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第78話 対になるもの

「えっと、つまりどういうことだってばよ」

「聖武具以外と言ったら魔剣のことにきまっているだろう」

「あっ」


 質問の意図がつかめなかったゼークトが、隣の席で挙手したモンセーに声をかけると、彼女はしれっとした顔で答えた。


「私は聖武具なんぞにはこれっぽっちも興味はなかったが、シャルンホルストから魔剣の話を聞いた時、ふと考えたのだ。魔剣の他にも同じような物……魔槍や魔斧の類も存在するのではないかとな」

「え……モンセー、お前そんなこと考えてたの?」

「聖武具のことを調べるなんてことは、ほかの誰でも思いつくことだ。同じことを調べていては詰まらんからな。リクレールも大方同じだろう」

「つまらないとは思わないけど……僕もモンセーと同じで、魔剣以外にも魔の武器があったりするのかなって思って、ちょっとだけ調べてみたんだ」

「あらあら、さすがにそこまでは調べていないんじゃないかって思っていたから先生も少し驚いたわ。調べた結果はどうだったのかしら?」

「何もなかった。私も図書館のすべての蔵書に目を通したわけではないが、聖武具について記録された書籍のどれにも、対となる魔剣のような武具の記録はなかったな」

「僕の方でも、侯爵家に仕えていた人たちにいろいろ聞いてみたし、蔵書も確認してみたけど、誰も何も知らないし、なんの記録もなかった。そもそも聖剣庫に立ち入れるのは一族の人間だけだから、聖剣を安置していた台座にもう一本剣が入っているなんて誰も気が付けなかったみたいだ」


 シャルンホルストが初陣を経て士官学校に帰った後、学級内では新しく聖剣の使い手となったセレネのことと、それに関する聖武具の話で持ちきりだったが、意外にも魔剣のことについて調べた者はほとんどいなかった。

 そして、魔剣だけでなくほかの魔の武具について調べたモンセーとリクレールも、何の進展も得られなかったようだ。


(エスペランサですら知らないんだから、分かるわけないよね)

『お力に慣れず申し訳ございません主様メーテル。わたくしの持つ知識にはそのような武具の存在はありませんでしたわ。けれども、わたくしと同様、どこかで封印されている可能性は無きにしも非ずですわ。まあ、わたくしがいる限りそのような物は不要ですが』

(エスペランサは仮定の存在にも嫉妬するんだ……)


 エスペランサですら魔武具の存在意を知らないと言っているが、仮にあったとしても独占欲の強いエスペランサとはそりが合わなそうだとリクレールは思うのだった。


「モンセーさんもリクレール君も調べてみてくれたみたいだけど、私も興味があって魔術学院の友人に調べてもらったの。けど、リクレール君が持っている魔剣を初めとした記録は一切ないそうなの」


 魔術学院というのは、士官学校と同じく帝都アルクロニスに存在する魔術を専門に学ぶ学問所である。

 士官学校よりは規模が小さいが、帝国の完了を多数輩出しており、蓄えた知識は士官学校に引けを取らない。(モンセーもかつては魔術学院に在籍しており、飛び級で入学して飛び級で卒業し、士官学校に入ってきたというのだからすごい話である)

 ウルスラも一時期は魔術学園に赴任していた時期もあり、その時で来た友人に魔剣について調べてみてもらっていたようだが、やはり結果は何もなかった。


「もしかしたら誰も使っているところを見たことがないか、単に記録が抜け落ちているだけとも考えられるけど、もしかすれば……」

「記録が抹消されている可能性がある……ってことですか先生」

「察しがいいわねシャルンホルスト君。もしかしたら、何か理由があってあえて記録が破棄されていることも考えられるの。リクレール君が持っている魔剣は、もしかして思っている以上にとんでもないものかもしれないわね」


 その危険さゆえに記録が抹消された可能性がある――ウルスラの言葉で、今までワクワクに満ちていた生徒たちの雰囲気が、一転して不安そうなものにかわった。


「とまあ、怪談まがいの話はここまでにするわね。きっとその魔剣もそんなに危ないものではないと思うわ」


 生徒たちの心胆を震え上がらせて満足したのか、ウルスラは魔剣のことについては「これから調べていけばいい」と話題に終止符を打ち、その後は再び聖武具の歴史と、歴史上の意義についての講義を行った。

 ウルスラの授業はリクレールにとっても改めてためになったが、やはり魔剣やそれ以外の武具について何もわかっていることがないことが、リクレールの中でもやもやとして残り続けた。

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