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少女の願い

<ある少女の視点>


一人の金髪で綺麗な髪の少女がいた。名前をキャセリーヌと言い、エディの生まれた村の近くにある貴族の屋敷に住んでいた。

年はエディと同じ10歳。小さな頃から村に来て一緒に遊んでいたのだが、村には女の子が少ないため村の男の子は女の子の遊び何て出来ないと言い嫌がっていたのだが、エディだけはキャセリーヌの遊びに文句を言わずに付き合っていた。そんなエディはキャセリーヌにとっては王子様の様に見えていたらしい。


親しく遊んでいたエディがある日突然いなくなりキャセリーヌはエディを探して村中を聞き回ったが子供達は知らないと言うし大人は気まずそうな顔をして話をはぐらかしていた。

エディの両親に話を聞こうと家を訪れても居留守なのか反応がなかった。

その日は諦めて屋敷に戻ってから食事の際に両親にその事を話してみたら両親も非常に気まずそうな態度だった。


そしてキャセリーヌがエディが売られた事を知るのはそれから3か月後の事だった。売られた事を知ったキャセリーヌは物凄い勢いで両親の元へ向かいすぐにエディを買いも戻す様に懇願した。


「お父様!お母さま!ひどいではありませんか!!エディが売られた事を知っていて私に隠していたのですね!! それは今ではどうでもよい事です。早く、早くエディを買い戻して下さい!!」


「キャセリーヌ、落ち着きなさい。買い戻すと簡単に言うけど彼は我が家に何の関係もないのだよ」


「何を言っているのですか!お父様!エディは私の大切な友人なのですよ!関係ない筈がないではないですか。一刻も早く買い戻して下さい!!」


「落ち着きなさいな。キャセリーヌ。今まで屋敷で大きな声など出した事のなく私達両親に対しても何らおねだりしたこともなかった貴女がそれ程にまで言うのです。お父様はきっと貴女のためになる様に計らってくれますよ」


それは母親の願ってもいなかった助け舟だった。


「・・・う~ん、しかしだな・・・」


考え込む父親に対して母娘の視線が集中する。何かを期待するといった視線だった。


「よし、わかった。お前達には適わないな。使いの者を出さしてエディ君を連れ戻しなさい。相手の商人が揉める様なら金額を上げても構わない。手切れ金とすれば良いだろう」


「お父様!ありがとうございます!!」


キャセリーヌは先程までの表情とは打って変わった万遍の笑みで笑いかけて父親に抱き着いた。

母親はその様子を微笑ましく黙って見守っていた。


充分納得できる対応に満足してキャセリーヌは部屋を出ていった。


「それにしてもあの子がまさかあの様に迫ってくるとは驚いたな」


「はい、今まで私達の前で感情を表面に出すことはあまりありませんでしたが貴族という立場を理解しての事でしょう。あの子はすごく賢い子です。でも、護衛の者達に聞いたことがあります。村に遊びに行ってエディという子と一緒にいる時のキャセリーヌはとても活き活きして子供らしいのだと」


「本当なのか?キャセリーヌが・・・まさかその子の事を・・・」


「まだあの子は小さいですし今はその様な感情はないかも知れませんが何れはそういう気持ちに気付くと思いますよ」


「それはそれで問題だな。当家の跡継ぎの問題もある。一般の民などと一緒に出来ぬからな。それだけは譲れんだろう」


「あら、それなら解決方法がございますよ。彼方が頑張って下されば良いのですから。私はいつでも準備できてましてよ?」


父親は藪蛇だと思った。早く次の子をと催促されてしまい拒絶する訳にはいかなかった。


約一年後にエドモン子爵家に待望の長男が誕生したのだが、そのきっかけが今回の騒動であったことを知る人は少なかった。



エドモン子爵家の家人が使いに出されてエディの雇い主である商人のところへ向かったのだが一足遅かった。エディは解雇されて放り出されてから二週間以上が経過していた。

既にエディは場所を離れており、街の橋の下から実のアドバイスを受けて廃村を拠点としていたので誰もエディの消息を掴む事はできず仕舞いだった。


家人と一緒に戻ってくることを心待ちにしていたキャセリーヌはその悲報に落胆した。


「大丈夫、きっと生きていますよね?私にあんなに優しくしてくれたエディなのですから・・・きっと・・・」


「そうですよ。見つからないということは無事に過ごしているということです。街には捜索願は出しておきましたので見つかれば一報が入る様になっています。ですから今はそれを待つことにしましょう」


一足遅れとはいえ、その時点までエディは無事だったのだ。今もどこかへ奉公しているか働いているのだろうと信じキャセリーヌは朗報が入る事を待つことにした。


キャセリーヌの両親は貴族である娘と下民の子が将来一緒になるのではという不安から最初は取り合わなかったのだがキャセリーヌのあまりの落胆ぶりと探し出そうとする執念に負けて今ではエディがどこかに無事で居てくれることを祈る様になっていた。

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