詰め将棋
昨日の問題は、頭の体操になったね。
ベッドの中で解いて、アハ体験しちゃったよ。
今日も部室に行こうね。
「こんにちは」
私がドアを開けると、部室には大川先輩たちが揃っていた。
4人ともテーブルを囲んで、何か議論してるよ。
「こんにちはッ!」
私が少し大きめに声をかけると、みんなが一斉に振り向いた。
「あ、木原さん、こんにちは」
「何してるんですか?」
大川さんは少し右によけて、私のためのスペースを作ってくれた。
あ、みんなで盤を見てたんだね。私も見るよ。
※酒井克彦『詰将棋パラダイス』1965年9月号収録。
うわ、何だか、凄くごちゃごちゃしてるね。
把握するのも大変だよ
「これは何?」
「これは詰め将棋です」
なるほどね、これが詰め将棋なんだ。
でも、何が詰め将棋か、まだ習ってないよ。
「ところで、詰め将棋って何ですか?」
私が尋ねると、歩美ちゃんが顔を上げた。
「詰め将棋というのは、以下の条件を充たす広義の詰みのことよ」
そう言って八千代ちゃんは、ホワイトボードに長々と箇条書きを始めた。
1 敵の王様に広義の詰みが発生しており、
= 1.1 たとえ相手が最善の対応をしても、
1.2 次の自分のターンから王手の連続で、
1.3 狭義の詰みにもっていける状態。
2 現在は攻撃側のターンであり、
3 狭義の詰みにもっていく最善のパターンが原則的にひとつしかなく、
4 盤上にも攻撃側の持ち駒にもない王様以外の駒は、王様側の持ち駒であり、
5 狭義の詰みが発生した時点で、攻撃側の持ち駒が余らないもの。
うわーん、ルールがめちゃくちゃ長いよッ!
「分かった?」
「分かんない」
「……そう」
歩美ちゃんは冷酷だなあ。氷の女だね。
「じゃ、前回の宿題の答え合わせをしてから、先を続けましょう」
そうだね、答え合わせが先だよ。
問題は……。
【第3図】
(※初手の7三角は着手済み。)
【第6図】
これだね。
「第6図から解いてもいいかな?」
「いいわよ」
歩美ちゃんの了承を得た私は、第6図に取りかかる。
「えっとね、正解は9一飛、同玉、8三桂、8一玉、9一香成だよ」
「正解」
やったね。
「一点だけ。3手目の8三桂は、正確には8三桂不成よ」
「ならず?」
「『ならない』の古典的な読み方。不成と書いて、ならずと読むの」
「8三桂じゃダメなの?」
「8三桂成と区別するためよ」
そっか、単に8三桂だと、成ったか成ってないか分かんないもんね。
「分かったよ。正解は9一飛、同玉、8三桂不成、8一玉、9一香成」
「完璧ね。ちなみに、8三桂不成のような手を『開き王手』と呼ぶわ」
「あきおうて?」
王手の一種かな? 「あき」の意味が分からないけど……。
「意味は、『それまで邪魔していた駒を移動させて、背後の駒の利きを通す』王手。6番のパズルでは、初期位置で桂馬が香車を邪魔してるでしょ。8三桂不成は、その香車の通り道を開けるから、開き王手って言うの」
あ、なるほどね、開き王手だね。分かったよ。
さっきのだと、桂馬を跳ねた瞬間に、香車のダブル王手になってるもんね。
「じゃ、第3図は?」
これねえ……すごい迷ったんだけど……。
「多分……9二金じゃないかな?」
「それで?」
「同玉に9三歩って打つよ」
ここで同玉なら、8三金で詰みだよね。
9一玉なら9二金で詰み。
「最善は、8一玉かな?」
私は、王様を斜め後ろに引いた。
「それから?」
「そこで8三龍と入るよ」
「8二角は7二金、9一玉、9二歩成までだから、8二金に金を打つわ」
「それも7二金として、9一玉、8二金、同角、9二歩成」
「……正解」
やったー。合ってたよ。
「頑張ったわね。多分この6問の中で、一番難しかったと思うわ」
うん、昨日の時点で、7三角が見えなかったもんね。
歩美ちゃんに指摘されなかったら、1九角成、7一龍だと勘違いしてたよ。
「初手8二金打、同角、同金、同玉のパターンが詰まないのは分かった?」
「それも、ちゃんと読んだよ。そこで7三角は、7一玉、5一角成、7二金、同龍、同玉、7三金、8一玉で、まともな王手がかからなくなるよね」
