表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セイクリッドボーダー -銀光の誓約-  作者: デイジー
第1章 騎士団入隊編
18/23

第18話「仲間の絆と潜む影」

夜の帳が下りた宿舎の一室。

粗末ながら温かな灯りが揺れ、小隊の面々は木の卓を囲んでいた。一次試験突破を祝う、ささやかな食事会である。


「はーっはっは! 俺たちが一番強かったってことだな!」

リアンが豪快に肉を頬張り、胸を張る。


「強かったのは俺の索敵と裏取りのおかげだろう?」

すかさずラトが皮肉を飛ばす。


「なにぃ? お前がちょろちょろ走っただけじゃねえか!」

「走っただけ? じゃああの旗、誰が抜いたと思ってるんだよ」


互いに譲らず声を張り上げる二人を見て、ダリオが苦笑交じりに口を挟んだ。

「はいはい。じゃあ次の試験で証明すればいいだろ。どっちが本当に役に立つか」


場が和やかに笑いに包まれる。


セリウスは少し離れた椅子に座り、紙片にペンを走らせていた。

「……個々の力は悪くない。問題は連携。互いの長所を噛み合わせれば、十分に上位を狙える」

彼の冷静な眼差しは、仲間を観察する戦術家そのものだった。


そんな中、フィオナは手元のスープに手をつけず、ぼんやりと器を見つめていた。

「……」

その様子に気づいたカムイが、そっと声をかける。

「どうした? 食欲ないのか」


驚いたように顔を上げ、フィオナはかすかに笑った。

「うん……ちょっと緊張してて。次の試験、きっともっと厳しいんだろうなって」


カムイは真っ直ぐに彼女を見つめた。

「大丈夫だ。俺が守る。だから――信じて前を見ていこう」


一瞬、フィオナの瞳が潤んだ。

「……ありがとう。みんなと一緒なら、きっと乗り越えられるよね」


その言葉に、卓を囲む仲間たちが無言で頷いた。

小隊の絆は、確かに形になりつつあった。



翌朝。

王都訓練場に受験者たちが集められ、教官が二次試験の概要を告げる。


「課題は山林踏破。指定された地点まで小隊単位で到達せよ。評価は行動と協調性に基づく」


緊張感が一気に広がる。


支給品を受け取る場面でも、各々の性格が現れた。

ラトは荷を軽くまとめ、「斥候は身軽じゃなきゃ」と鼻を鳴らす。

リアンは余計な干し肉を詰め込み、ダリオに「また背負子が爆発寸前だな」と呆れられる。

セリウスは冷ややかに言い放った。

「持久戦を軽んじるな。無駄は置いていけ」


小さな口論や笑い声が絶えないが、それぞれが役割を自覚しているのが見て取れた。



その頃、山林の奥。

焚き火を囲む粗末な一団がいた。ぼろ布をまとい、野盗を装ってはいるが、その眼光は鋭い。


「連中は試験とかいう小競り合いに夢中らしいな」

「好都合だ。俺たちは“主”の命を果たす……牙は隠しておけ」


赤狼団の残党だった。

そしてその“主”の背後に、黒き教団――ノクス・オーダーの影があることを仄めかす言葉が交わされた。


偶然にも、その潜伏地は試験コースと重なっていた。



王都の詰所。

ガレスとバルドは報告を受けていた。


「また辺境で野盗まがいが出没したそうです。赤狼団の残党にしては散発的すぎますが」

バルドが鼻を鳴らす。


だがガレスは渋い顔で答えた。

「……いや、あれは野盗ではない。組織的な動きだ。背後に何者かが糸を引いている」

視線を窓の外へ向け、低く呟く。

「赤狼団は潰えてはいない。むしろ――これからが本番かもしれん」



出発の朝。

背嚢を背負い、武器を手にした小隊は山林へと足を踏み出した。


「全員で無事に帰ってきて、合格を笑い合おうね!」

フィオナが明るく言う。


「当然だ!」リアンが胸を叩き、ラトが苦笑する。

「お前が余計なことして足引っ張らなければ、な」


笑いながらも、それぞれの瞳には闘志が宿っていた。


その先に、偽装した赤狼団の影が待つとも知らずに――。

面白ければ評価、ブックマークを

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