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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第5章 家族のような存在
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第96話 謎多き占い師

 セレネはインテグラとは幼いころからの付き合いで、肝胆相照らす仲ではあるが、彼女の伯母はどうにも彼女が苦手とする人物だ。


(相変わらずこの人は何を考えているのかわからないわ。それに、占いでいろいろ見通しているのも、あまりいい気がしないんだけど)


 果たしてセレネが居間に入ると、机の上には占いで使われると思われる、絵の描かれた無数のカードが意味ありげに広げられていた。

 リュールの占いはよく当たるとか柱でも評判であり、彼女の占いでミュレーズ家が危機を脱したことが何度もあるが、あまりにもよく当たるので却って不気味がる人も多い。


「さて、姫様がこのような遅くに私を訪ねてきたのは、アルトイリス家に関することで間違いないでしょうか」

「話が早くて助かるわ、その通りよ。アルトイリス家は何代も前から、ミュレーズ家と親しい間柄だったし、兄さんとマリアさんは婚約していたんだから、それ相応の扱いをすべきなのに、どうしてリュールはアルトイリス家をないがしろにすることにしたの? 私が知らずにいたら、ミュレーズ家は大恥をかくところだったわ」

「セレネ様は、次期当主となったあの少年……リクレールに肩入れしているようですが、はっきり申し上げましょう。今のミュレーズ家にとって、アルトイリス家は無用……いえ、むしろ害悪でしかありません」

「なっ……どうしてそう言い切れるの!?」


 リュールの口から放たれた言葉は、セレネにとって信じられないものだった。

 リクレールはかけがえのない親友であると同時に、セレネの心の拠り所でもある。実兄のバスチアンや、姉のように慕っていたマリアが戦死した後、崩れ落ちそうになった心を何とかつなぎとめていたのも、リクレールの存在があってこそだった。そのリクレールを不要と言い切るリュールに、セレネは怒りを覚えた。


「端的に申し上げれば、あの少年は次期当主としての器ではない……現に聖剣を継ぐことができず、騎士団はほぼ無くなりました。その上、アルトイリス家はその性質上、他家の援助に頼りきりであることが前提で存在している故、西帝国内でもよく思われておらず、外交的に孤立状態にあります。当家が長年親しい関係を持っていたことは事実ですが、国家間の関係は友情ではなく利益によって成り立つもの…………関係を清算するにはよい機会でしょう」

「だ、ダメよそんなの! 確かに今は頼りなく見えるかもしれないけど、リク君だっていつかきっと立派になるはず!」

「あら姫様。随分とあの少年に入れ込んでいるのですね……もしかして惚れていらっしゃるので?」

「そっ、そんなのじゃないわ!  私はただ……」


 リュールにからかわれたセレネは、思わず頬を赤く染める。

 正直なのはセレネの美徳ではあるが、隠し事が苦手なのはこういう時に難儀してしまう。


「とにかくっ! 葬儀の出席順番を私に何の相談もせずに決めるのは絶対に許さないわ! いくらリュールが取り仕切っているからと言っても、最終的な決定権は私にあるの。だからこれはじきミュレーズ侯爵としての命令、アルトイリス家を予定していた通りの序列に戻すこと!」

「…………なるほど、姫様の御気持ちはよくわかりました。では、姫様の仰る通り、明日にでも出席順番を調整し、アルトイリス家は2日目の招待といたしましょう」

「えっ」

「どうしました? 私は姫様のご命令通りに動くと申したまでです。そうと決まったからには、明日に向けてスケジュールの再調整をしなければなりません」

「う、うん……わかってくれてありがとう。明日からは私もなるべく葬儀の方にも関わるようにするから」

「いえ、姫様もお忙しい身でしょうから、ご無理はなさらないよう。それに、もし私が命令に反したと思われましたら、遠慮なく罰していただいても構いませんから」


 もっと揉めるかと思いきや、リュールはセレネのわがままとも思われる要求をあっさりと飲んだ。

 セレネは思わず拍子抜けし、どことなく釈然としない心地がしたが、ともあれ目的は完全に達成できたので、あとはいくつかの小さな確認事項について話してから、セレネはインテグラの館を後にした。

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