7一玉のところで9三玉は、8四龍で即死。8一玉は8三龍、7一玉、8二龍、6一玉、6二龍で詰むから、注意、注意。
「正解。7三角に代えて6四角と離して打つのは、9三玉、7三龍、8三金とガード。7五角成で一瞬びっくりするけど、9四玉と出ればノープロブレムよ」
8三龍、同玉、7四金、7二玉で捕まらないもんね。
「ちなみに、7三角に代えて9三角だと?」
歩美ちゃんは局面を戻して、9三に角を移動した。
「これは……」
ちょっと待ってね。考えるよ。
うっかり7一龍は、同角なんだよね。
……………………
……………………
…………………
………………
あ、分かった。さっきと一緒だ。
「9二金、同玉、7二龍、8二金、7三金、9一玉、9二歩、同金、同金までだよ」
「正解。やるわね」
わーい、どんなもんだい。
「だけど、深読みし過ぎかな」
「……え?」
「最短は、8一金、同玉、7二龍、9一玉、9二龍」
……あ、ほんとだ。もっと早く詰んでるね。
8一金は、7三角のときに登場しなかったから、思い浮かばなかったよ。
「ま、それは全然問題なしよ。詰め将棋じゃなきゃ、最短である必要はないから。さて、今日はその詰め将棋に触れるわけだけど……昨日の図を思い出してちょうだい」
【第1図】
【第2図】
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
「詰め将棋のルールを再掲するわよ」
1 敵の王様に広義の詰みが発生しており、
= 1.1 たとえ相手が最善の対応をしても、
1.2 次の自分のターンから王手の連続で、
1.3 狭義の詰みにもっていける状態。
2 現在は攻撃側のターンであり、
3 狭義の詰みにもっていく最善のパターンが原則的にひとつしかなく、
4 盤上にも攻撃側の持ち駒にもない王様以外の駒は、王様側の持ち駒であり、
5 狭義の詰みが発生した時点で、攻撃側の持ち駒が余らないもの。
「さて、このルールに該当しているかどうか、チェックしていきましょう」
「はーい」
まず、1〜6番は全部、ルール1に該当してるよね。
だって、広義の詰みの練習だったんだから。
ルール2からチェックしていこうね。
「1番は……ルール2に該当しないかな。2番と3番も」
「そうね、1、2、3番は、王様側が先に動くルールだったわね」
思い出したよ。1、2、3は詰め将棋じゃないって、昨日言ってたね。
他には……。
「5番も違うかな」
「理由は?」
「答えが2つあるから」
これも昨日、ちらりと考えたね。
5番は、9二銀、同銀、8二銀で詰むけど、8二銀、同銀、9二銀でも詰むよ。つまり、解答が2つあって、ルール3に該当しないね。
「正解。詰め将棋では、複数解答可能な問題を基本的に含めないことになってるわ」
「何で?」
私が尋ねると、歩美ちゃんは顎に手をあてて、しばらく考え込んだ。
「これは推測だけど……その方がパズル性が高いからだと思う。ただ、いくつか例外はあるのよね。それについては、後日やりましょう。他には?」
残りは……4番と6番だね。
4番は簡単だから、4番からいくよ。
「ルール1、2はオッケーで、8一飛成、同金、8二金しか答えがないから、ルール3も充たしてるね。狭義の詰みになったとき、攻撃側は持ち駒を持ってないから、ルール6も万全だよ。後は……」
ルール4だね。ルール4は……。
「あ、ルール4を充たしてないね。残りの駒は、駒箱の中にあるよ」
「正解。じゃあ、4番目の問題を詰め将棋にするには?」
それは簡単だよ。こうやって……。
はい、できあがり。
駒箱の中の駒を取り出して、王様以外を全部、敵の持ち駒に加えたよ。
「正解。これが一般的な詰め将棋の形」
なるほどねぇ……でもさぁ……。
「これって、王様側が強過ぎない? 持ち駒がめちゃくちゃあるよ」
私の指摘に、歩美ちゃんは人差し指を立てる。
「これには、いろいろとわけがあるの。まず、王様側の持ち駒が多くないと、受けるのが非常に難しいということ。次に、合い駒の練習になるということ。それから……」
「ちょっと待って、あいごまって何?」
愛する駒?
