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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第5章 家族のような存在
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第98話 アルトイリス家の逆襲

 リクレールがメイド三人を雇った翌日、セレネがリュールに直談判した甲斐あって、アルトイリス家の葬儀参加順が大きく繰り上がって2日後となったことが正式に通達され、代わりにブレヴァン家が順位を大きく下げた。

 表向きの理由としては「調整ミスがあったので修正した」ということだったが、当然そんなことを真に受ける貴族は一人もおらず、先日の決闘騒ぎも含めて裏でいろいろあったのだろうと察していた。

 騒ぎの渦中にあったアルトイリス家は、最終的にミュレーズ家とは今後も親戚同様の関係を続けていくという形になり、面目を大いに保ったのはいいのだが……


「誰が裏で動いてるか知らないけど、セレネのことを考えずに余計なことをするからこうなるんだ!」

「ごめんなさいね、ミュレーズ家もバスチアンが亡くなってから、仕えてる家臣たちが既得権益争いで必死なのよ」

「あらかじめ準備しておいて正解でした。危うくご主人様まで大恥をかくところでしたから」


 本来は7日後だった順番を急遽2日後に大きく前倒しされたことで、リクレールも準備を大幅に前倒ししなければならなくなった。

 アルトイリス家が行ったマリアの葬儀は急場しのぎだったため、諸々の格式ばった準備をかなぐり捨てて強行してしまったが、本来の侯爵家当主の葬儀は服装から祝辞まで、ありとあらゆる動きが決まっており、その対応をするにも相応の準備が求められる。

 特に服の準備はとても大切で、前日から準備していては間に合わないということもあり、リクレールはこうなることを見越して準備を早めたのだった。

 もっとも、早めに準備するよう進言したのはやはりエスペランサだったが。


(やれやれ、エスペランサが言ってくれなかったら、ひどい格好で出席しなくちゃならなかったところだった)

『セレネ様はそこまで深く考えておられないようですが、先方の何者かがアルトイリス家次期当主の能力を試しておられるのでしょう。が、逆に言えば主様が完璧に対応なされば、主様の用意周到さを世に知らしめることができるのですわ』


 そんなわけで、エスペランサの助言が功を奏し、リクレールは式典本番でも一部の隙もない見事なゲストを演じきって見せた。

 ミュレーズ家にはリュール以外にもリクレールのことをよく思わない貴族はそれなりにいるが、14という若さを感じさせない堂々とした振る舞いは、彼らの批判する口を見事に黙らせたのだった。


 その一方で、順位を大きく下げる形となったブレヴァン家は阿鼻叫喚であった。


「アヴァリス様が大怪我を負われた上に、葬儀の出席順位を下げられるとは! なんというありさまだ!」

「これでは侯爵閣下に面目が立たないぞ! 何とかならないか!」

「ミュレーズ家にはあれだけ我々が献上品を贈呈したというのに、それを無碍にするつもりか……」


 ブレヴァン侯爵自身は多忙により東帝国まで来ることができないため、アヴァリスがその代役となる予定だったが、アヴァリスは決闘で大怪我を負ってしばらく養生しなければならない上に、東西貴族たちの間では、彼が決闘で不正をしてなおリクレールにボコボコにされたという話が急速に広がっており、その悪評によって彼の代理人として参列するのに相応しいとは言い難い状況になっていた。

 侯爵には精霊の書簡で早急に状況を報告することになるだろうが、おそらく責任者の何名かは物理的に首を飛ばされることを考えると、なかなか報告できないだろう。

 そんな中、意外な人物がブレヴァン家に助け舟を出してくれた。


「ことの顛末についてはこの私から報告しよう。責任の一端は私にもあるからな」

「デュカス様が!? よろしいのですか!?」


 白竜学級の担任教師であるデュカスが、わざわざ事の顛末の報告するための書簡を侯爵に届けさせた。

 実はデュカスとブレヴァン侯爵は旧知の間柄であり、彼としてもアルトイリス家……いや、リクレールにしてやられたことを悔いているのだ。


(あれをのさばらせるのは……西帝国の危機だ。教師が特定の一族に肩入れするのは避けるべきだが、今やそうは言っていられん)


 こうしてデュカスが間に入ったことで、本国にいるブレヴァン侯爵の怒りはそこまでにはならなかったようだが……いずれにせよ、家格を落とす原因となったアヴァリスには、帰宅後にキツイお仕置きが待っていることだろう。

 ともあれ、ブレヴァン家は弱小と侮っていたアルトイリス家が油断ならない敵であることを認識すると同時に、彼らが進めていた「計画」を前倒しする決意をしたのだった。

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