12 アンバーとダイヤモンドブルー
校内の放送室
会長と二人っきりでいるのは凛であった。
「凛さん。私は仕事しなくていいのでしょうか。」
「別にしなくていいんじゃない。あなたが出ると余計に大変なのよ。
それとあなたはエドワードという男を探して見つけてくれた。それだけで十分だわ。」
「でも結局逃してしまったわけですし、私がもう一度探した方が良いのではないのでしょうか?」
「そう言って道久君に会いに行くんじゃないでしょうね。
せっかくずっと禁止していた、生徒会長として公に出るのを許可したのに。これ以上おねだりは禁止です。」
「う、凛さんの意地悪」
凛はため息をついた。
「千夏、あなたには国家がかかってるの。
貴方の弱み、それは道久君でしょ。」
会長、千夏は目を泳がす。
「わかりやすい子。
もし、敵対組織に道久君をとられたら、貴方は助けるためになんだってするでしょうね。例え私たちのことを裏切ろうとも…」
あまりにも図星で千夏は黙り込んだ。
「わかった、?千夏。今バレないようにしてるのも貴方のためでもあるんだから、しばらく大人しくしてなさい。」
千夏は仕方なく頷いた。
「ねえ、凛さん。」
「うん?やっぱり無理とかなしだぞ。」
まだごねてくると思っていたが違った。
「ううん、そんなことじゃないです。真剣な話です。」
いつもの千夏とは違う。
「どうした、珍しく。真剣な話って何のことだ?」
重い雰囲気に包まれた。
「凛さんたち、上層部はなんで"あの女"を生かしているのかってこと。」
"あの女"とは、
「あー、道久君の新しいパートナーの子?あの子は千夏と同じ感じでGIAになって…それで…」
「違う。そっちも気になるけど。
今はその子のことじゃない。ひさくんの横にいたもう一人の子」
もう一人の子?
凛は思い返してみてある一人の少女にたどりついた。
でも、その子は一般生徒。だったはず、私は何も知らない。なぜ千夏はGIAでもないこの生徒のことを気にしているのだろうか。
「凛さんは知らないんだね。」
「うん?何が」
千夏は何か言おうとしたが思いとどまった。何か裏がありそうで、例え凛さんが仲間だったとしても今そのことを伝えるのは軽率すぎる気がした。
「気にしないで、凛さん。なんでもない。興味があっただけなので。」
あの女のことは忘れたくても忘れられない。
私に一撃を与え、致命傷を与えた奴の姿は…
金剛色と琥珀色のオッドアイの瞳
カラコンか何かで色は変えてたけどそれでも隠しきれないその瞳は私にはすぐわかった。
今日の奴は普通のただ楽しんでいる高校生に見えたが、裏の顔を私は知っている。
あの夜、
月下の元で見た奴の殺気は恐ろしかったことを今でも鮮明に覚えている。
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さほど道久たちが逃した場所から遠くないところの狭い裏路地でエドワードは流血した部位を抑え歩き続けていた。
「クソ、悪魔め。
なぜ私を助け逃した。私に前主人を探させて見つけ出すつもりなのか。」
通称"悪魔"今組織を動かしている人間であり、今のトップに君臨する者。
前主人がいなくなってからは好き勝手にやりやがって…
それにGIAには我が主人はいなかった。捕まった後こちらの情報と交換に主人と面会させてくれと頼んだ。しかし、GIAの職員と話したが、そんな奴はいないと返答があるだけ。そもそもいない、と言う。
なぜだ、確かにあの事件であの娘は捕まったはず。GIAの剣士を、倒してから…
いやいや、そんなわけないのか、。
前頭首の一人娘であり、頭首亡き後主人として私が認めたあの方が負けるわけない。
なぜ私は気づかなかった。あの方が負けるなんてありえないことだ。例えいくら若くしても。
タン、タン、タン、タン、…
誰が近づいてくる。エドワードは追ってが迫ってきたと思い最後の抵抗を見せるため物陰に隠れ相手の様子を伺う。
しかし、相手のことを姿はどこに見えない。たしかにさっきまでこちらには近づいていたはず…
背後で引き金が引かれた。
銃声とともにエドワードは倒れる。彼が見た最期の光景は自分が慕っていた主人から向けられた銃口だった。
主人の目は今でもアンバーとダイヤモンドブルーの濁りのない美しい瞳であった。
一人の女性はかつての部下ので死を見届けてその場を去る。
突然、スマホの電話が鳴って電源を消し忘れていたことに気づき、慌てて電源を消した。
しかし、消す直前に見えた名前に後悔した。
「みっちゃん、話したかったな…。」
レーダー女に見つかったら元も子もないので仕方なかったが、
彼女のその表情は残念そうだった。