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将棋入門一歩前!  作者: 稲葉孝太郎
対局してみよう!
58/60

感想戦をしてみよう

「そっちが良くなる順は、何回かあったと思うけどな」

 菅原(すがわら)くんはそう言って、局面を戻し始めた。

 手伝いたいけど……あんまり覚えてないんだよね。

「んー……あ、思い出した」

「何をだ?」

「1回目の3七桂に、4六銀だったんじゃないかな?」


挿絵(By みてみん)


 3九金と受けたあとは、チャンスがなかったと思うよ。

「そりゃ詰むぞ?」

「え?」

「2九桂成、3七玉、2五桂、1五金までだ」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 あ、ほんとだ。

「ごめん、詰むね」

「3八金と打った局面は、既に先手負けだろう。先に7四桂があるかどうかだな」


挿絵(By みてみん)


「同歩、5五馬だっけ?」

「それは同銀だ。そのために4六銀を打ってるんだからな」

 ……そういう仕組みなんだ。

 4六銀にそういう意味があるのは、全然気付かなかったね。

「じゃあ、7四同歩で意味なくない?」

 桂馬のタダ捨てだよ。

「5五角と繋いで、どうする?」


挿絵(By みてみん)


 同銀、同馬……また王手だね。

「7三桂と跳ねて?」

「それは3九金と打たれて、マジで攻めが切れるんじゃないか? 7三角だろう」


挿絵(By みてみん)


「ここでどうするかだな」

「同馬、同桂は?」

「それが第一感だが……次の手が難しいな……」

「同桂の瞬間、私の王様は詰めろ?」

 私が尋ねると、菅原くんは頬を掻いた。

「ちったあ自分で考えろよ」

「……ごめん」

 そんな言い方しなくても、いいよね。

「ま、普通に詰めろだけどな」

 あ、答えを言ってくれたね。

 詰めろなんだ……えっと……。

「4八龍、3八金、3九銀、1八玉、2八金、同金、同龍だね」

「だな。それがあるから、受けないとまずいぜ」

「今度こそ、3八金かな?」

 私は王様の隣に、金を打ち付けた。

「詰めろは(ほど)けてるが……2五桂だと?」


挿絵(By みてみん)


 これは……詰めろかな?

 訊く前に考えてみようか……じーッ……。

「3七角からの詰めろだね」

「ああ、同桂なら2九金、同金なら3九銀」

 取らずに1八玉の逃げは、2八金、同金、同角成、同玉、3九銀、1八玉、2八金。全部詰んでるね。受けないと。

「2六銀とか?」

「それでもいいが……2六角もありそうだな」


挿絵(By みてみん)


「銀と角で、何か違うの?」

「角なら、どこかで7一銀として、同金には同角成から詰みだぜ」

 ふんふん、そういう筋があるんだね。

 7四桂と合わせて、覚えておこ。

 私が感心する中、菅原くんはひとりで難しい顔をしていた。

「んー、読み直してみると、2六角に3七角と放り込んで、同角、同桂成、同玉、2五桂の打ち直しがあるか……2六玉と2八玉は詰みだから、4六玉だが……」


挿絵(By みてみん)


「意外と危ねえな。6六角くらいで、詰めろになっちまう」

 5五金の一手詰めだね。

 ただ、5六歩と打てば解除できるし、9九角成以下、混戦かな。

 どちらも入玉できそうな気配。

「他に変なところは、あった? 8八飛って打たれたとき、4八歩だった?」


挿絵(By みてみん)


 本譜は、3八銀なんだよね。

「8九飛成が金当たりで、3八銀とした瞬間に、3二金と逃げれるぜ。7五角成として、馬で粘る方針か?」

「そうだね。本譜は潰れちゃったから、粘った方がいいかな、と思って」

 私が思いつきでそう言うと、菅原くんは「ふん」と鼻を鳴らした。

「難しいな。駒割りは損得なしだが、双方攻めにくいのは確かか。3二の金が遊んでる分、俺の方が悪いかもしれねえな。ただ、本筋は3八銀〜2二角成だと思うぜ。やっぱり金得は大きいからな」

 面白いね。いろんな変化があるよ。

 対局中に気付かなかったのも、多いかな。

「ま、初心者にしては、序中盤うまく指せてたんじゃないか?」

「えへへ、そう思う?」

「一箇所だけ問題があったとすれば、端歩を突かなかったことか」

 端歩……確かに、そうかも。2五桂〜1五金の詰みも、3九銀〜2八金の詰みも、1六歩と突いとけば、発生しなかったよね。本譜は、詰めろのバーゲンセールみたいなことになっちゃったし……端歩重要。2枚落ちでも、そう習った気がするね。実感したかな。

「端歩のあるなしだと、金駒1枚は違うから、突いといた方がいいぜ。特に、美濃囲いの場合は、な。穴熊だと、別に突く必要はねえが……」

 穴熊で端歩を突かないのは……反動が厳しくなるからだっけ?

「他には、何かあった?」

「他には……」

 私と菅原くんは、それから5分くらい別の局面を調べて、お別れした。

 見た目怖いけど、いい人だったね、彼。

木原(きはら)さん、どうでしたか?」

 控えテーブルに戻ると、大川(おおかわ)先輩が尋ねてきた。

「負けちゃいました」

「それは残念でしたね。菅原くんは強豪ですし、次は頑張りましょう」

 最初からベテランに勝てるほど、ボードゲームは甘くないってことだよね。

 それができるとしたら、サイコロを振るだけの運ゲーくらいだよ。

歩美(あゆみ)ちゃんたちは、まだ指してるんですか?」

駒込(こまごめ)さんは、もう勝ってますね。冴島(さえじま)さんは……」

「ういーすッ」

 噂をすれば何とやら、だね。

「お、木原、先に戻ってたのか? どうだった?」

「うーん、負けちゃった」

「みっちーには、さすがに勝てなかったか」

 (まどか)ちゃんは、勝ったっぽいね。笑顔だし。

「それにしてもさ、朝からずっと思ってたんだけど……」

「ん、何だ?」

 私は、円ちゃんの服装をじろじろと眺めた。

「円ちゃん、スカートが全然似合ってないね」

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

「うっせぇ、バカ」

《将棋用語講座》

○感想戦

対局が終わったあと、ゲームの内容を振り返って、ああでもないこうでもないと言い合うことを、感想戦と言う。大抵は、敗者の愚痴から始まる。プロでは、記事にするときに重要なので、仕事の一種とみなされている。アマチュアの場合は、義務ではないので、感想戦を断る場合も、時折見られる。マナーとしては、勝敗が決まったあとに、即去りしない方が良いであろう。但し、ネット将棋などでは、感想戦をしないことも多いので、そのあたりは臨機応変に行う必要がある。

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