「合い駒っていうのは、『飛車、角あるいは香車で遠距離攻撃されたとき、王様とそれらの駒の間に、持ち駒を打つ』ことよ」
うわ、これも長いね。例が欲しいよ。
私の顔色を察したのか、歩美ちゃんは例を並べてくれた。
「今、香車を打ったところよ」
「これは王手ね」
そうだね、王手だね。回避しないと反則負けだよ。
「王様を横に逃げるという手もあるけど、歩を持ってるから……」
「こう受けてもいいわよね。あるいは……」
「こう」
……そうだね。どっちも王手を回避してるよ。
「そして、この歩で香車の利きを止める行為を、合い駒っていうの」
了解。これで分かったよ。
「歩以外でもいいの?」
「何でもいいわ。ただ、歩で合い駒するときは歩合い、銀のときは銀合いという風に、その駒の種類プラス『合い』で表現するのが通例ね」
ってことは、歩合い、香合い、桂合い、銀合い、金合い、角合い、飛車合い……。
「成り駒のときは、例えば、と金合いって言うの?」
私の質問に、歩美ちゃんは人差し指を振る。
「思い出して。持ち駒をいきなり成った状態で打ち込むことは不可能、よ。合い駒は、持ち駒を打ったときにしか使わないから……」
「あ、そっか、ごめん。だったら、成駒の合い駒は存在しないね」
じゃあ、さっきの7種類で全部だね。
「そういうこと。とりあえず、『敵は残りの駒全部を持っている』とだけ覚えておいて」
「はーい」
「じゃあ、最後に6番ね」
6番は……。
「これも、4番のルールを充たしてないよ。こうすれば、詰め将棋」
「正解。9一飛、同玉、8三桂不成、8一玉、9一香成の5手詰めね」
「ごてづめ?」
「5ターンで詰むものを、5手詰めと呼ぶの」
あ、5手詰めだね。耳で聴くと、混乱するね。普段使わない言葉だから。
「じゃあ、3ターンで詰むのは、3手詰め?」
「その通り。7手詰め、9手詰め、11手詰め……いくらでもあるわ」
あれ? 全部奇数なの?
「偶数のはないの? 6手詰めとかさ」
「それはないわ。ルールをもう一度見てちょうだい」
私は、ルールを再確認する。
1 敵の王様に広義の詰みが発生しており、
= 1.1 たとえ相手が最善の対応をしても、
1.2 次の自分のターンから王手の連続で、
1.3 狭義の詰みにもっていける状態。
2 現在は攻撃側のターンであり、
3 狭義の詰みにもっていく最善のパターンが原則的にひとつしかなく、
4 盤上にも攻撃側の持ち駒にもない王様以外の駒は、王様側の持ち駒であり、
5 狭義の詰みが発生した時点で、攻撃側の持ち駒が余らないもの。
……これと、ターンが奇数との関係が分からないよ。
「どういうこと?」
「ルール2により、現在は自分のターンよね?」
「そうだね」
「ということは、自分→敵→自分→敵→自分……と動くわよね?」
「それも分かるよ」
「自分が動くのは、奇数ターン? それとも偶数ターン?」
歩美ちゃんの質問に、私はハッとなる。
「奇数ターンだね」
「そう。そして、狭義の詰みを決めるのは、どっちのターン?」
それは……。
「自分が何かを指したときだから、自分のターンだよ」
「正解。というわけで、詰め将棋には、奇数詰めしか存在しないの」
