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第80話 決闘の話の時間だ!

「決闘の話の時間だ! コラァッ!!」

「「「は?」」」


 和気藹々とした雰囲気のところで、突如食堂の扉が乱暴に蹴破られた。

 扉を蹴破った男子生徒の後から、まるで敵基地に乗り込む騎士のような一糸乱れぬ動きで男女生徒がなだれ込んでくる。

 見れば、だれもかれもが制服の胸ポケットには堂々と白いドラゴンが描かれたワッペンをつけており、彼らが白竜学級の生徒たちであることがすぐに分かった。


「全員、横隊!」


 異変をすぐに察知したウルスラが、直ちに生徒たちを横三列に広く並べ、紫鴉学級の生徒たちを囲もうとした白竜学級の生徒たちをけん制した。

 食堂の中心を挟んであっという間に一列に対峙する二つの学級の生徒たち。

 すると、白竜学級の中から紫髪の男子生徒……アヴァリスが異様な雰囲気をまとって歩み出てきた。


「リクレール・アルトイリス、出てこい」

「僕に何の用だアヴァリス。せっかくの送別会に水を差すのはやめてもらおうか」

「貴様に決闘を申し込む」


 リクレールの制止も聞き入れず、アヴァリスは手にした剣を高々と掲げて言い放った。


「決闘だって?」


 あまりにも唐突なアヴァリスの行動に、紫鴉学級の生徒たち全員が「何言ってんだこいつ」と驚き半分困惑半分の視線を彼にぶつけたが、そんな周りの様子などお構いなしとばかりに、アヴァリスは話を続ける。


「貴様はこともあろうに校内で武器を抜き、反撃できないことをいいことに俺の名誉を踏みにじった。騎士として、ブレヴァン侯爵家の嫡子として、この屈辱は命に代えても晴らさなければならない」


 まるで吟遊詩人になったかのように仰々しくも高らかにそう告げるアヴァリスに対し、紫鴉学級から最初に反撃したのはやはりシャルンホルストだった。


「はっ、何を寝ぼけたことを言ってるんだナス男」

「……ナス男、だと」

「そもそも先に数の暴力で俺たちをリンチしようとしてきたのはお前らのほうだろ。お前んところの学級で正直に話したのかは知らねぇが、カッコつけたところでうちの仲間たちには、手品を披露しがてらお前の醜態について面白おかしく語ってやったところだ。自分で醜態をさらした挙句、恥知らずに決闘決闘と叫ぶお前の形容なんざナス男で上等だろ」

「貴様……」


 アヴァリスが武器を持つ手に、柄を握りつぶさんばかりの力が入るが、腐っても最上位学級の級長を務める男だけあって、すぐにシャルンホルストがわざと挑発して怒りの矛先をリクレールからそらそうとしていることに気が付き、冷静さを取り戻した。


「シャルンホルストが何と言おうとも、俺の目的はリクレールとの決闘だ。受け入れられない場合、白竜学級全員で紫鴉学級に裁きを加える。痛い目見たくなければ、俺たちの要求に従え」


 アヴァリスの無茶な要求に、次に割って入ったのは担任のウルスラだった。


「いい加減にしなさい、アヴァリス君。士官学校の教師として、生徒同士の勝手な決闘は認めないわ。あなたたちの担任にこのことを伝えるかどうかは私次第なのよ」

「それについては問題ない、われわれが許可した」

「…っ! デュカス先生! それに、ほかの先生方まで……こんなの噓でしょう、なぜなのですか!」


 なんと、白竜学級の担任であるデュカスやそのほかの学級を担当する教師数名が表れて、彼らが決闘を公認したことを告げた。

 士官学校ではその性質上どうしても血の気の多い人間や、自尊心が高い生徒が多く在籍するため、そのわだかまりを解決するために教師の許可があれば生徒同士の決闘が許される。

 ただし、学級が同じであればその学級の担任の一存で行えるが、違う学級同士となると、内容にもよるが基本的に双方の学級の教師が合意するか、規定以上の教師の合意があれば許可される仕組みになっている。

 どうやらアヴァリスは、持てる権力や財力をこんなことに使ってまでもリクレールとの決闘を望んでいるようだった。

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