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魔法のある世界で貴族令嬢を誘拐しようとしたら?

作者: 北森八雲
掲載日:2026/11/07

魔法のある世界で、貴族家が魔法の血筋を継いでいる国のお話。

 リーング大陸は剣と魔法が支配する大陸だ。

 そしてその大陸にある王国の1つがミスドゥ王国だ。他の国と同じように、ミスドゥ王国も魔法の使える血筋を貴族家として大切に血をつないでいる。その強大な魔法の力で民を守れるようにするためだ。なので、例外はあるが高位貴族家ほど高い魔力を有し、最も強大な魔力を有するのが王家である。


 フリージアはポンデ侯爵家の跡取り娘で13歳、彼女も高位貴族家たる侯爵家の令嬢らしく高い魔力を持つ。そして跡取り娘ゆえにそれはもう大切に育てられてきたのだが、13歳という難しいお年頃を迎えたフリージアは一種の反抗期に入ってしまい、使用人達一同は手を焼いていた。


「お嬢様がまた脱走したぁぁぁぁ!!」


 両目を血走らせ、額に青筋を立てて叫ぶのはポンデ侯爵家の執事セバスチャン、今月何度目の絶叫かわからない。


「お嬢様からこれを預かっています」


 無表情な侍女がセバスチャンに便せんを渡す。年頃の少女らしい桃色の花柄模様が入った可愛らしい手紙には綺麗な字でこう書かれていた。


「マリーちゃんと一緒にお出かけしてくるね」


 セバスチャンは再び噴火した。


「だからって! 護衛を撒くことはないでしょうがぁぁぁぁ!!」


 そう、最近のフリージアはすぐに護衛の騎士を撒いてどこかに行ってしまうのである。


 幼少時は病弱だったフリージアはそれはもう真綿でくるむように大切に大切に育てられた。身体が弱いためなかなか外に出せなかったこともあり、文字通りの箱入り娘だった。だが、本人の努力もあり、身体が成長するにつれて少しずつ病弱を克服していった。


 さて、そんな箱入り病弱お嬢様が健康になって外の世界を見たらどうなるか。

 それはもう外の世界に興味津々、彼女にとっては外にあるものは皆キラキラ輝いているように見えた。もっと近くで見たい、手で触れてみたい、そう思うのは必然であった。

 それまでの反動もあって、とても活動的な少女となったフリージアが行動を起こさないわけがなかった。


「わたくしはもう病弱ではないのよ! 護衛なんかいらないわ!!」


 そう胸を張るフリージアに、彼女を幼い頃から見守ってきた年嵩の侍女は「お嬢様もすっかり元気になられて」とうれし涙をこぼしたが、セバスチャンにいわせれば泣くところはそこじゃない。病弱じゃなくても護衛は必要だからだ。


「まあ、マリー様が一緒ならば安全なのでは?」


 無表情な侍女がいう“マリー”は次代の聖女だ。彼女はポンデ侯爵領の孤児院で育った少女だが、聖魔法の素質が見いだされて少し前に聖女に認定された。体調が良い時を見計らって孤児院に慰問に訪れていたフリージアとは面識があり、今ではフリージアのことをお姉様と慕っている。

 マリーは聖女であるから防御結界魔法が使えるし、多少の怪我なら治癒魔法がある。一緒にいてこれほど心強い存在はない。そして何よりも。


「マリー様をお迎えするためにお嬢様は教会に向かうでしょうし、きっと教会で護衛の聖騎士をつけてくれるはずです」


 聖女が外出するとなれば当然教会が護衛をつける。

 それならば安心かとセバスチャンはあごひげをなでたが、教会から早馬がやってきた。そしてこう伝えてきたのである。


 聖騎士も撒かれちゃった、めんご


「お嬢様ぁぁぁぁぁぁ!!」


 セバスチャンは三度絶叫したのであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その頃フリージアはマリーと一緒に街中を歩いていた。新しく異国の菓子を出す店ができたと貴族令嬢の友人から聞き、向かっているところなのだ。

