表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

13その目に映るもの

明け方、

私は目を覚ました。横には凛さんがまだ眠っている。

なんの変哲もないいつもの朝。

しかし私にとっては懐かしかった目覚めの感覚を最近は毎日噛み締めている。


部屋には私の要望でどうしてもと、置いてもらったグランドピアノがある。

寝起きだが、椅子に座るまでははやい。

鍵盤に指が触れてメロディーを奏でる。

何かに集中したいときはいつも弾いている。

懐かしい曲。

かつての彼とも一緒に、弾いていたことを思い出す。

しばらく演奏を楽しんでいると、拍手が聞こえた。

凛さんは起きていてこっちをみながら笑顔でいた。

「素晴らしい目覚めをありがとう。」

「別に凛さんのためじゃないけど、」

「わかってるよ、そんなことは。

でも、こうして千夏が普通に暮らしていてくれているだけで私は嬉しいよ。」

凛さんはいつも厳しいが、こういうことを素で言ってくるからズルいと思う。

「まぁ、でもこの体には納得していないけど。

いくら人工です作ったからって、食べた分だけ太る機能はいらないでしょ。」

おかげで肉付き何よくなったし、胸もデカくなるし…」

「いいじゃないの、そっちの方がモテるかもよ」

「いいの、ひさくんだけで…」


身体は変わってしまったが頭の中の乙女心は健在だ。しかも彼女は一途とくる。

問題は一度死んだ人がまさか生きてるなんて普通は思わない。

自分から言わないかぎり相手が千夏だということは気づけない。普通は。

そんな彼女を凛は、少しばかりかわいそうに思う時がある。


「そういえば、今年は花火見に行くの?千夏。

ほら、死ぬ前までは毎年行ってたじゃない。」


たしかに前までは道久とよく行ってたかもしれない。

でも今は状況が違う。本当は心底から彼と行きたいのに…

「今年はやめとく…」


「あら、そう…」

もう少し駄々をこねると思っていたので少し驚いた。

でも、言葉にしなくても彼女が行きたそうにしてるのはわかる。誰と行きたいのかも…

彼女なりに今の状況を考えての判断だろう。もちろん私だってそっちの方が安全ていい。


でも、千夏を道久に近づけないようにしてる凛でも、千夏がかわいそうに感じた。

本来なら青春を楽しめたはずなのに、好きな人にも自分の正体を明かせないのは辛いことだと思った。でも今はどうしようもできなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


体育祭が終わり何かと行く気がでない次の日の学校。

俺はクラスの雰囲気が落ち込んでいるのを感じた。

主に男子が、

そう、男子たちが、。一人の男を除いて。

「なぁ大輝。なんでみんな落ち込んでいるだ?

お前はいつも通りだと思うが。」

一人いつも通りの大輝に尋ねた。


「そんなん決まってるだろ。みんな好きな子に振られたんだから」悪そうな顔の大輝。まるで自分が仕掛けたみたいに。


「俺がいない間に何があったんだよ。まさかお前が学園のマドンナとか言う人を独り占めしたとかじゃないよな?」


「それはお前だ」

はぁ?意味がわからない。なぜここで俺なんだ。

「まぁ、正確に言うなら昨日の体育祭でおれが企画した借り物競争が原因だ。

実はな、あの時のお題は全て"自分の好きな人"だったんだよ。

体育祭が終わった後にそのことが学校中に広まってしまい、この有様だ。」

相変わらず趣味の悪いお題を作る大輝。


「なるほど、それで好きな人がいることがわかってしまい、多くの犠牲者が出たってことか。かわいそうなことに。」


正直おれとは無縁なことなのでここまで落ち込むことがあるのか疑問に思ったがそれは愚問だった。


「お前はなんとも思わないのか?」

「うーん、正直ないな。」

「そのマドンナが小野江と有栖川でも?」

「別に、。

てか、みんなが好きだった人ってその二人なのかよ。」


「真の業者はそこから違うか、それか鈍感なだけか。

お前、二人がどれだけモテてるか知らないのか?

理央ちゃんは学校の中でもトップに入る学力を持ち合わせていて、かつ顔といいスタイルといい、プラスで家事が得意ときた、モテる要素しかないからな。」

確かに理央は面倒見がいいし、朝起こしてきてくれるし、弁当も作ってくれたり怪我の看病までしてくれる。

「マナちゃんだって、スポーツ万能、運動神経バツグン。おまけにいつもはクールぶっているところあるけどたまに見せる可愛らしい笑顔に男共は一発ノックアウト。これはやばいね。もちろんスタイルも顔も理央ちゃんと引けを取らない。」

