死神との出会い
ありがとう、
私のパートナー(相棒)
そして、さようなら…
これが運命だったことはもうわかりきったことだった…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
外が霧雨の中、もういつから使われていなかったのかわからない工場の中、
一人の少女はただ立ち尽くす…。
コードネーム"死神"
彼女は誰で目的はなんなのか誰も知ることはなかった。そう今までは…
赤く染めあがり、冷んやりとした床には人体が無数に息絶えていた。
響き渡るサイレン、突入してくる部隊、部隊はすぐさま彼女を取り囲み陣形を作った。
その銃口はただ彼女だけを見つめる。
「直ちに降伏しろ、お前はもう袋の鼠だ。捕まるか、死ぬかも時間の問題。捕まった後も地獄を見るがいい。お前は人を殺めすぎた。」
「降伏したところで待っているのは死のみだかな」と隊長は淡々と伝える。
しかし、そんな言葉彼女には聞こえていない。正確には頭に入らない。
彼女が言葉と認識するのは"命令"ダダそれたげである。
「チッ、返事がないということは降伏を認めないと言うこでいいな、」
「全隊員に告ぐ、戦闘体制を維持したまま、彼女を拘束する」
掛け声とともに彼女との間合いを詰め始めた。
そんな中、彼女は何もしようとしない、いや、正確には待っているたげだったが、…
そう、"命令"を、。。。次に聴こえたのは悪魔の声であったのは確かだった。
「殺れ」
まず手始めに1人の隊員が一撃で生き絶え、それからというもの全滅させるのに1分とかからなかった。
残ったのは殺りきったあととは思えないほど感情が全くというほどない彼女と、さらに増えた冷たい人体と一人の駆けつけたばかりの少年だけだった。
「こんなに一瞬とは。流石に一人じゃやばいな、」
少年の顔は強張っていた。
彼女は少年を見つけたが、気にもしてなさそうだった。すぐに視線を逸らし、ただどこか悲しそうに、孤独で使命に逆らえずに殺してしまった人たちを見ていた。
「救援に呼ばれてきたがもう遅かったか、」
少しの間を経て少年は口を開く。
同い年ぐらいで、自分だって一歩間違えてたら彼女のようになっていたかもしれない。俺は彼女に親近感をもった。
「ねぇ、君」彼女を呼んでみたが返事はない。
「君はなんで殺し続ける?」
もちろん、何も返ってこない。
少し言い方を変えてみて
「君は今のままでいいと思ってるの?」
yesかNOかで答えられるようにしてみたが
彼女が答えることはなかった、しかし、動揺はしていたようだ。彼女自身、ここまで話してくる相手なんて未だいなかったからだ。
でもそれで結果的になにか起きるということはなかった。ただ血まみれの床を見つめるばかり。
それは少し寂しそうな感じで、それとも何か裏があるようなそぶりだった。
次の瞬間、彼女のつけていた通信機に命令が入った。
「次だ、その男を始末しろ」
その声はどこか脅しているように聞こえたのは気のせいではない。その声を聞いたとき俺は決意した。彼女を放って置けないと。
彼女はその命令に従った。殺意を少年に向けて、
彼女ので片手にはナイフ、もう一方には拳銃を握りしめて迫り来る。柔軟な身体を使い低い位置から攻めてくる。
なんとかかわしたがすぐにもう一撃が迫ってきて手持ちの自分の銃が床に弾き飛ばされた。武器がないからといって気を緩めることなく彼女は次の行動に移る。容赦はしない。攻撃は止まらなかった。その時の彼女の目は深赤のように奥深に秘めた決意のようなものが感じられた。それは何か大切なものを守っているかのように。
俺だって戦って何人もの悪人を始末し、失ってしまった命がいくつもある。俺の場合はそれが社会のため、正義のためというだけでありやっていることは彼女と変わらない。
だから俺だって助けたい。救える人間ていたい。俺は心の底から思うことを吐き出す。
「そんな命令きいていていいのか。それが全てなのか。お前にとってなんだよ。頼む信じてくれ俺を。君を助けたい。今は困るかもしれない。でも今のままでいいのか。ねぇ…答えてくれよ。」彼女の目にはまだ輝きがあった。
俺は諦めない。
少年はここまで彼女を説得しようとするには自分と同じというだけではない。もう一つ別の理由がある。過去にも彼女と同じような境遇の女の子を助けたのだが、それは失敗に終わった。その子は死んでしまった。それからというものも俺はずっと悔やんでいた、そしてまた見つけたのだ。彼女を。次は失敗したくない。そう心に刻んでいた。
しかし、彼女も死神と恐れられながら中身は人だ。
人には弱みがある。弱みを握られた人間はもう歯止めが効かない。
それのためならなんだってすることができる。
でも、誰かのために(それは親族なのか、社会のためなのかは定かではないが、)自らを犠牲にすることは誰にでもできるわけじゃない。それが例え「殺し」というものであっても。それだけ彼女らは必死なのだ。