 菓子店ならば普通に護衛をつけて行けばいいじゃないかと思われるだろうが、場所が悪かった。貴族街とは少し離れた下町にその店は存在していたのだ。

 フリージアの友人の貴族令嬢、カレンデュラはこう語った。


「それはもう悪目立ちしましたわ。長閑な村娘が住む村に、意地悪お嬢様を放ったような有様でしたの」


 彼女は貴族令嬢らしく、護衛を引き連れその店に向かった。ところが、その場所は貴族が滅多に立ち寄らない下町。そこにどこから見ても高貴な貴族令嬢が体格のいい騎士を引き連れて現れたらどうなるか。

 突然のお貴族様の来訪に町民達はびびり散らかして、蜘蛛の子を散らしたかのようになり、菓子店の店主も「どうかご慈悲を」と怯えて平身低頭する始末。


「とてもじゃありませんが、新作スイーツどころではありませんでしたわ」

「カレンデュラは派手顔でキツいから悪役令嬢みたいだものな。そりゃ平民達から見たらおっかない貴族がやってきたって怖がるに決まって・・・あだだだだだだ!!!」


 余計なことをいってカレンデュラに締められているもう一人の友人を眺めながらフリージアは考えた。


 ならば護衛を撒けばいいじゃない!

 それならば町の人たちも怯えないわ。

 とはいえ、流石に一人で行くのは心許ないから、マリーちゃんを連れて行こう。彼女もきっと喜ぶし、いいことずくめだ。


 そんなフリージアの今の格好は流石にドレスではないが、仕立ての良さがすぐにわかる上等なワンピースだ。本人は町娘スタイルだと思っているが、良いところのお嬢様であることが全く隠せていない。

 マリーは普段通りの聖女の服装だ。本人は修道服みたいなものだから目立たないだろうと思っているが、明らかに普通の修道女が着るものより布地も仕立ても良いし、派手ではないが、年頃の少女が好むように可愛らしくリボンや刺繍でアクセントがつけられている。つまりは一点ものの衣装で、どこからどう見てもその姿は聖女マリーであることが丸わかりだった。


 そして何よりフリージアは満開の薔薇のような深紅の髪を腰まで垂らしており、マリーも光の加減で色味が変わるピンクブロンドの髪をウィンプルの下からのぞかせていた。


 この大陸において魔力が少ない者≒平民は黒色や茶色系統の髪色が多い。たまに茶色の色味が薄くて金色に見える者がいるが、せいぜいその程度だ。一方、魔力が多い者≒貴族は鮮やかな髪色であることが多い。髪色は魔力によって様々な色が出るが、フリージアの深紅の髪は明らかに魔力持ち=貴族とわかってしまう色である。マリーは元々薄い茶色の髪色だったが、聖魔法が発現したときにピンク色が混じって今の髪色になった。なのでこちらも魔力持ちであることが明らかで、貴族令嬢と認識されても全くおかしくはなかった。


 つまり、今のフリージアとマリーは高貴なお嬢様が護衛もつけず、のこのこと下町を歩いているのがばればれだったのである。

 そうなれば、不埒な輩が獲物の匂いを嗅ぎつけてやってくるのは必然であった。


 フリージアとマリーは無事、話題の菓子店で買い物を済ませた。菓子店の店主の表情が微妙に引きつっていたのが気になったが、袋に入れられた菓子はほかほかと温かい。真ん中に穴の開いたわっかのようなその菓子は、小麦粉をベースとしたふんわりとした生地を揚げ、砂糖をまぶしたものだ。名前をドーナツというらしい。

 フリージアよりも誘われたマリーの方がドーナツをいたく気に入り、袋を大事に抱えながらそわそわしている。


「マリーちゃん、今の私たちはただの町娘だから、行儀悪く歩きながら食べちゃおうか?」

「はい!」


 フリージアとマリーは立ち止まって袋からドーナツを取り出そうとした。そのときだった、どことからともなく現れた柄の悪そうな男がマリーにどんとぶつかったのである。ぶつかられた衝撃でマリーは袋を落としてしまう。慌てて拾い上げようとするも、後から来た別の男に袋を踏みつけられてしまった。


