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守るための力

昨晩は気を失ったエディは実とは会えなかったので翌日の夜に昨日起こった出来事について報告した。


「それにしても危なかったじゃないか?昨晩は君がいないのでおかしいと思ってたんだよ。

エディ、君の話では危うく死ぬところだったんでしょ?」


「今回は本当に駄目かと思いましたよ。いや、本当なら確実に死んでいましたね。

獣や魔物は対策してたんですがまさか人間の方が危険だなんて。

ホント嫌になりますね・・・それに咄嗟の事とは言え人を殺めてしまったし・・・」


「それは仕方がないんじゃないかな?

人は罪深い生き物なんだよ。これはどの世界でも同じみたいだね。

私利私欲で動く者、宗教戦争、自己中心的、こちらの世界の歴史でも人類のしてきた偉業は多いけど愚業もそれ以上に多いからね。

でも悪事を働くものを断罪するのは正しい行いだと思う。

気にするなとは言わないけど自分なりに受け入れなければ進まないんじゃないかな?

少なくともユキノさんは守ることは出来たわけだしね」


「うん、そうですよね。まだスッキリと割り切れた訳じゃないけど、僕は今守るべき人がいるんだと実感しました。

でも今のままじゃ駄目です。昨日の様なことがあれば今度は死んでしまいます。

それじゃあお姉ちゃんは守れません。もっと強くならくてはいけないんです」


「を?やっぱり君は成長しているみたいだね。今回の事できっと覚悟ができたんだろう。応援してるから頑張ってね! それにしてもお姉ちゃんか・・・この件で彼女との絆ができたみたいだね」


「はい、ありがとうございます。ユキノお姉ちゃんは僕の唯一の家族です。

それで相談なんですが、実君、僕を鍛えてくれませんか?」


「それって格闘技ってことかな?ここで覚えたとしてもそれは理屈を覚えるだけで実際に役立つとは限らないよ?無駄に終わる可能性があってもやるかい?」


「うん、それでも知識として知っておきたいのです。覚えたものは毎日自主稽古してみます。

ここでのことは切欠でいいのです。あとは僕の努力次第だと思いますので」


「そっかあ・・・うん、僕は構わないよ。ここでの時間は無限だしね。まあ、試してみるのもいいかもね。僕も君に死なれたら困る訳だし。で、どんな格闘技がいいの?」


「どんなってそんなに種類があるのですか?こちらの世界では剣術とか護身術とかしか聞いた事がありませんけど」


「まあね、柔道、合気道、空手、ムエタイ、マーシャルアーツ、いろいろあるよ。国があればその国の数だけ培われてきた武術があるはずだよ。格闘技だけでなく剣術も覚えた方がいいんじゃないかな?

戦いの場というのは様々だからね」


「剣術もですか?僕は兵士になりたい訳ではないですが、今が平和なだけで他国に侵略される歴史を繰り返されてきたこの世界ならいつ戦争になって駆り出されても不思議じゃないですからね。

それと、剣術以外のものは聞いた事のないものばかりですけど、実君はその中でどれができるのですか?」


「ん?全部だよ。小さい頃から世界中を回ってるからね。単独でジャングルに入ることもあるから格闘技だけでなくサバイバル術なんかも一応身に付けているよ。それこそ知らないと死んじゃう世界だからね。そういう所は」


さらりと実が語ったのだが、実は空手と剣道で小学生チャンピオンになっている。他の競技は参加していないだけでもし参加していれば優勝または上位への入賞は確実だったろう。中学・高校になってからは時間を別の事に当てたくて特に競技には参加していなかった。

だが実はそれらの武術はお遊びに過ぎなかった。日本での武術はお遊びに過ぎない。

世界のどこかでは武器をもって戦いが続けられておりジャングルの奥地はで獰猛な獣や毒など危険な生物が沢山いる。そういうところで生き残るには自分自身を順応させていく必要がある。

実は自分から危地へと飛び込んで行くタイプなのだ。


その日からエディは夢の中で知識と戦闘の実技を半分ずつの時間で学ぶこととなった。夢の中でこの様に時間を費やしてしまうことは睡眠不足になると考えるのだが、この空間では実際には時間の流れというのは発生していない。だから思う存分に知識を学んで身体を動かしたとしても実時間としては一瞬の出来事であり、実際の睡眠時間の妨げにはなっていなかった。



翌朝



「エディ、もう朝よ、起きなさい」


「・・・ん?もう朝・・・ふぁ~~ 昨夜は随分と長い時間話したり訓練をしてたからなあ・・・」


「もう、何寝ぼけてるの?ちゃんと顔を洗ってきなさい!」


すっかりお姉さんになったユキノに起こされエディはベッドから起き上がり部屋を出ようとする。


ギュッ!


柔らかいものに包まれた。いい匂いがする。とても温かくて気持ちがいい。


「・・・エディが無事でよかった」


昨日の出来事を思い出してユキノがたまらなくエディを抱きしめた。


「お姉ちゃん・・・」


ユキノが昨日の事を思い出しての行動だというのは理解しているのだが、エディも年頃の男の子で抱きしめられると色んなものが当たってくる。

特に柔らかい二つのものとかが。そして朝の起きたてと言えば男性特有の生理現象があるわけでエディとしてはユキノにバレる前に離れたかった。


「ん?どうしたの?エディ? ふふふ、そういうことね」


エディが何を焦っているか理解したユキノはエディを開放した。


「もう!僕たちは姉弟なんだから!突然抱き着かないでよ!」


「ごめんなさい。あなたがあまりにも可愛かったから」


ユキノは笑いながら慌てて顔を洗いに行くエディを見送った。


エディはまだ12歳でユキノは26歳。姉弟としても年が離れ過ぎている。だが親子というには年が近い。微妙な年齢差だった。

ユキノは元の世界では妹がいたのだが弟がいたらこんな感じなんだろうなと思った。



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