表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セイクリッドボーダー -銀光の誓約-  作者: デイジー
第1章 騎士団入隊編
12/23

第12話「王都グランフェリア」

 王都への街道を、カムイとリアンはゆっくりと

歩いていた。

数日前の戦闘の傷はもう塞がっていたが、全身に残る鈍い疲労は完全には抜けていない。

それでも、二人の歩調は揃っていた。


「なあカムイ、その腰の袋……まだ持ってるのか?」

リアンが不意に問いかける。


カムイは無言で袋を開き、中から例の黒い水晶を取り出した。

あの夜、ノクス・オーダーの男が泉の魔力を吸収していた時に使っていた、不気味な結晶。

触れた瞬間、脈を打つように光り、熱を帯びていた感覚が、まだ鮮明に残っている。


リアンは腕を組み、じっとそれを見つめた。

「気味悪いもんだな……。ちょっと貸してみろ」


カムイは一瞬ためらったが、水晶を手渡す。

――しかし、何も起きない。

黒い水晶はただの石のように冷たく沈黙し、淡い光すら宿さない。


「……おかしいな。お前の時みたいに光らない」

リアンが首をかしげると、カムイも眉をひそめた。

「やっぱり、俺だけに反応してるのか……」

「特別扱いってやつか? でも、それはあんま嬉しい種類じゃねえな」

リアンは冗談めかして笑ったが、その瞳の奥に小さな警戒心が見えた。


二人は顔を見合わせたまま歩き出す。

その背後で、袋に戻された黒い水晶が――わずかに、ほんの一瞬だけ淡く明滅した。

それに気づく者はいなかった。



街道の先、空の向こうに巨大な石造りの城壁が姿を現す。

遠くからでも分かるその圧倒的な高さと厚さに、二人は息を呑んだ。


「……あれが、王都グランフェリアか」

「でっけぇ……村の柵とは比べもんにならねぇな」

リアンが素直に感嘆の声を漏らす。


城壁に近づくにつれ、道は賑わいを増していく。荷馬車を引く商人、旅装の剣士、鮮やかな衣服を纏った貴族らしき人影――

見たことのない景色に、カムイの胸が高鳴った。


門前広場には、検問の列が長く伸びていた。兵士たちが通行人の身分や荷物を確認し、通行許可を出している。

列に並びながら、カムイは視線を巡らせた。

その時、門の横に掲げられた一枚の掲示板が目に留まる。


――《王都騎士団 新規入団試験 開催告知》


文字を目で追うと、試験の概要や日程が書かれていた。

カムイはじっとその紙を見つめ、拳を握る。

戦いの中で守れなかった人たち。あの悔しさ。

「……俺も受ける」

小さく呟いた声に、リアンはにやりと笑った。


「お、やっと言ったな。俺と同じ舞台に立つってわけだ」

「そのつもりだ。……俺は、自分の手が届く範囲くらい、守れるようになりたい」

リアンはうなずき、軽く拳を突き出した。

「なら、二人で受かろうぜ。どっちかだけなんてのは無しだ」

カムイも笑い、拳を合わせた。


検問を終え、二人はついに王都グランフェリアの門をくぐる。

その瞬間、視界いっぱいに広がる壮麗な街並みと、石畳を踏みしめる足音が、これから始まる新たな物語を予感させていた。

面白ければ評価、ブックマークを

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