「ああ! ドーナツが潰れて・・・」

「許せない!!」


 激高したフリージアは男を追いかけた。マリーもフリージアの後を追う。それが男達の企みとも知らずに。

 そしてフリージアとマリーは人気のない袋小路におびき寄せられてしまったのである。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その頃、騎士団ではとある依頼が持ち込まれていた。


 侯爵家のお嬢様が次期聖女を連れて行方不明になったので、探してほしいと。


 同じ頃に教会からも訴えがあった。


 次期聖女が侯爵令嬢に連れられて行方をくらませてしまったと。


 騎士団はすぐに察した。

 行方不明とは言っているが、これは護衛を撒かれて脱走されただけだなと。

 なぜなら侯爵家も教会も心配していると言うよりも怒っている様子だったから。


「まったくあのおてんばお嬢様はどうしてこう心配ばかりかけさせるのだ!!」


 侯爵家の侍女が手続きを進めている後ろで叫ぶ執事の声は騎士団に丸聞こえだった。


 これは緊急性の低い平和な依頼だなと思いつつ騎士達が準備を始めたそのときだった。

 下町で建物が突然半壊したという通報があったのは。



 騎士達が急いで現場に駆けつけるとなかなかの惨状が広がっていた。

 2階建ての建物は半分がえぐれたように壊れていた。おかげで中が丸見えになり、2階が住居、1階が飲食店であることがとてもよくわかる。1階には店員と数人の客がおり、皆困り果てていた。幸いなことに誰も怪我はしていないようだ。

 そして建物は片方の側から焼けたような壊れ方をしていた。その火元に目をやると柄の悪そうな男が数人、上半身を黒焦げにして倒れていた。そして場違いな人物が二人、深紅の髪でワンピースの少女と、ピンクブロンドでいかにも聖女っぽい服装の少女が立っていた。


 深紅の髪の少女は黒焦げになった男達を見下ろしていたが、騎士達の姿を見ると駆け寄ってきた。


「騎士様! 怖かったです! あの柄の悪い男達にさらわれそうになってしまって・・・」


 さめざめと泣く深紅の少女。騎士達はこの少女が侯爵家の探していた令嬢だと察した。後ろからしずしずとやってきたピンクブロンドの少女は教会が探している聖女だろう。

 若い騎士は深紅の少女に優しく問いかけた。


「侯爵令嬢のフリージア嬢でいいかな? 何があったのか詳しく話してくれるかい?」


 フリージアは瞳を潤ませながら語った。


「あの柄の悪い男達がわたくし達をさらおうとして裏路地に連れ込んだのです。わたくし達が嫌だといって抵抗すると男達は爆弾のようなものを取り出し脅かしました。言うことを聞かなければこれを爆発させると。ですが悪いことはできないものですね。突然強い風が吹いて爆弾のようなものが転がり、そして暴発したのです。幸運にもわたくし達は無事でしたが、お隣のお店があんなになってしまって・・・」


 若い騎士は現場に目を移した。確かに爆弾なら建物を半壊することができるだろう。だがそんな威力の爆弾でこの少女達が無傷ということはあり得るだろうか。現に、巻き込まれたと見られる破落戸たちはなかなかの有様だ。そして、半壊した飲食店とは反対側の建物、少女達が背にしていた方には傷一つない。狭い路地裏で爆弾が爆発したとしては、あり得ない状況だった。

 騎士は考えを巡らせた。仮に建物の中で爆発が起きていれば、少女達や反対側の建物が無傷と言うことはあるかもしれない。しかし、それだとするとがれきの分布がおかしい。半壊した建物の中から爆発が起これば、がれきは主に建物の外に多く散乱するはずだ。ところが、がれきは建物の中に、それも方向性を持って散乱しており、明らかに飲食店は外から、それも少女達がいる方向からの大きな力で壊されていたと考えるしかない状況だった。