マナのクールぶれてないのがみんなにバレバレだったのはさておき、ここまで二人がモテてるのは意外だった。

二人が告白されてるところ話とか聞いたり見たりしたことがない。

いつも身近な二人だからあまりそういったことは思ったことないのかもしれない。

もしかして、俺が普段はいるから、他の男子から告白されることがなかったのかもしれない。


「二人と会長を合わせてうちのマドンナトップ3だから。

お前よかったな、仲良くて。」

仲が良いわけで別何もない。

「俺には関係ないことだ。

それで、二人は誰を選んだんだ?」


「関係ないと思っているのにそれは気にするだ。

まぁいいや。

それがさ、ここまでは俺が思ってた通りだったんだけど、ほら色々あったじゃん。

マナちゃんは途中でいなくなっちゃって、分からずじまい。

理央ちゃんもなぜかリタイアその後どこか行っちゃうし。


「せっかく二人とも言ってくれると思ったのに、残念だよ。」

まぁ全てコイツが仕掛け人で今回の騒動の原因ということはわかった。

「まぁでも面白いことわかっ…」



「ねぇねぇ、もしかして私達のこと話しているの?」

興味津々な表情で、理央とマナがやってきた。

「借り物競争の時のことで、お前ら大変だったな、コイツのせいで、」

俺は今回の主犯を指さした。

「おい、ちょっと待てみっちー、コイツらせっかく忘れてそうだったのに思い出させるなよ…うァァ…」

理央の拳が大輝の溝落ちに深く入った。

「そうだった。いろいろありすぎ忘れてたわ。

マナちゃん。どうするコイツ。」

横のマナは

「極刑で。」

「おい。ちょっと待てよ。

ほら、俺は運動系じゃなくてさ、インテリ系だから。仕方なくない?」

「それが。?」

マナの冷たい一言が大輝クリティカルヒット。

大輝はその後、死を見た。



「ふん、いくらなんでもタイミングがあるでしょ。タイミングが、」

「そうだ、そうだ」理央とマナが意気投合してるなか、


「てか、お前らってその…

男子から結構モテているってこと知らなくて…

付き合っている人がいるならごめん、俺が邪魔だったならごめん、先に謝っておく。」


二人の顔がそれぞれこわばった。

あれ、何かまずいことでもいったのか?もしかして俺も極刑、


理央はムスっとしながら、

「みっちゃん、バカ。

告白はされてるけど付き合ってら人なんていないから。

全て断ってる。

別にみっちゃんにはバレないように隠してたわけでもないし。

みっちゃんとずっといるのに他の男子と付き合うわけないでしょ。

それに、まだみっちゃんを超える人なんていないから。」


「それは褒めてくれてありがとう…」


大輝はおもしろながらその光景を見ていた。

「ほとんど言っているのにな、笑」

「お前は黙っておけ。」

怒りの鉄拳が再び炸裂

「イャあああ〜。暴力反対!」


理央は不満そうな顔をして

「他にないわけ、思うことは」

そんなこと言われても心当たりはない。理央にとって俺は良い幼馴染。ってこと。

でも今はそれじゃないような…?


「あーあ、ここまで言ってるのにな…。

まぁいいや、ここまでは想定内のさらに内側。」

そうはいいながら、もうっ、と理央は不機嫌。


「マナちゃんは、みっちゃんのこと同じクラスメイトとしていい人だと思ってる?」


マナは少し悩んで

「他の男子と比べて

道久君は魅力あると思うよ。

告白されるなら道久君がいいなぁって。なんちゃって。

あくまで仮の話だよ⁈」


「ね、ほら…みっちゃん。マナちゃんだってこう言うんだし…」

マナは共感してくれて嬉しいはずだったのだが、どこか複雑だった。


よくわからないがマナからもなぜか褒められた。まぁでも俺のせいで二人が不都合ないならそれでい。


ーーホームルームの最中、ーー

隣には理央ではなくマナがいる。

テストも終わり席替えが行われのだ。


マナに小声で話しかけられた。

「道久、私は仕事のパートナーとして道久と関わってるけど、別にいつもの学校とかでは他人のふりなんてしなくていいから。」

「え、あ、そう?」

「道久はどうせプライベートだから気を使っていてくれてるだけだけど、私は道久ともっと話したい。わかった?これからは気にしないでね。」

「わかったよ。正直どの距離感でいつもは接したら良いのか悩んでたし、」


「なら、今日から私のこと"マナ"って下で呼んで」

マナが唐突に言い出した。流石にそれはやりすぎなような。、


「それはちょっと…」

「何よ。任務の時はマナ、マナ、言ってるのになぜなのよ。理央さんのことは下なのに私だけ…」

正直恥ずかしい。任務は名前が短い方が言いやすいし、理央は幼馴染だし慣れてるからか恥ずかしくない。

「だって、マナっていうの、なんて言うか…

その、緊張するって言うか。付き合ってないのに普通は言わないんじゃないかなって…」

マナは理由を知れてどこかニヤけてる


「ふーん、わたしのこと意識しちゃうかもしれないから言えないなんて。

まだまだお子ちゃまだな。」

そんなこと言っておいてマナの顔はまだ夏がこれからだっていう今日なのに赤くなっているように見えた。


「実はマナも言われると緊張してたりして?」

まぁでもそれはないか。本人から提案してきたんだし。


そんなマナは

「そ、そんなことないから。当たり前じゃない…。」

あれ?思ってたより今言われて動揺しているような。

「マナだって緊張してるじゃん笑

やっぱりやめとく?」


「ダメ、このまま続けて」


「別にそこまでしなくても…」


「続けるって言ったから、ちゃんと言いなさいね、」

マナがここまで必死になってる姿なんて思わず笑ってしまった。

「なによ、」

「マナ、」

「う、急に言われるのは…」

「別に任務でいつも言ってるだろ。」

「道久のいじわる…」

ちょっとばかり拗ねてしまったマナだが表情は嬉しそうだった。


「マナ、今度またスイーツ一緒に食べに連れてくから、機嫌直し…」

「え、!!行く。やったー!、」

マナは言い切る前に思わず喜んだ。


「コラー怒。急に大声出して、そこの二人。今はホームルームってことわかっているよな?あん?」

あー怖い。

マナの喜びがマックスになってしまって大声出しすぎてしまったようだ。


「二人とも配布物取ってこい」


「…はーい。」二人で歩いていった。



さっきまでのやり取りを見ていた理央は心の底で嫉みを抱いていたような気がした。

道久とマナが仲良さそうにしてるのを見てると集中できない。

マナちゃんは友達なのに…

でもマナの道久に向ける表情は柔らかく、それは自分が道久に向けるものと同じな気がした。

「みっちゃんも楽しそうだし…」

マナちゃんって…どう思ってるんだろ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