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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第59話 アルトイリス行商団

 さて、リクレールはなぜ大勢の行商団を連れて山越えをしようとしているのかと言えば、彼らに大量の「売り物」を運んでもらうためだった。

 リクレールは初め、アルトイリス家が所有する宝物などを東帝国で売却することで利益を得ようと思っていたが、実際それで得れる資金は思っているより少ないと予想された。

 そこでガムランにもっと利益の出る方法がないかを相談したところ、彼が提案してきたのが「行商人の真似事」であった。


「帝国が東西に分断したことで、物流もまた滞っております。今、東帝国では西帝国産の品物が高騰し続けており、行商人たちは傭兵に高い金を払って危険な山越えをするか、非常に時間のかかる北回り航路を経由するかの二択をとるほかありません。そこで、我らが東帝国に向かうついでに交易品を買いあさり、行商団を雇って運ばせるのです。彼らも信用ならない傭兵に高い金を払う必要もなく、一石二鳥と言えるでしょう」


 その場にいたリクレールとサミュエル、それに魔剣エスペランサまで、ガムランの案に大きく感心したものだった。

 リクレールは早速サミュエルなどにアルトイリス領周辺で産出する交易品の価格を調査させると同時に、ガムランに命じて信用できる行商人を集めさせた。

 現在西帝国では主に絹や木綿といった服の原料になるものや、藍や紅花といった染料が比較的低価格で購入できるほか、東帝国ではあまり産出しない質のいい陶磁器や粘土、それにどこからか発掘されるダイヤモンドの原石などを、軍資金の半分以上をつぎ込んで可能な限り調達したのだった。

 はっきり言って博打に近い暴挙であり、もし途中で積み荷を奪われたら侯爵家は滅亡待ったなしである。

 そのために今回の遠征でも、侯爵家で最も練度が高い直属兵を連れてきている上、ともに東帝国に向かうヴィクトワーレも先日の戦いで大活躍したベルリオーズ家騎士団を率いており、よっぽどの大軍か強力な魔族軍と出くわさない限りは積み荷を奪われる心配はないだろう。


 ただ、それでも大量の交易品を積載した行商団という存在はとても目立つ上、賊たちから見れば待ちに待ったごちそうにしか見えない。

 現に野営地の設営が進んでいる最中、エスペランサは遠くからこちらを伺う何かが存在することを感じ取った。


『主様、東北方向の高地に少数の人間がおりますわ。おそらく、いずこかの賊が我々の存在をかぎつけたものと思われます」

「そんなことよく分かるね。僕からは何も見えないけど」

『ですが、おそらくは今夜中に手を出してくることはないでしょう。むざむざ野営地に突っ込んでくるほど、彼らも馬鹿ではありませんわ』

「それでも、念のため警戒は怠らないでおこう」

『はい、万が一のことがあろうとも、わたくしがいる限り奇襲は通用しませんわ』


 勿論夜の間も見張りは立てるつもりだが、エスペランサがいることで見えない敵がどこから来ようとも発見してくれるのは非常に頼もしかった。

 そして、エスペランサの言う通り、相手もこちらのことを警戒しているのか、夜に野営地が襲撃されることはなかった。


キャラクターノート:No.023


【名前】カドマー

【性別】女性

【年齢】31

【肩書】ドワーフの行商人

【クラス】武装商人

【好きなもの】馬車の整備

【苦手なもの】なぞなぞ

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