 騎士は考え込んだ。ふと、ピンクブロンドの少女を見ると、彼女はうっとりとフリージアを見つめている。若い騎士にはその瞳に見覚えがあった。それは怖い目に遭った少女が、そこから助けてくれた騎士を慕う時に向ける眼差しだ。彼自身も何度かそんな眼差しを向けられたことがあったから分かったのである。そしてピンクブロンドの少女の潤んだ瞳はフリージアに向けられている。騎士はある考えを思いつき、少女に話しかけた。


「そちらの君は聖女マリーで間違いないかな?」

「はい」

「何があったのか嘘偽りなく話してくれるかな。君は聖女だから嘘を延べることはしないだろう?」

「まあ」


 マリーは頬を色づかせる。

 一方、フリージアが露骨に焦り始めた。

 そしてマリーが語った真相はこうだった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 男達を追いかけたフリージアとマリーは袋小路に誘い込まれてしまった。

 しまったと思ったときにはもう遅く、退路は柄の悪い男達により塞がれてしまった。フリージアとマリーの後ろは壁、周りには柄の悪い男達、絶体絶命の状況だった。


 フリージアとマリーが普通の少女であれば。


 フリージアとマリーを追い込んだ破落戸達はゲヒヒヒと品のない笑い声を上げながら、獲物を舌なめずりする。普通の少女であれば恐ろしくて仕方がないだろう。だがフリージアは怯えなかった。


「このわたくしを誰だと思っているの! ポンデ侯爵家令嬢、フリージア・ポンデよ! わかったらそこを退きなさい!!」


 果敢に立ち向ってみせたのである。

 だが男達は下卑た笑いをあげるばかり。


「ひゃははは、侯爵家のお嬢様だぁ。こりゃ高く売れるぞぉ!」

「親を脅せば身代金ががっぽがっぽだなぁ!」

「そっちの可愛い子もどこかの貴族のお嬢様かぁ?」


 男の一人がマリーに目を向けたことにより、フリージアの怒りは低い沸点をあっという間に突破してしまった。


「そう。警告したのに聞かないのね。ならば容赦はしないわ」


 フリージアの手には赤色の魔力が輝き始めていた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「お姉様の可憐な炎魔法により、悪しき者どもは聖なる業火に焼かれ、浄化されたのです」

「へぇ」


 マリーが頬を赤らめ、瞳を潤ませながら語る様子をみて、若い騎士は自分の考えが正しいことを確信した。マリーはフリージアに助けられたのだと。


「マリーちゃん! そのことは喋らないでって言ったのに!」

「ですがお姉様、私は聖女ですから嘘偽りを述べることはできません。それにお姉様の勇敢なお姿は皆にあまねく語り継がれるべきです」

「あぁぁぁ、またセバスチャンに怒られる・・・」


 フリージアが頭を抱えている。つまりはそういうことだ。


 建物を壊したのはフリージアだ。


 破落戸達はフリージアとマリーを袋小路に誘い込み、害そうとした。だがフリージアに炎魔法で返り討ちにされた。そしてその炎魔法の威力が高すぎたため、破落戸達の後ろにあった飲食店を巻き込んだのである。


 フリージアは貴族令嬢、高い魔力を持っている。その鮮やかな深紅の髪が何よりの証拠だ。

 腕力であれば確かに女性より男性の方が強い。だが魔力は異なる。外れ値を除外すれば男性と女性の魔力に有意な差はない。それどころか外れ値を含めて魔力が高い順に並べると上の方は女性ばかりが並ぶことになる。その外れ値というのが魔女や聖女と呼ばれる女性達だ。一応男性の魔女や聖女に相当する存在はいるが何故かその数は女性のそれより遙かに少ない。


「男の魔女や聖女って魔男とか聖男っていうの?」

「まおとこ」

「語感が非常に悪いわ」


 こんな会話が至るところでたびたびされるが、正しくは聖人や魔人と呼ぶ。聖人と魔人じゃ男女どっちかわからないじゃないかという人もいるが、そもそも最初から知られていた存在は聖女と魔女だ。聖人や魔人は後に男性にも聖女や魔女に相当する存在がいることがわかり、後付けで作られた名称なので、多少の違和感はしかたない。だって「せいおとこ」や「まおとこ」じゃ語感が悪いし。


