18有栖川 マナにとって
数年前に漁港が移転して廃墟と化した市場に来ていた。
建物は残っているが人気はない。
朝早くに師匠から任務を与えられた。内容は例の反政府組織が潜んでいる可能性が高いとの情報を得たので探りにいけということだった。
今回はマナと一緒に来ている。
そのマナはさっきからどこか気が抜けているような気がした。
「マナ、」
返事はない。何か考えこどをして集中しているようだ。
今度ははっきりわかるように耳元で囁いた。
「マナ、」
「うわぁ‼︎ぁぁ…‼︎」
「マナ集中しろ。昨日が花火大会だったから余韻に浸りたい気持ちもわかるが今は集中しろ。一瞬の油断が死に繋がるんだぞ。」
「うん、ごめん。ちょっとね考えこどしてた。でも大丈夫、切り替えたから。集中するよ」
「あと、耳元で話されると緊張しちゃうから」
「ごめん、それは配慮する。」
「別に嫌というわけではないけど、私が…」
マナはうやむやに誤魔化した。
マナはまだ悩んでいた。昨日の夜、理央から言われたことが頭から離れない。
今は集中しなきゃいけないのに。
でも、頭の中でも整理がつかない。
私はどうしたら良いのだろうか。
私の感情は「好き」と言うものなのか
彼といる時間は楽しいし、これからもずっとそうでありたい。
でも、あの日の夜。理央ちゃんは真剣そのものだった。
あの時、理央ちゃんは私にこう言った。
「マナちゃんあのね、私みっちゃんのこと好きなんだ。みっちゃんは幼馴染だけど私はこれ以上の関係になりたい。
だからマナちゃんに確認したくて、…。」
私に確認?それも何かと思ったが今は理央が道久のことをちゃんと好きだということに、私は…。
「マナちゃんとみっちゃんがGIAで働いてることも、パートナーということも知ってる。
あ。これはみっちゃんに内緒ね。
だからパートナーであるマナちゃんは私がもしもみっちゃんと付き合ったりしても良いのか聞きたくて
ほら、マナちゃんもみっちゃんのこと好きならさ私も考えないといけないし。」
二人の間に一瞬の沈黙がうまれる。
「え、私は別に…道久君しだいだし…。」マナは突然のことに戸惑っていた。それか、葛藤していたのかもしれない。
「なら、マナちゃんはみっちゃんのこと恋愛的になんとも思っていないということなの?私とみっちゃんが付き合ってもいいの?」
悩むはずだったのに
理央ちゃんの顔を見ていたら自然と言ってしまった。
「私は別に…理央ちゃんが幸せならそれでいいんじゃないかな、」
「やった、マナちゃんもしかしたらみっちゃんのこと好きなのかなと思ってて心配してたんだよね。良かったよ、その言葉を聞けて」
その後から私は苦しかった。鼓動もいつもよりはやい。
私は道久のことを好きなのかもしれない。
あの場てばああ言ったけど、私にはわからない。あの時何て答えるのが正解なのか。
道久といるのは楽しいし、恩人だし、
好意はあるのかもしれない。でも、理央ちゃんだってそうだ。付き合いもあっちの方が長い。
だから好きになってもいいのか。
そんな人がいるのに私は本当に彼といていいのか。
今は自信を持って言えない。
彼は私の境遇を見て、彼なりの良心で私を助けてくれたのかも知れない。
それは彼にとって当たり前のこと。助けたのが私であることはあまり重要ではないのかも知れない。
あの時、花火のが打ち上げ時間に間に合わなかったのもきっとそう。
でも、そんなことなんてどうでもいい。
私も、見てもらいたい。理央ちゃんに渡したくない。
彼と離れるなんてできない。
私はただあの場で助けてもらった一人なのかもしれないけど、私だって道久のことが欲しい。
独占したい。他の人なんて見て欲しくない。私だけを見ていて欲しい。理央ちゃんと付き合って欲しくない。
わたしは他にいらないから彼が欲しい。
だけど、
こんな私でも好きになっていいのかな…それだけが彼女の頭から離れなかった。
二人で中央の建物に入った時、
銃声がして弾丸が俺たちを襲った。俺は気づいてかわしたがマナは音に気づいていない。
サイレンサー付きの消音機能があるものなのか銃声が小さい。
マナが気づいた時には遅かった。後頭部に弾丸が命中して前にマナが倒れる。
頭を狙撃されたら生きて帰れない。
狙撃手の射線を遮るため煙幕を出してから、マナを連れて壁の後ろに逃げ込んだ。