うーん、すごく論理的だね。
「ターンの数は、最善の動き方をした場合のターン?」
「そうよ。だから、例えば……」
「これは、何手詰め?」
これはねえ……。
「1手詰めかな。8二馬で狭義の詰みだよ」
「正解。でも、8二歩成、9二玉、8三馬でも詰むわよね」
……あ、ほんとだ。
「だったら、ルール3違反かな? 解答が複数あるよ」
「そうじゃないわ。ルール3をよーく思い出して」
ルール3は……。私は、ホワイトボードを確認する。
3 狭義の詰みにもっていく最善のパターンが原則的にひとつしかなく、
……あ、分かった。
「パターンがひとつしかないんじゃなくて、最善のパターンがひとつだね」
「その通り。8二歩成、9三玉、8三馬は、1手で詰むところに3手かけているから、最善のパターンじゃないわ。こういう、無駄に手数を伸ばす動きがあっても、詰め将棋では除外することになってるの。だから、さっきのはちゃんとした詰め将棋」
「王様側が早く詰む方に逃げたら?」
「それもルール3に違反してるわ。『最善』は、攻撃側だけじゃなく、王様側のルールでもあるから。例えば……」
「この形で、8二銀に9二玉と逃げちゃダメ。9三歩成で早く詰んじゃうから。最善は、8二銀に7二玉、7三銀左成……」
「ちょっと待って。ひだりなるって何?」
歩美ちゃんは手を止めて、盤から視線を上げる。
「左の銀を成る、よ。7三には、左の銀も右の銀も、どちらも成れるでしょ」
ふむふむ、なるほどね。また新しい表記がでてきたよ。
確かに、7三銀成だと、右の銀を成ったのか左の銀を成ったのか、分からないね。
「了解」
「で、7三銀左成、8一玉、8二成銀が正解。5手詰めね」
「つまり、8二銀、9二玉、9三歩成の3手詰めはカウントしないんだね」
「そういうこと」
だんだん分かってきたよ。
「よーし、じゃあ、どんどん練習しようッ!」
「と言いたいところなんだけど」
やる気を出した私に対して、歩美ちゃんは酷く冷淡な反応をした。
「だけど?」
「詰め将棋っていうのは、作るのがすごく難しいのと、下手な詰め将棋をあれこれ考えるよりは、ちゃんとしたものをやり込んだ方がいいと思う。だから、数江ちゃんにやる気があるなら、ネットとか書籍で、いろいろ調べてちょうだい」
えぇ! 丸投げッ!?
「調べるって言っても……やり方が分からないよ」
「そこで、八千代ちゃんの出番ね。どうぞ」
歩美ちゃんの呼びかけに反応した八千代ちゃんが、こちらに振り向いた。
歩美ちゃんは、これまでの出来事を、八千代ちゃんに伝える。
「……なるほど、分かりました。木原さん、心配する必要はありません。詰め将棋は、本でもネットでも、腐るほど見つけることができます」
パズルは腐らないよ。
「いくつか基本的なものをお教えしますので、調べてみてください。まず、簡単な詰め将棋を定期的に発表しているメディアとしては、『週刊将棋』と『将棋世界』が有名です」
「週刊将棋……週刊誌?」
「いいえ、週刊新聞です」
週刊新聞ッ!? 初めて聞いたよ、そんなの。
しかも、将棋ってついてるから、将棋オンリーの新聞なんだよね?