そんな弱みにつけ込み人を殺させている奴つらをおれは許すことができなかった。
だから今は彼女だけでも、助けたい。
だから…なおさら
「あの子と同じ姿だけはもう見たくないない…」あの子の最期なんて思い出したくない。
ほぼゼロ距離で発砲された銃弾をギリギリのところでかわして
彼女の目を見て言った。「そんなことはやめにしないか.それは君がほんとに望んでいることなのか。俺にはそう思えない。俺は過去に出会った君と同じような子を助けたことがある。
でも俺は何もその子の望むような未来をつくってあげられなかった。もう次は失敗したくない。今目の前で失うことはできない。君の未来を俺に変えさせてくれ。」
ここで今まで開かなかった彼女の口が初めて開いた。
「黙れ、私の何がわかる。
どこの誰かかは知らないがそんなやつと一緒にしないでくれ。私は生まれた時から死神だ。どうせ誰からも愛してもらえないことなんてわかってる。殺すことが私の生きがい。私には初めからそれしかないんだ。これで満足している。他に必要ない…
どうせ…どうせ君には何もできない。協力なんて結局できないんだ。私の未来なんて到底変えられないさ。」この産まれた世界に彼女は絶望を感じていた。彼女の弱みは彼女自身であり、何も変えられなかった自分の弱さである。
「確かに俺は君のことを知らない。ましてもその事情なんて。てもそれだけで助けないということにはならない。俺は信じるよ。君にどんなことがあろうかとも。だから俺を信じて欲しい。
彼女にとって初めての経験だった。
そもそも私のことを一人の人間と見てくれる人なんて誰もいない。それは今の組織でもだ。所詮私なんてただの殺しの道具。わたしを私と見てくれることなんてない。そう思っていた。でも彼は違った。だか私だけを見てくれた。しかし最後に壁があった。信じ切ることができなかった。この初対面の目の前のこの人を。
「そんなことは、ない、私は君を殺しそして、…そして」と感情的に言い、少年の首を狙って刃を突き刺した。
そのまま刃は彼に突き刺さった。彼は避けるという選択肢顔ありながらも受け止めるという選択を選んだのだ。
「なんで、なんで…
こんな私のためにそんなことしなくても…」
彼女は更なる絶望感を感じた。彼が死んだら私はもうこのまま助かることはない君がしたからだ。
心のどこかで期待してしまっていた自分は落胆しているのか、いや、
「いいんだ、私、今もこれから先もこれでいい…」
「私は道を踏み外してしまったから…これで、」
背後から数名の人影が現れる。
「…死神、そんな小僧一人に心を乱されるなんて忠誠がなってないな…。お仕置きが必要みたいだ。」
「すいません、それだけは…は、」
通信機から聞こえる声は彼女にとって恐怖そのものであり、悪魔の主人に逆らうことができない。
悪魔の手先がこちらに銃を構え狙っている。
命までは取らないが肉体的苦痛は躾に使われる。
彼女にとって相手は格下であるが、逆らうことは主人を裏切ること。
背後の獰猛な殺気が彼女を苦しめる。
銃弾が放たれた。
肩に強い激痛が走り、膝をつく。
私は従うしかないのか…
こういう運命なのか。
銃口がこちらを向き、痛みを覚悟したとき、
その弾丸は当たらなかった。
正確には彼女には当たらなかった。
そしてさらにもう一発、弾丸の発砲音とともに主人の使者が倒れる。
顔をあげて見てみると、そこにはさっきこの手で殺したはずの彼がいた。
彼は死んでいなかったのだ。
狙った刃は急所を大きく外れて彼の腹に刺さっていた。
けど弾丸何さらに命中して、まともに立てず、倒れる。
「そんなに一人で抱え込むな、こっちだって道間違えてるわ」少年は腹が痛いのを誤魔化して笑った。
そしてそっと彼女の両手を握り、「一緒に来い、もう一回言う。君を助けたい、信じてもらえなくていい、でも、俺の想いは本当だから。いいか?」と冷たくなってきた体からとは思えない温かさがあった。
「もう、、バカ。死んだふりしてればよかったのに…」
今の組織は、これからのことは…。彼女の頭の中は不安と恐怖で埋め尽くされていたが今は希望しか目に写らなかった。
いやそんなことは考えるな私。今目の前の救世主はこんな私にも手を差し伸べてくれた。今はそれだけでいい。
彼女は本来、心のどこかで求めていたものが見つかったような気がして、また、この目の前の少年に恋するように、「はい、」と、
「良かった、返事を聞けて。ところで…君の…名前はなんて言うの挨拶ぐらいは死ぬ前にしとかなくちゃ…"一緒に"って言ったけど約束守れるかわからないや」
彼女は耳元の通信機を投げ捨て粉々にし、今までのコードネーム"死神"の名を捨てた。
「マナ」
「マナ•ミハロウネ•有栖川」
「こんな私にありがとう」
ここで少年、四宮道久の意識は遠のいた…