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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第5章 家族のような存在
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第95話 抗議行動

 リクレールがアルトイリス家の人材に奔走していた頃、親友のセレネはアルトイリス家の館から帰って来て早々、家臣団を集めて現状の確認を急いでいた。


「セレネ様! 遠征軍結成式典準備の最中に抜け出すとは、いったい何があったのですか!?」

「その話はあとできちんとするわ。それよりも、兄上の葬儀について確かめたいことがあるの。主催者としてずっと任せっぱなしにしていたのは悪かったけど、私に報告していないことが山ほどあるはずだわ」

「そ、それは…………」

「そもそも私が責任者に命じたのはシルブロンのはずなんだけど、今は誰が運営の統括をしているの?」

「恐れながらセレネ様、今の責任者は私ではございません……インテグラ様から、運営責任者をリュール様とすることを通達され、某はその指示に従ったまでで……」

「インテグラとリュールが!?」

「何しろ我が家も多忙ゆえ……」


 本来セレネが葬儀の用意を任せていたのは、先々代からミュレーズ家の家宰を務めている初老の男性伯爵シルブロンだったのだが、シルブロンの息子3人は先の魔族との戦いでセレネの兄バスチアンとともに戦死したため、自分の家の葬儀もしなければならなかったため、多忙を極めていた。

 その間に実権を握ったのが、セレネが最も信頼する家臣の一人にしてミュレーズ家の軍師インテグラと、彼女の親類にして最近台頭してきた女性貴族リュールだった。

 いくら信頼する家臣とはいえ、主君に断りもなく他家との関係をひっくり返そうとしていることに驚いたセレネは、その日はもう夜になっていたにも関わらずインテグラの館へと赴いたのだった。


「これはセレネ様、このような夜分遅くに私の館を訪ねていただくとは、いささか困惑しますとともに、聞くところによればセレネ様は宮廷にて遠征軍編成準備の真っただ中に、独断で職務を中断しただけでなく、その足で士官学校に赴きアルトイリス家とブレヴァン家の決闘を仲裁したとのこと、少々活動が自由闊達すぎることを私は危惧しており――――」

「今は貴女のお説教を聞いている場合じゃないわ。リュールに会いに来たの、いるわよね」

「伯母上は在宅ですが、本日の多忙な業務により休息が必要であると判断します。セレネ様にはまことに恐縮ですが、明日以降に……」

「いるのね、じゃあ通るわよ」


 普段は人に迷惑をかけたがらないセレネだが、今日は非常に強引で、流石のインテグラも困惑しっぱなしだった。

 すると、居間の方から、色白の肌に口元を紅いベールで覆ったミステリアスな雰囲気の女性がその場に姿を現した。


「姫様、お待ちしていました。セレネ様がこちらに足をお運びになられるということは、私の占いであらかじめわかっておりました。どうぞこちらに」

「リュール……まあいいわ、上がらせてもらうわね」


 そう言って、インテグラの伯母であるリュールは、すべてお見通しとでも言いたげな表情のままセレネを居間に招き入れた。

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