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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第5章 家族のような存在
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第97話 占いが示す結果は

「伯母様、これでよろしかったのでしょうか? 伯母さまは以前よりアルトイリス家の衰退と孤立を知っているがゆえに、これ以上当家の繁栄の足枷にならぬよう、折を見て切り離していくか緩やかに吸収併合していくかという方針を志向していたと私は記憶していますが、伯母さまはいともあっさりとセレネ様の要求を全面的に受け入れて、今まで通り格上の待遇とすることに私はいささか嫌疑の目を向けざるを得ないと感じております」

「そうね、ついこの前の私なら、姫様をなんとしてでも説得し、アルトイリス家との関係消滅を望んでいたでしょうね。だけど、情勢は変わったわ。インテグラは先日発生した士官学校内での決闘の顛末は知っているかしら?」

「その件についてはセレネ様から直接聞き及んでおります。俄かには信じがたいですが、常人よりも武芸の腕が劣るリクレール様が、あの白竜学級級長を担っているアヴァリス様に決闘で勝利したと」

「私も何かの間違いではないかと思って調べ尽くしてみたのだけど、リクレールが勝ったという意見もあれば、両者引き分けに終わったという意見もあった。引き分けとは言っても、負けを認めてないっていうだけみたいだから、実質敗北よね。ついこの前は、ミュレーズ家騎士団が討ち漏らした魔族軍残党を、アルトイリス家が掃討したという噂もあって、それほどの嘘をつかなければならないほど衰退しているのかと思ったけど……どうも本当の話らしいのよね」

「…………」


 アルトイリス家が魔族軍残党を掃討したという言葉を聞いたインテグラは、無表情ながらもどこか後ろめたそうだった。

 諸々あって帰国を急いでいた状況だったとはいえ、残党を見逃したのはミュレーズ家の失態であると同時に、軍師であるインテグラにも責任の一端があるからだ。


「インテグラ、前にも密かに話したけど、私は西帝国との関係において、アルトイリス家を切り捨ててブレヴァン家に乗り換えるつもりでいたわ」

「存じています。しかし、今までの話を勘案しますに、アルトイリス家にはまだ利用価値があり、逆にブレヴァン家はこのところ失態続きで、迂闊に乗り換えるのは危険であると判断したということでよろしいでしょうか。であれば、なぜセレネ様にそのことをお話にならないのでしょうか? あらかじめ伝えておけば、セレネ様がこの館まで乗り込んできた挙句に伯母さまと対立するようなことはなかったと思いますが?」


 なんと、リュールはセレネが来る前から、アルトイリス家の葬儀参列順を元の序列に戻すことに決めていたようだが、それをセレネに伝えることもせず、あえて対立してからセレネの命令に従ったという回りくどい方法をとった。

 インテグラは伯母がなぜこのような回りくどい方法をとったのか疑問に思っていたが……リュールは不敵な笑みを浮かべてこう言い放った。


「もちろん、姫様に恩を売るためよ。この密室での出来事とは言え、姫様は私たちに無理やり自分の要求を押し付けたことに少なからず負い目を感じていることでしょう。このご恩は、しかるべき時になったら返してもらいましょう」

「伯母様……」


 主と仰ぐ人間に対しても策を弄しようとする伯母を見て、インテグラは何とも言えない嫌悪感を抱くと同時に、いざという時は自分がセレネを守らなくてはならないという想いをより強く持つに至った。

 インテグラが無表情ながらもどこか納得のいっていない雰囲気のまま部屋を出た後、リュールは改めて手元のカードを手元にかき集め、よく混ぜ合わせた後、手順に則ってカードを並べたり裏返したりする。


「……やはり、何度占っても結果は同じ。アルトイリス家は近い将来消滅するのは避けられない。その上、新しく手を組んだ侯爵家も、結果は大凶……国家滅亡の恐れあり。そして……西帝国自体もまた同じ。しかも滅亡の原因となるのがアルトイリス家と出ている以上……早めに手は打っておきたいわ」


 主君に懇願されてアルトイリス家の肩を持つようなことをしたが、リュールとしてはなるべく早いうちにアルトイリス家と手を切るべきだという気持ちは変わらない。

 ましてや、西帝国全体がアルトイリス家のせいで国家消滅の憂き目に遭うという占いの結果が出たのなら…………

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