「ちなみに、うちの部は定期購読してますので。ほら、そこに……」
八千代ちゃんは、部屋の隅を指差した。
あ、ほんとだ。新聞みたいなのが山積みになってるね。
「この新聞は、毎週、簡単な詰め将棋と、少し難しい詰め将棋のコーナーを設けています。後者は『詰将棋ロータリー』という名前で、ここで出題されている第3問を解けるかどうかが、ひとつのハードルと言われています」
これだけあったら、過去問だけでも相当あるんじゃないかな。
100問以上はありそうだよ。
「それから次に、『将棋世界』です。これは月刊誌で、やはり多くの詰め将棋を載せています。定期連載としては、森信雄プロの『あっという間の3手詰め』、中田章道プロの『実戦に役立つ5手7手詰め』、編集部編の『やさしいビギナー向け1手詰め』、そして『詰将棋サロン』ですが、この通称『サロン』は非常に難しいので、まだ解かなくていいです。他にも谷川浩司プロらの『懸賞詰将棋』もありますが、これも上級者向けです」
うん、すごくたくさんあることだけは分かったよ。
「『将棋世界』も定期購読してますので、棚にあるものを順番にどうぞ」
ほんとだ。『将棋世界』っていう雑誌が、ずらりと並んでるね。
「それから、詰め将棋を収録した本も、たくさん出版されています。最近のもので特に良書と言われているのは、浦野真彦プロの『3手詰ハンドブック』ですね。これも、そこの棚にあります」
「持って帰ってもいいの?」
私が尋ねると、八千代ちゃんは渋い顔をした。
「部の備品ですので、禁帯出ということに……」
そっか、それは残念だね。写して持って帰ることもできるけど……。
「ネットでも見つかるんだよね?」
「ネットでもたくさん見つけられます。が、ひとつだけ注意を」
八千代ちゃんは眼鏡を直し、真面目な表情になる。
「詰め将棋に法的な著作権が発生するかどうか、判例はありませんが、『他人の詰め将棋作品を転載するときは、出典を記す』のがマナーになっています。つまり、他人の作品を自分が考えたかのように発表してはいけない、ということです」
「出典を記せば、やってもいいの?」
「常識的な範囲内でなら。例えば……」
※将棋世界編集部「やさしいビギナー向け1手詰め」
『将棋世界』2014年3月号、222頁より。
「これは許されます。しかし、そのページにある問題を全て転載するのは、ダメです。引用の基本的なルールとして、作者名、掲載場所、発表年は、最低限必要でしょう」
「へえ、まるで小説みたいだね」
小説も、研究や紹介の範囲内ならOKで、不必要な丸写しはNGなんだよね。
「もちろんです。芸術的な詰め将棋を作る人は、『詰め将棋作家』と呼ばれ、愛棋家から非常な尊敬を集めています」
「え? 作家なの?」
「そうです。将棋界では、作家と同じ扱いです」
そっか……すごいね。初めて知ったかな。
「じゃあ、無断転載は、盗作になるんだね」
「はい、ですから詰め将棋に関しては、自分で原作にあたることをお勧めします」
「分かったよ。解説ありがとね」
八千代ちゃんは一礼すると、再びさっきの詰め将棋に戻っていった。
そう言えば、さっきの詰め将棋は、誰の作品だったのかな?
「でもさ、似たようなパターンを作っちゃうことがあるんじゃないの?」
私の質問に、歩美ちゃんは頷き返す。
「もちろんあるわ。そういうのは、作家同士でもあるもの」
「そのときは、どうするの?」
「単なる過失なら、問題ないわよ。要するに、うっかりね。これまで発表されてきた詰め将棋の全部を網羅するのは、ほとんど不可能になってるから。ただ、詰め将棋にはデータベースが存在してて、そこで過去に同じ作品がないかどうか、一応調べられるの」
あ、そうなんだ。何かすごいことになってるね。
ここまで体系的に整備されてるパズルって、あんまりないんじゃないかな?
私が黙っていると、歩美ちゃんもさっきの詰め将棋に戻って行った。
みんなが考えてるのは、難しそうかな。
さっきの1手詰めから解こう、と。きっと簡単だよね。
【今日の宿題】
下図の詰め将棋を解きなさい。
※将棋世界編集部「やさしいビギナー向け1手詰め」
『将棋世界』2014年3月号、222頁より。
《将棋用語講座》
○詰め将棋
一定のルールの下で、王様を詰ませて遊ぶパズル。いつ頃から存在するのか、正確なことは分からないが、17世紀初頭までは遡ることができる。当初は、実戦で詰みを発見する練習のために作られたと考えられるが、三代伊藤宗看の『将棋無双』および伊藤看寿の『将棋図巧』により、実戦を離れた芸術の域まで高められた。どちらも18世紀の作品であるが、史上最高の詰め将棋集と言えば、このふたつを指す。昭和〜平成にかけても巨匠を多く輩出しており、2000年代に入ってからも添川公司氏の『新桃源郷』(1205手詰め)などで話題に事欠かない。




