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第二話

 僕史上初の快挙、登校初日から友達が三人も出来た。しかも、友達と一緒にガールフレンドまで! これがモテキというヤツか!? 違うと思うけど……いや、でも、少しくらいはモテキじゃね?


『推理小説研究会』? 


「推理小説研究会って、三人はもうそのクラブに決めてるの?」

その予定なんだけど、どうやら我々の中に裏切り者が潜んでいるようだ! なぁ! 浩平!

シンヤ君はコウヘイ君に視線だけ送る。

「勝手に決めたのはシンタロウだろ? だから、僕は皆で生徒会に入ろうってはじめに言ったじゃないか」

あんな、権力の犬に成り下がるのはゴメンだね! 俺には向かんからって初めから断ったじゃないか! まったく、中学でも生徒会長なんてやってたヤツは頭が固くてイカンな!


「ハイ、ハイ! ケンカやめ! 伊達ちゃん困ってるでしょ!」

あ、今度はミカちゃんが仲裁に入った。このパターンもあるんだ。

「とりあえず、見学だけでもしてみればいいんじゃない? 決まっているクラブがないなら、だけど」

ミカちゃんの優しい笑顔に見とれていると、先生が教室に入ってきて授業が始まった。この話はまた後でってことになった必然的に。


 放課後。

 一度、生徒会に入るのも一つの選択肢だという意見がでたけど、それは僕的にもちょっとって思ったからコウヘイ君には悪いけど『推理小説研究会』を見に行くこととなった。僕とシンヤ君とミカちゃんの三人で。


 本日の推理小説研究会の活動場所は、3-Bの教室。ホワイトボードには、各クラブの活動場所が掲示されている。それにしても、この学校クラブが多いな……進学校なのに。それが売りみたいなことも言ってたようなきがするけど。僕達三人は二階に続く階段へと向かった。


 上級生の教室って、やっぱり緊張する。放課後でも本当に近づいていいのかちょっと躊躇があるよ。

シンヤ君には全くないみたいだけど。


「たのもーーー!!」

勢いよく3-Bの教室の扉を開く。


「お? おおー! 君は躊躇ないな! 新谷くん。だがしかし! その心意気の良さはとても頼もしいぞ!」

褒めても何も出ませんよ、先輩! キッパリ断りを入れるシンヤ君。なんて大物なんだ。

「いやいや、来てくれただけで嬉しいよ! ささ、この紙に名前を書いて部長に提出な♪ といっても部長は俺だけどね!」

先輩もシンヤ君に負けてない! このまま何も言わないと勝手に入部の流れになってしまう。

「あの、とりあえず見学させて欲しいんですけど」

「見学っていってもウチは特に見るものないよ? な、陽介!」

「エージ、それは威張れることじゃないから。やっぱり何か魅力的な活動しとかないとマズイって、一時的でも」

先輩方、作戦を立ててるところ悪いのですが丸聞こえですよ。

「三人とも、立ってるのもなんだから座りなよ、その辺どこ座ってもいいから。」

部長ではないもう一人の先輩、流れ的に副部長さんだと思われる人に勧められ僕達は適当な所に腰を落ち着けた。

「そうだ! お茶を出さなきゃな! あっ、ごめん今ちょーーどお茶葉きらしてたんだったー」

いや、最初からお茶とかないし! ツッコミを入れられる部長。

ああそうか、ここは『コンビ漫才』なんだね。


 「それじゃあ、皆座ったところで。早速この用紙に名前を……」

だから、急ぎすぎだって! まず自己紹介だろ。

「そうだった、そうだった。では改めて、俺は『推理小説研究会』部長の早川英二、『永遠の十七歳』の称号をもったただの高校生さ!」

ごめん、最後のは聞き流してくれていいから。

「それで、俺が副部長の桜井陽介。まぁ二人しかいないんだから片方が部長なら必然的にもう一人が副部長だってわかると思うけど。」 

 先輩達二人のほのぼのした雰囲気に、とりあえず胸をなでおろす。

上級生ってどうしても高圧的なイメージだったから、まぁ入部の強要みたいなのはあったけど。


 先輩達二人と親しげに話をしているシンヤ君。その姿を見て、ふと疑問に思った。入学したてのシンヤ君がこの『推理小説研究会』の存在を知っていた理由。

「シンヤ君は先輩と知り合いなの?」

知り合いっていうかーなんていうか。中学生にカツアゲされそうになってたところを助けただけだよ。


 「うそだ! あれは、中学生レベルの体格じゃないよ!」

部長さんはブルブルと体を震わせた。

「先輩、ケンカは体格でするんじゃないですよ。自分がいかにして、相手より先に優位な状態に持っていけるかが勝負の鍵です!」

 うん、新谷くんの非情な戦術でそのへんはよくわかったよ。不意打ちで相手を蹴り倒して、仲間一人の足を人質に戦わずして敵を撤退させたお手並みお見事でした!


