恐ろしい報酬
領主はエディの言葉を一つ一つ確かめるかの様に頷いた。
「そうか。わかった。坊主も随分と苦労してたんだな。
その辺のボンボンとは違うわけだ。
で、そのスキルを知れば上手く利用しようとする輩が出てくるというのは簡単に想像がつくな。
まあ安心しろ。俺が後ろ盾になる限り他の貴族達には手出しはさせん。そのスキルも魅力的じゃないと言えば嘘になるが俺はどっちかというとお前の商才に期待してるんだ。
今後このカーソンの発展に寄与するなら最大限の後ろ盾になってやろうっていう話だ」
「ありがとうございます。私としても街が発展して潤うことに尽力を尽くす事については吝かではありません。
この街の特徴を活かして発展をすれば良いかと思っております」
「この街の特徴って何だ?」
「はい、この街というかこの地方は水に恵まれた住みやすい地域だと思います。水が豊富ならその水を活かさない手はありません。 具体的に言うと水車を使った動力源を用いていくつかの産業を発展させたり、水路を使った物流を考えております」
「ふむ、水か・・・確かに豊富ではあるがそれを活かそうなんて誰も思い付かなかったわな。で、先ずは何をすればいい?」
「はい、水車の動力元で製材産業を立ち上げます。水車で回転する鋸に木材を当てると木の板が簡単に作れます。
今まで人が二人掛りで引いていた板材も装置を使えば一瞬で作ることができます。板材をどう活用するかは大工の腕の見せ所です。
製材と木工、これらがこの街の産業として発展する要素になるかと考えます。
製材が起動に乗れば別の産業に着手するという形で段階的に進めていきたいと思います」
「なるほどな。やってみる価値はありそうだな。おい、ファーガソン、早速今の坊主のアイデアを形に出来る様進めてくれ」
「はっ、承知いたしました」
「続いてですが、この周辺の鉱脈を見つけることも致します。地図に記入しどこで何が採れるか。採掘事業にもなりますし、鉱山なら鍛治の発展にもつながります。
それと既にお話しているガラス産業ですね。従来と比べ物にならないくらい安いコストでガラスが出来ます。
試行錯誤になりますが品質の良いガラスが出来ればガラス工芸もひとつの柱になると思います」
「こりゃあ盛り沢山だな。これから忙しくなるぞ。まあしかし、こういったプロジェクトも一部で動くのも良くねえよな。
どうだろう、ギルドの壁を越えた有識者の集まりを立ち上げねえか?研究会と称してな」
「ほほほ、それは良いかと存じます。我が工人ギルドや商人ギルドだけでなく幅広く代表者を募って意見交換をすればより良い意見も出やすいでしょうしな」
「じゃあ、その有識者の選定は爺さんに任せた。もちろん坊主はメンバーとして出席は必須だからな」
「え?僕がですか?」
「当たり前だろう?誰を中心に動いてると思ってるんだ?坊主抜きじゃ話は進まねえだろうよ。 ん?身分がどうのこうのとか思ってねえだろうな?」
「いや、普通思いますよ。僕はまだ12歳のその辺にいる小僧ですよ?」
「年齢なんて関係ねえよ。この世界は実力主義なんだ。高い身分で胡坐をかいている奴なんて使えねえよ。そうだな、うん。決めた。坊主、今日から準男爵な」
「ええ!!!そんな思い付きでいいんですか!?」
「ほほほ、面白いのう。この歳で先行きの楽しみは無かったがこりゃ長生きせにゃいかんみたいじゃのう」
「おうよ!爺さんまだおっ死んでしまうにゃ早いぜ。なんせこれからが始まりなんだからよ。 坊主、準男爵って言っても一代限りの名誉貴族だぜ。まあ肩書みたいなもんよ。だが、実績次第ではもっと上の正規の爵位の昇爵も夢じゃないぞ」
「う~ん、爵位とかどうでも良くて皆が平和で幸せな世の中ならそれでいいです」
「がはは!欲のない奴だな」
「我が工人ギルドはこのプロジェクトが成功した際の報酬としてエディ君にはシルバーランクを用意する予定じゃ。楽しみにしているとよいぞ。まあこう動けば商人ギルドも同調するじゃろうけどな」
「うう・・もうお腹一杯です・・・」
「まあそう言うな。だがいきなりお前は今日から貴族だ!というのは無茶振りだというのはわかる。そこでだ。坊主が立派な貴族になれる様に家庭教師を付けてやろうと思ってな」
領主がそう言ったタイミングで斜め後ろに控えていた秘書と思わしき女性が一歩前に出た。
「はじめまして。カターシャ・モルドと申します。エディ様の教育係として仰せつかりました。宜しくお願い致します」
「エディです。こちらこそ、宜しくお願い致します。カターシャさん」
エディは自分事態を認識する間もなく物事が進んでいくのに唖然としているうちにまた一つのイベント発生だ。誰か止めて欲しいと真剣に願った。
この目の前に立つ教育係の女性。名前からして貴族なのだろう。
見た目はユキノと同世代か?少し話しただけでもキツそうな性格に感じられるのだが上手くやっていけるのだろうか?
家には自分だけではなくユキノもいるのだ。そちらの方も心配になる。
「カターシャはな、王都に近い領地の侯爵令嬢でな。モルド侯爵が俺のところで預かって欲しいと頼まれていてな。ずっと断っていたんだが坊主の事を考えるといい機会だと思って来てもらった訳だ」
「ということは今日僕が話を聞く前から既に決定事項だったという訳ですね・・・」
「そういうことだ、諦めろ。カターシャにみっちりと教えてもらうといい。立派になってくれよ、準男爵」
ガハハと領主は豪快に笑う。エディは何と返していいかも判らず圧倒されまくった。