 それはともかく、このあたりの魔力の事情は貴族であればしっかりと教育される。なので、貴族社会においては男性が女性を腕力にものを言わせて無理矢理ことに及んだという事案はだいぶ少ない。舐めてかかれば魔法で返り討ちに遭うのは襲った方だからだ。

 そしてそのように力尽くで及ぼうとした不埒な輩が相手に火魔法で股間を焦がされて生殖不能になったという話は教育的逸話として語り継がれている。


 だが魔力の乏しい平民達はその様な事情を知ることはない。破落戸に身をやつすような輩であればなおさらだ。

 だから破落戸達はフリージアとマリーを侮ったのだ。華奢でか弱いお嬢様なら手込めにして身代金を要求するなり、あるいは人買いに売り飛ばすなりできるだろうと。

 しかし貴族令嬢は見てくれ通りのか弱いお嬢様ではない。いざとなれば高い魔力で民を守る存在。いわば人間兵器だ。

 そんな高い魔力を持つ貴族令嬢に、魔力を持たない破落戸ごときが雁首をそろえたところでかなうはずはなかったのである。


 若い騎士はマリーに問いかけた。


「そちらのフリージア嬢が火魔法で応対するのではなく、君が防御結界を張ってくれれば穏便に済んだとは思わないかい?」


 だがマリーはうっとりとした表情を浮かべてこう語る。


「だってお姉様の勇姿が見られるんですもの。お邪魔してはいけません」


 それで建物が半壊してしまっては世話ないのだが、と若い騎士が思っているとマリーがこんなことを言ってきた。


「心配なさらなくても、大丈夫です。建物の中にいた人には個別に防御結界魔法をかけて、建物が壊れても安全なようにしました。なのでお怪我をした人はいないはずです」


 そんな緻密な魔力操作ができるならさあ


「自分たちに防御結界魔法はってよ」


 若い騎士は心の底からため息をついたのであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 破落戸達は投獄された後、貴族令嬢と聖女への暴行未遂の罪で、辺境の鉱山で100年の強制労働が言い渡された。実質的な終身刑である。

 破損した建物の修理費は、破落戸達の強制労働で得た利益から出されることになったが、とりあえずはポンデ侯爵家が費用を立て替え、壊れた建物はすぐに建て直された。


 その後、フリージアはやっぱりセバスチャンに叱られた。


「お嬢様がお強いのは重々承知しております。ですがお嬢様は大切な身、どうか護衛をお連れして下さい。そして悪者退治は護衛に任せて下さい」

「えー!」


 フリージアは不満の声を上げたがセバスチャンは容赦しなかった。


「お嬢様が悪者退治で魔法をぶっ放すとあちこち物が壊れるのです! 巻き添えでいろんな物を壊されると非常に迷惑なので! 護衛が動けば物は壊れませんから! いいですね!!」


 フリージアはむくれたがセバスチャンには聞き入れられず、無慈悲に1ヶ月間の外出禁止が言い渡された。


 一方、聖女マリーも教会でそれなりに叱られたが、彼女は大好きなお姉様の勇姿を見られたので終始ご機嫌だった。ついでにドーナツのレシピもどこからか入手して、彼女はドーナツ作りに精を出すようになった。


 後に聖女マリーのドーナツはエンゼルリングと呼ばれるようになり、ミスドゥ王国で広く親しまれるようになったという。


「ドーナツを見ると、あの時のお姉様の勇姿を思い出しますね」

「・・・忘れて」

貴族令嬢が破落戸にさらわれる話は数あるけれど、それが魔力持ちの貴族令嬢だと、破落戸ごときではかなわないんじゃないですかね?

そんな疑問をもとに書いてみたらこんな話ができあがりました。


侯爵夫妻が出てこないって?

娘を溺愛しているから「フリージアは勇敢だなぁ」とか「これなら立派な侯爵になれるわ」とか言って甘やかしているよ。

セバスチャンの胃痛は多分治まらない、


ドーナツはおいしいね。

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