「おい、マナしっかりしろ。大丈夫か?」
真っ先にマナの状態を確認する。
「う、うん。大丈夫。当たったところは痛いけど私死んでないよ。」
マナに直撃したと思っていた弾丸は身体を貫いていなかった。
「それじゃ、何が.…!」
弾丸は髪についていたブローチとともに床に転がっていた。ブローチは形が変形していてバラバラになっていた。
昨日のブローチが今こうしてマナの命を救っていた。
「本当によかった…。もし死んでたら俺もう…」
マナが生きていて本当によかった、
「ははは、せっかくもらったばかりなのにごめんね。」マナは元気そうな顔で返事をする。
少し頭に痛みが残るがマナは再び立ち上がった。
マナの状態を見て安心したのも束の間、隠れていた壁が大きな衝撃によって破壊された。
「ウッヒョー、派手に破壊しておいたからこれで射線とれそうか?」
「お前はいつもやり方がおおざっぱすぎるんだよ。別に建物ごと壊さなくても…。これじゃ砂埃がひどすぎて視界が悪いじゃないか」
「あ、?ケチつけるんなら協力しねーぞ。
まぁ、いいだろこんぐらいしないと"死神"には…勝てないのだから。」
俺たちは破壊された建物の瓦礫に埋もれないように距離をとってギリギリのところで致命傷を避けた。
正面の建物の屋根の上に人影が二つ見えた。
そのうち一人はスナイパーらしく銃が見えた。
「マナ大丈夫か?怪我は、」
「ええ、大丈夫問題ない。それよりあの二人には気をつけて…」
「マナ知っているのか。あの二人を?」
「もちろん、組織にいた時によく耳にしたわあの二人の危険さを。」
「今まで多くの戦果をあげてきた、組織のナンバー2、と3。アリスとグレー」
「あらあら、死神ちゃん久しぶりね。以前は仲間どうしだったから殺せなかったけど、今は敵。思う存分楽しませてもらうわ。」
「アリス、俺はスナイパー専門だから死神の相手はできない。近距離戦闘は不向きだから死神を頼む。もう一人の男は俺がやる。」
「はいはい、言われなくとも死神の相手しますよ。」
屋根の上の人影が一つになったと思いきや目の前に現れてマナは攻撃を受けて遠くに飛ばされる。
「あっ、…う…」
ダメージば受けたが受け身で最小限に抑える。
「マナ、今加勢する…」
銃をアリスに向けて放とうとしたら弾丸が拳銃を弾きとばす。
「お前の相手は俺なんだよな」
あちらのスナイパーか、なかなかやる。
「クソ…」
スナイパーライフルを取り出して敵の死角に逃げ込んだ。
「マナ、!すまんそっちにいけそうにない。」
「大丈夫、私一人でやってやるから」
「ヘェ〜、大口叩くね。死神ちゃん。君私に勝ったこと一度もないくせにね。」
「うるさい、!」私の銃弾は彼女を捉えてそのままいけば頭にあたり致命傷だった。
けど、銃弾は当たる前に力尽きていた。
アリスは全ての銃弾を、手で受け止めて停止させた。
「私の手にかかれば、ほらね?銃弾の速さなんて関係ない。」
彼女の手の中に、銃弾は収まった。
「クソ、それなら」
マナは銃を捨て近接戦に持ち込んだがそれも軽々と流されてしまう。
「忘れたのか、死神ちゃん。お前に格闘術を教えたのは私であるということを、」
マナは毎日、毎日戦い、自分が自分ではなくなっていくあの時の日々を思い出す。
「でも、武術はかなり仕上がってきている。もう一回組織に戻ることもできなくもないんだぞ」
そんなこと望むわけがない。
「私は今の生活がいいの、邪魔しないで」
「あなたたちのせいで、私は…」
マナは再び蹴りの姿勢に入り一言をさす。
それも難なく受け止められた。
「今の生活の方がいいか…
どちらにしても戦っていることには変わりない。
お前はただの殺人兵器なんだよ。
それ以上でもそれ以外でもない。今はGIAの好きなように使われているだけ。
あのボウズだってお前のこと兵器だとしか思ってないんだよ。
誰もお前を人として望んでないんだよ。」
いつもなら動揺しないのに今は違った。
「そんなこと、そんなことない。」
はず…道久がそんなこと思うわけない、よね、
決して疑ってはいけない。のに、彼の私に向けてくれたものは疑いのない優しさと使命感
でもそれは決して私だけに向くものではなかった。それも彼なりの優しさなのかもしれないが、
