第6話 一心同体
次期当主を継ぐことを宣言したリクレールは、その後もやらなければならないことをいくつか片付けると、ようやく自室へと戻り、ベッドに仰向けになった。
今まで姿を消していたエスペランサも、リクレールが一人きりになってようやく姿を現し、彼の隣にぴったりと寄り添った。
「あぁ、疲れた。ようやくゆっくりできる……」
『お疲れ様でございました主様』
家臣たちに一分でも弱いところを見せまいと常に気を張っていたせいか、この日は人生で一番疲れたような気がした。
だが、明日から毎日こんな生活が続くと思うと、リクレールは思わずげんなりしそうになった。
「恐怖で人を支配するって大変だ。まるでずっと喧嘩腰でいるような気分……こんなに疲れることを毎日しなきゃいけないなんて」
『主様、もうお忘れでございますか? 主様はお姉さまの仇を討ち、この国を守りたいと、そう願われました。生半可な覚悟では成し遂げられませんわ』
「そ、そうだ……!」
エスペランサの言葉に衝撃を受け、リクレールはむくりと上体を起こした。
「僕は強くならなくちゃいけない。これしき程度で弱音を吐いてたら、死んだ姉さんも浮かばれない!」
『はい、どうかそのことをお忘れなく。主様が覚悟をお持ちである限り、わたくしは力を尽くしますわ』
「ありがとう……肝に銘じるよ。……あ、そうだ、一つ聞こうと思っていたことがったんだけど」
『如何なされました?』
「今日も色々やっている最中にいくつか助言をくれたよね。なんだか、この城にいる人たちのことをまるで昔から知っているみたいに的確だったけど……やっぱり長い間あの部屋にしまわれてたから、分かるものなの?」
『ああ、そのことでしたか』
リクレールが気になったのが、エスペランサがまるでこの城の構造や人々のことをかなり熟知していたことだった。
そのおかげで、マリアの葬儀の準備は想像以上にスムーズに進んだので非常に助かったのだが。
『申し訳ありません、肝心なことをお伝えしていませんでしたわ。わたくしは主様と契約を交わすことで、主様が持っている記憶と知識をすべて共有することが可能となります。それゆえ、誠に勝手ながら、主様の記憶から今この国がどういった状況に置かれているか把握させていただきました』
「へぇ、それは凄い! ちなみに、僕以外の人の記憶も?」
『…………できなくはありませんが、主様以外の人間と口付けを交わすのは断固拒否いたしますわ』
「わ、わかったわかった! そこまでしなくていいから!」
エスペランサがすねるようにプイっとそっぽを向くと、リクレールは慌ててエスペランサに頭を下げた。
なんだかんだで可愛いところもある魔剣であった。