高校生 高橋 実
僕の名前は高橋 実 高校3年生。2年程前から毎晩夢の中に一人の少年が現れる様になった。
最初はリアルな夢だなあと思ったくらいだが相手にはきちんと意思があり、こちらの応答も正確で夢にありがちな矛盾点が全くと言っていいほど無かった。
彼の名前はエディ。彼の世界では貴族でなければ単なる名前だけらしい。
話を聞くとフランス革命前の中世ヨーロッパの様な生活に近いのだが、産業というべきものがあまり発達しておらず、娯楽も殆どないらしい。
ひょっとしたらエディからまだ聞けてないかエディもまだ子供だから知らないのかも知れない。
夢の中に出てくる友人エディは才という能力が劣っていたため親捨てられたらしい。
昔は貧乏で泣く泣くと子供を売ったり殺めたりしたという話を聞いたことはあるがどうやら彼の家はそうではなく自分達にとって利がないという理由だった。
あちらの世界ではそういう感覚なのだろうか?違うと信じたい。
親から身柄を商人に売られ下働きを始めたけと続かなかったらしい。
後から聞いた話では僕のアドバイスも少なからず影響していたみたいで少し罪悪感を感じてしまった。
だからという訳ではないが僕はエディの味方になることにした。スポーツ観戦とか勝負事はいつも負けてる方を応援してしまう性格だ。
人生詰んでいそうな少年エディに協力して彼の人生を逆転満塁ホームランに出来るならしてあげたいものだ。
彼から向こうの世界の事を聞き、役立ちそうなものを考えてアドバイスした。
非常に素直な子で飲み込みも早かった。
勉強は最初は苦手だったけどマンツーマンで指導していくうちにどんどん吸収していった。
彼はどちらかと言うと褒めて伸びるタイプだと思う。
そうして僕は彼との約2年間を夢の中で一緒に過ごした。
だけど不思議だ。彼と夢の中ではかなりの時間過ごしている。大半はこちらの文化や勉強を教えたりしてるんだけど気付くと半日以上、酷い時は夢中になって丸一日に近い時間を費やしたりするんだけど夢から覚めて起きてみると寝てから時間がそれ程経っていなかったりするのだ。
考えようによっては人生の時間を余分に使える事になったのだ。
それは僕にとっては大きなメリットだ。
考える事が好きな僕は物事を考えているうちに時間が経ってしまい結局何もできかなかったということがたまにある。これが現実時間と夢の時間の両方が使えるとなったら人生の寿命が延びたことと同じ様なものだ。
いつまでこの状態が続くか判らないけど有意義に活用したい。
出会った時は僕も高校1年生で背が低いのが悩みだったが、今では平均身長くらいになっている。
だがまだ13歳のはずのエディはほぼ僕と同じくらいの背丈だったりする。
向こうの世界は巨人族なのだろうか?
こちらの世界で特に日本では日常がすごく退屈だ。
もうすぐ高校を卒業するけど、このまま大学へは行かずに世界を旅する予定だ。
高校に入ってから自由になる時間が少なかったのでその分を取り戻さないといけない。
そういえばアボリジニが日本の電化製品をお土産に欲しいって言ってたな。
なんでオーストラリアの原住民がそんなの欲しがるんだろう?やっぱり時代なのかな?
そんな事を実は学校の昼休みに考えているとクラスメイトの女生徒から声を掛けられた。
「実、もうお昼食べたの?相変わらず早いわね?まさか早弁したんじゃないでしょうね?」
彼女の名前は立花 早苗。僕のクラスメイトであり幼稚園の頃から一緒の幼馴染である。
「早弁?ああ、小腹が空くからいつも食べてるよ。でも、さっき昼の弁当も食べたよ」
「あんたねえ、どれだけ食べれば気が済むのよ。それでも太らないって羨ましいわ」
「あはは、朝から鍛錬してるから早起きなんだよ。どうしても昼まで持たなくてね」
「稽古、まだ続けてるのね?私も昔は付き合ってたけど付いていけなくなって挫折したわ」
「しばらくやらなかったら動きが悪くなってしまうんだよ。一瞬の遅れが命取りになるからね」
「それってどこのサバイバルな世界よ。日本でそんな危険な場面なんてないでしょう」
「まあそうだね。でも高校を卒業したらまた世界中を周ろうと思ってね」
「やっぱり行くの?実とは大学でも一緒に居れると思ってたんだけど・・・」
「うん、どうしてもヨーロッパに行きたくてね。何度も行ってるけど中世の頃について調べたいんだ」
「それって前に話してくれた夢の中の少年の話と関係してるの?」
「エディだね。そうなんだ。どうやら単なる夢でなさそうなんだ。彼と繋がったのも運命みたいなものかな。彼が成功することで何か見えてきそうなんだ。
まあ、僕がヨーロッパに行くのはそれもあるけどビジネスもあるよ」
「高校生社長は言う事が違いますね。輸出関係だっけ?」
「ヨーロッパだけでなく周辺地域を含めての交易だね。日本で流行ったものが時間差で向こうでも流行る感じだからネタには困らないよ。逆に向こうから日本に入ってくるものも少なからずあるからね」
「まあいずれにしても高校生活もあと少しだから、私の事、放ったらかしにしないでちゃんと構ってよね」
「あはは、了解。善処します」
「ほんとに判ってるのかしら・・・」