ研究会で重点施策として取組むことにする。

それで、河川を使った運搬なんだけどな。俺も以前同じ事を考えたことがあるんだがな。川幅は船が通るに問題ないんだが、川底が浅くて船が通せねえ箇所が何箇所かあって断念したんだ」


「領主様もお考えになられていたんですね。それについては問題ございません。私が船の航行に問題が出ない様に河川についても工事致します」


「なるほど。坊主の能力があれば何てことない訳だ。こりゃあ凄げえ味方が出来たもんだな。


それじゃあ、こうしようじゃねか。その工業団地一帯をセレオンという名とし、領主を坊主に任せる。今日からセレオン男爵を名乗るといい」


「え?いきなり男爵ですか?そんな急に・・・」


「単なる褒美という訳ではないぞ。喜ぶのはまだ早いってもんだ。自分の領地となることの意味を理解してるか?」


「領主となるということは全ての責任を負うということでしょうか?」


「判ってるじゃねえか。その領地の治政もそうだが、税収確保やセレオンはカーソンの属領だから納税もしなきゃならねえ。とにかく大変な事が山ほどあるっていう訳だ」


「それほどの大役を僕なんかで良いのでしょうか?」


「俺が良いって言やあ誰が反対する。まあ坊主にいきなり任せても上手くいくはずない事は判っている。しばらくの間は俺の所にいる事務官を領主代行として派遣してやる。治政とか難しい事はそいつに任せておいて領地の開拓を思う存分にやりゃあいいさ」


「・・・判りました。謹んで拝命いたします。でも、僕が属領の領主になって他の属領の領主の方はよろしいのでしょうか?」


「そんなもん直接聞けばいい。お前達、何か問題あるか?」


「いえ、問題ございません。むしろこのカーソン領の発展に繋がることなら喜ばしい事と存じます」


この人はエドモン子爵で確かキャシーの父上のはずだ。

エドモン子爵はまさか娘キャセリーヌが必死で探していた男の子が目の前にいるエディとは露にも思っておらず気にすることも無かった。一方のエディもまさか自分が居なくなってそんな大騒ぎになっている事を知らず、まさか子爵までが気にかけていたことを知る術はなかった。


「私も同感にございます。我が倅と同じ位の歳とは思えぬ立派さ。今後の活躍に期待致します」


続いての言葉はコルソン子爵。僕と同じ位の息子さんがいるのは初めて聞いた。


「私も反対する理由はありません。むしろ同じ属領主の先輩として力になれることは惜しまずするつもりですぞ」


最後はタレネイド子爵。3人の子爵の中では一番の年配でその分威厳がある感じだ。


「という訳だ。異論がない事を確認した。3人ともセレオン男爵の力になってくれ」


「「「御意に」」」


こうしてエディはセレオン男爵となり領地を持つ身となった。


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