誰だって自分の存在意義が欲しい。
それがマナにとっては彼なのだ。彼しかいないのだ。
だからなおさらそれは私自身だけに欲しかった。
「道久を侮辱するな!」
マナは
銃を拾い直し、引き金を引いた。
銃弾の射線により、アリスの避けられる場所が決まってくる。
かわすか、もう一度受け止めるか。
渾身の一撃を振り絞り、今までとは比にならない速さで接近する。
そしてアリスがかわした瞬間を狙って一撃を入れた、
はずだった。
「確かに今のはいい出来だ。でも惜しいね。私だって遠距離武器ぐらい持っているということを考慮していれば…ね。」
アリスの片手には拳銃が握られていた。
そしてマナの腹部は赤く染まっていた。
「アーっ…はぁ、はぁ…」痛みでその場に倒れ込む。
「うーん、本当は心臓とか頭を狙った方がいいんだけど、死神ちゃんにはこっちの方がいいかなって…。
これから思う存分痛みに耐えてもらうよ。」
笑いながら言うその顔はもはや人でない。
そんなアリスに一撃を与えられ、マナは気を失った。
「迷いは弱さ」
「さて、これからが楽しみだ…」
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撃ってくる方向はあらかた掴めたが問題はこの高低差。
今の状況では圧倒的にあちらの方が有利。
屋根の上から狙うのとしたから狙うのでは難しさが全然違う。
それに加え今物陰から出れば一瞬で死ぬのがオチだろう。
距離は300メートル
風向きは南南西 風速5メートル
したからでは敵の頭しか見えない。
なんとかして相手の隙を作れば…………‼︎
よし、
この方法なら行けるかもしれない。
俺は多分まだ生きているあろう、電源ボタンを火薬を減らした弾丸で狙撃した。
暗闇に包まれていた漁港がいきなり大量の光が生まれあたり一面光に包まれる。
屋根の上いたスナイパーが狼狽える。
「クソ、フラッシュか、…これでは人影が、」
見えないだろう。今のお前の目ではこの光に適応できていない。そして暗視ゴーグルをつけているならなおさら…。
でも目を慣らしておいた俺なら確実に当てられる。
俺が轟音と放った弾丸は倉庫の屋根ごと敵を吹き飛ばし一撃を与えた。
マナがグレーと言っていたスナイパーは地面に落下動けなくなっていた。
「よかった、電源が入っていて、
それにしてもどうして電源が入ったのだろう…。」
そう思っていたらそこに一人の人影が現れる。
「あれあれ、グレーさんや、やられてるのじゃないすか。
私の頑張り返してもらえます?」
「アリス、手を貸せ。どのみちタイムリミットだ。奴らの仲間がくる。もう一回あの剣士にボコされたいか?」
「それはイヤだね〜。
まぁでもグレーさんが醜態晒すほどの実力だったとは、あのボウス。
私がやれば結果は違ったけどね。」
「わかったから、こだこだ言ってないで撤収するぞ」
「はいはい、わかりましたよ。
あ、そこのボウス、死神ちゃんなら今頃苦しんでると思うね。
早く助けてあげな。今のあの子では殺すまでもない。もっと楽しんだ後に殺してあげる。」
マナが負けたのか…
それより今は怒りが込み上げる。
「許さない、」俺は弾丸を装填した。
「ストップ、今私たちと戦ったら死神ちゃんは助からないよ。早く行ってあげなきゃ
死神ちゃんが冷凍保存されたくなければ…ね。」
「お前のせいだぞ負けたの、アリス。電源なんてアレのためだけに入れとくなよ。」
「ごめん、ごめん。どうしても冷凍庫使いたくて。許してね」
冷凍庫!
漁港で以前使われていた魚の冷凍保存するための大きな倉庫。
確かこの先にあったはず…。
俺は急いで駆け出した。
「バイバイ、ボウズまた次会う日まで」
アリス達は消えていった。暗い闇の中に…。
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「…マナ、…マナ、…マナ‼︎」
あれ誰か私を呼んでいる?
身体冷たい、血が止まらない。
マナの負傷した体に冷気が襲う。
痛い、苦しい。
私はなんで生きているのか…
いっそ死んだ方が楽なのかもしれない。
そうすれば戦わなくて済むのに…。
苦しまなくて済むのに。
私なんて生きてる価値ないんだよ…
そう思うことしかできなかった。
彼の顔を見るまでは…