「なんでそれだけで逃げていったの? 確かに怪我するのは誰だって嫌だと思うけど」

ミカちゃんがもっともな疑問を投げかけた。

「そいつらが柔道部だったから、かな。」

えっ? カツアゲするのに柔道着来てたの!!?


「そんなやついねーよ! 耳だよ、耳を見て柔道部だってわかったんだ。柔道やってる奴の耳は変形しててな『柔道耳』って言われてる。坊主、筋肉質以外で野球部と見分ける時にも耳を見ればわかるんだ。」

 結果的に逃げてくれてたけど、スポーツマンだから逃げたというよりはそれ以上に怪我は困る立場なんだろうな。怪我で試合に出れないともっと酷い仕打ち受けるとかね。その鬱憤を離れた町まで来て発散しないで欲しいもんだよ全く!


 「それ、逃げなかったらどうしたの?」

その時は悲惨な末路を辿るだろうね、相手が。

本気とも冗談とも取れるシンヤ君の言葉だが、ミカちゃんの悲痛な顔を見て本気でそうなることが分かってしまう。そして、そう思わせるシンヤ君のスゴさも。


 「そう! それでだな! 助けてくれた恩人にお礼に食事をオゴって話を聞いてみたら、今年ウチに入学すというじゃないですか! これもなにかの縁です、これはもう『推理小説研究会』のボデーガードに、いや是非ウチの部員に! とお誘いしたわけなんだよ」

バタバタとオーバーリアクションかつウロウロ動く様は、宝塚を見てるみたいだった。


 へぇ、それでなんだ。こちらに全然有益なものを感じないんだけど、シンタロウはなんでここに行く気になったの?

「それは、あれだ……活動内容的な?」


賄賂でも受け取ったの!? 


んなことするか!

二人の押し問答が、まだ続きそうなのでいい話題が出た今聞いておきたいことを質問した。


「先輩、それで『推理小説研究会』ってどんな活動するんですか?」

部長に目をやると、背中しか見えない。窓側に顔を向けて立っていた。

「そのー、なんだ、小説読むだろ。面白いだろ? あこがよかったとか悪かったとか話し合うだろ? 面白いだろ?」

 …………以上だ!! 胸を張りより一層体を反らす部長。

それは、なにもないってことでは……?

「んー、あとはほとんど自由だね。宿題したり、勉強したり、小説の内容の途中で犯人を推理する為の図作ったり。最後が一番活動らしいかな?」


 シンタロウ、特に縛りが無いからこのクラブにしたんでしょ? 

「いいだろ、運動部は面倒なんだよ! スポーツはな、のめり込むよりたまにやるから面白いんだぜ!」

苦しい言い訳のシンヤ君がちょっと不憫な感じに。


そうだ、そうだ! 副部長が何かを思い出して二人の会話に割り込んできた。

「あったよ! ウチの活動らしい、活動。定期的に会報を出してるんだ、研究成果を書いて残してる。簡単な推理問題とか、トリックの検証とか」

 陽介、それ前回いつ書いたっけ? うなだれる副部長。目尻に涙の粒を溜めて副部長の肩を優しく叩く部長。

本当に大丈夫なのか? このクラブに入ってしまって……。

僕の心配をよそに、シンヤ君は超ノリ気である。ミカちゃんを説き伏せるようとしている。


「さて、見学もそこそこに。そろそろこの紙に名前書いてくれるか?」

なにも見学してませんけど! 僕が叫んだことは届かず、部長は紙とボールペンを僕達三人分並べてくれる。


 シンヤ君は文句無しで名前を書いてしまっている。ミカちゃんは仕方ないなーと言いながらもシンヤ君にならって名前を書いた。


「伊達ちゃん、名前なんだっけ?」

え、基紀だけど。基本の「き」に紀元前の「き」って漢字。


はい、完成! 僕の名前が書かれた入部届けが机の上に置かれ、まっさらの紙を奪っていくシンヤ君。

「えっ、これ」

このクラブ、ちょっと風吹くだけで今にも消えそうなロウソクみたいなクラブなんだよ。救済だと思ってさ、ダメか?

「特に入りたいクラブがあるわけじゃないから別にいいんだけど。」

じゃー決定!


 最初から、二人が入るのであれば僕も入るつもりだった。そうすればまた少し、友達と過ごす時間が増えるから。可愛い子のそばにいれるからってのも理由だけど。


 こうして、僕達三人は正式に『推理小説研究会』の部員となった。




後半がセリフばかりになっているのは、人が多いせいです。そうに違いない!!

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