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第72話 立場逆転

「アヴァリス、また僕の事いじめにきたのかい?」

「なんだ、いっちょ前に口を利くようになったじゃないかシスコン。それに趣味の悪い剣を背中にしょっちまって、脅しのつもり――――」


 アヴァリスがその減らず口で語り終わる前に、彼の言う「趣味の悪い剣」の切っ先が喉元ギリギリに突き付けられた。


「この剣が模造品に見える? なら、君の喉で試してみるといい。もしハズレだったら、出血多量で死んじゃうかもね」

「っ…………!?」


 アヴァリスの喉元ギリギリに迫った魔剣エスペランサからは、重厚さと金属特有の冷気が感じられ、模造品どころかそこらの武器とは比べ物にならない威圧感があった。

 自分が負けるとは微塵も思っていなかったアヴァリスは一転して苦しそうな表情を見せる。

 先程まで一緒になってリクレールたちを小ばかにしていた取り巻き達も、かつての運動神経皆無なリクレールから想像もつかない早業を見せつけられ、驚きで開いた口がふさがらなかった。


(な……なぜだ! なぜコイツにこんなことができる!? くっ、俺がここで折れたら後輩たちに示しが……しかし)


 白竜学級の中でも上位の実力者であるアヴァリスにとって、かつていじめた相手に屈するのはこの上ない屈辱であるだけでなく、仲間内での格付け低下にも繋がりかねない。

 しかし、喉元に迫る剣は明らかに本物であることに間違いなく、下手に動けばリクレールの言う通り命に係わる。

 命を懸けてでもプライドを守るか、生きるために屈するか究極の二択を迫られたアヴァリスは……


「ちっ……わ、わかった。今回は、見逃しておいてやる……」


 絞り出すような声でそう告げると、アヴァリスは両手を挙げて無抵抗の姿勢をとりながら後退あとずさった。


「初めからそうしていれば恥をかかずに済んだのに。ほら、君たちも邪魔だから道を開けて」


 リーダーが降参したのを見た取り巻き達に出来ることは何もなかった。

 恐怖と不満がごちゃ混ぜになった顔をしながらも、彼らは大人しく道を譲り、二人は緊張しながらも彼らの間を通り抜けたのだった。

 リクレールもシャルンホルストも最後まで油断せず、警戒しながら進んでいったが、リクレールはふと取り巻きの中でも後ろの方にいる男子生徒から、強烈に恨みがこもった視線で見られているのを感じた。


主様メーテル、あの者とはどこかで面識が? 何やら強烈な怨恨を感じますわ』

(いや……僕も知らない。でも、どこかで見たことあるような気はするんだけど……)


 その男子生徒は、体形は平均的で、青色の髪とどこか陰鬱とした顔をしているのだが、リクレールは何となくどこかで見覚えはあるものの、直接会った記憶はなかった。

 とはいえ、今更追及する気になれなかったリクレールは彼の存在に気が付かなかったふりをして、そのままシャルンホルストと校舎のほうに歩いていった。

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