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第76話 最後の講義

「リクレール君、もう一度この教室に来てくれて本当にありがとう。家庭の事情とはいえ、顔も見ないまま卒業するかもしれないと思っていたから、先生もホッとしたわ」

「いえ、こちらこそ2年間お世話になりました。僕が侯爵家を継げたのも、先生の教えがあったからですし、もっと学んでいれば今よりいい統治ができたかもしれないと思うと僕も残念です…………先生、今日はここで最後の授業を受けさせてください」

「ええ、もちろんよ。シャルンホルスト君も、今まで級長としてみんなを纏めてくれて本当にありがとう。生徒に助けてもらってばかりで頼りない先生だったかもしれないけど……」

「そ、そんなことないですよ! むしろ俺なんかでよければ、退学後もいつでも頼ってください!」


 担任教師の女性ウルスラは、膝裏まで伸びる明るい緑色の長髪を後ろで結ったボリュームのあるポニーテールが特徴的で、いつも白い丈長のローブに白い長手袋、白いズボンと言った白一色の優雅な格好をしており、本人の性格が穏やかなことあってとても柔和な印象があった。

 年頃は20代半ばであり、全学級の教師陣の中でもかなり若い。それでいて、二番目に優秀な学級の担任を受け持って実際に成果を出しているように、才能も能力も非常に高く、東帝国としては教師にしておくのが惜しいほどの逸材である。

 士官学校の教師は男女ともにデュカスを初め年配のベテラン軍人が多く、揃って厳格で威厳に富んでいるが、ウルスラは珍しく優しく丁寧な授業をするため、学級に所属する生徒たちからは大いに好かれている。もっとも、いざ叱るときはとても怖いことでも有名だが。


 さて、久しぶりリクレールが戻って活気付く紫鴉学級では、二人の最後の授業ということでウルスラが特別な講義を行うことになった。


「リクレール君がアルトイリス侯爵家を継いで、その上で今まで知られていなかった魔剣を手に入れたと聞いたから、今日はそれを踏まえて帝国に伝わる三つの聖武具について話していくわね。三つの聖武具については皆さんどこまで知って――――」

「はいはーいあたし知ってます!」

「スーシェさん。先生の話は最後まで聞きなさいって何時も言っているでしょう」

「いっけない、またやっちゃった☆」


 ウルスラが言い終わる前にフライング挙手したスーシェは、自分の手で頭をぺちっと軽くたたいて誤魔化し、周囲の生徒たちからはどっと笑いが起こった。


「もう……やる気があるのはいい事なんだけど。せっかく手を挙げたから、聖武具三つ答えてごらんなさい」

「はいっ! すなわち『聖剣アレグリア』、『聖槍バリエント』、『聖斧サルバシオン』の三つですね! 魔族と戦うために初代皇帝が主神から賜ったもので、いずれも強大な魔力と神性を備えており、心正しき者が振るえば一騎当千の力を発揮すると言われています!」

「はい正解よ。さすがはスーシェさん、日ごろから戦史を研究しているだけはあるわね」

「えっへへ、これくらいは当然の知識ですよ! さらに言えば、聖剣アレグリアは西帝国のアルトイリス家が、聖槍バリエントは東帝国のミュレーズ家が、そして聖斧サルバシオンは西帝国のフリュグリム家が代々受け継いできたとされています!」

(まあ、その伝統は僕の代で絶えちゃったけどね)

『まあまあ主様メーテル、そのおかげでこうしてわたくしが主様メーテルと巡り会えたのですから、そのようなカビの生えた伝統などあの小娘に押し付けてしまえばよいのです。主様メーテルはわたくしとともに新たな伝説を築き上げるのですわ』


 最前列の席で授業を聞いている間にも、リクレールの隣からエスペランサの誇らしげな声が聞こえる。

 聖武具についての授業に、彼女も思うところがあるのか、リクレール以外には見えない姿で、彼のすぐ横で密着するように椅子に腰かけている。

 バレることはないとはいえ、大勢の生徒の前で誘惑するようにいちゃついてくるエスペランサに、リクレールは内心ドキドキしっぱなしだった。

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