表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

幽霊編01

「やっと会えたね、美咲ちゃん」


 そう言って私に向かって確かににこりとふつくしい笑顔を見せたのは、スーツ姿の見覚えのない男性だった。私にとっては性質の悪いことに、そやつは色白の(いやでもちょっと青白すぎるような気もする)、鼻筋がすっと通った、まつ毛の長い、艶やかな厚い唇の、柔らかそうな栗色のウェーブがかった髪の、スーツの上からでもわかるほどよく引き締まった体格の良さを持った……、とにかく私が今までお目にかかったことのないレベルの美形だった。

 そう、会ったことはないはずだ。

 私と眼の前で何が嬉しいのかにこにこと笑っている彼は初対面であるはずだ。

 であるからして、"やっと会えたね"と言われても全くピンとこない。

 彼の台詞からひしひしと不穏な流れを感じるが、ここは私の心の安寧のためにもさらっとスルーすることにして、私は彼に尋ねた。


「あなた、私のことがわかるんですか……?」

「うん、よく知ってるよ。川村美咲ちゃんだろ?」


 なぜかほこらしげに言われた。いや、私が聞きたかったのはそういうのではなく、"幽霊状態"の私を認識できるのかを聞いたつもりだったんだが……。というかさすがに怖くなってきた。なんでこの接点皆無だった美形が私なんかを"よく知ってる"とほざくんだ。幽霊状態の私と会話が成立していることから恐らく幽霊を見ることができる霊感を持った人なのだろうけど……。もしかして透視とかサイコパスとかなんかそういった能力をお持ちで、それでこっちの個人情報を読み取っている、とか……?幽霊にはプライバシーの権利は認められていないというのか。元人間だというのに。

 いやいや、それよりもまず、私が本当に幽霊なのかどうか白黒はっきりつけてもらおう。


「あの、私は幽霊なんですかね?」

「うん。れっきとした29年物の元人間の霊だね」


 なにその年代物のワインのボトルみたいな言いかた。そして私の歳までばれている。そんで、やっぱり私は幽霊らしい。


「では、私と会話ができるあなたは霊能力者……?」


 男は相変わらずにこにこしている。なにがそんなに嬉しいのやら。心の中だからハッキリ言おう、不気味だ。


「違うよ。僕も今の君と同じで"人ならざるモノ"さ」

「はあ?」

「僕は河童なんだ。あ、河太郎とも言う」


 自称カッパのイケメンってなんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