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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第58話 東帝国へ

 ドミナシオン大陸をほぼ中央で東西に分断するアザンクール山脈とその周辺は、古来から交通の要衝であると同時に帝国の東西地方を分断する難所であった。

 特に大陸南部……地中海沿岸地域を魔族たちに奪われてから、人間国家は東西を移動するのにアザンクール山脈の山道を越えるか、もしくは北の海から船で大きく迂回することを強いられている。

 そのせいで東西の交流が難しくなり、かつては「統一帝国」と呼称された巨大国家は、アルトイリス侯爵領などがある「西帝国」と、リクレールが今から向かう帝都アルクロニスを中心とした「東帝国」に分裂するに至ったのである。


「この村もダメか……村人は一人もいない、あるのは白骨だけだ」

「この地方は来るたびに寂れていったけど、前の戦いは特に破滅的だったから……。もう、人が住める場所はほとんどないわね」

「幸いと言いますか、ミュレーズ騎士団が残党の掃討を行ったことで、魔族も、魔獣の群れも、人間の賊も、粗方退治されたのがせめてもの救いですな」


 リクレールとヴィクトワーレ、ガムランの3人は、度重なる戦乱で荒れ果てて無人となった廃村を見て回っていた。

 この廃村は、アザンクール山脈を越える街道の途中に位置する小さな宿場で、以前は交易路の中継地点としてそれなりに栄えていたのだが、度重なる盗賊団の襲撃や魔族軍との戦いで村人が大勢亡くなり、生き残った人々も難民となってどこかへ逃亡してしまったようだ。

 狭い谷間に張り付くように建てられた木造家屋の大半は、一部またはすべてが破壊されており、風雨を凌ぐにも難儀しそうだ。

 とはいえ、今の季節は秋も半ばをすぎた頃の午後……今はまだ明るいが、数時間もしないうちに暗くなってしまうだろう。

 リクレールは仲間や部下たちにこの廃村を利用して野営することにした。


「侯爵様、今日はここで野営するんだね?」

「ああ、急ぐ旅でもないし、今から野営しないとすぐに日が暮れてしまうだろうから、今日は無理に進まないことにしたよ」

「私もそうした方がいいと思います」


 リクレールが声をかけたのは、大きな馬車を何台も従えた隊商を率いている、リクレールより幼い外見の男の子と女の子だった。

 二人はともに褐色の肌にクリーム色の髪の毛で、クリっとした瞳が可愛さを引き立てている。

 そして、おそろいのターバンのようなふわっとした帽子をかぶり、モコモコの毛皮でできた服に身を包んでいた。

 実はこの二人、人間の子供ではなくドワーフという亜人種のれっきとした大人であり、幼い見た目に反して年齢はリクレールの二倍を超える人生のベテランである。

 また、彼らは瓜二つな外見からわかるように双子であり、兄のゼモルスと妹のカドマーは二人で商人団の代表を務めているのだという。


「それにしても、今回は荷運びを引き受けてくれてありがとう。おかげで軍資金の調達がはかどりそうだ」

「いえいえこちらこそ……まさか侯爵様の軍隊に護衛していただけるなんて、俺たちの方が運がよかったですよ」

「よろしければ今後とも御贔屓のほどを」


 そう言って双子のドワーフは揃ってぺこりと頭を下げたのだった。

キャラクターノート:No.022


【名前】ゼルモス

【性別】男性

【年齢】31

【肩書】ドワーフの商人

【クラス】武装商人

【好きなもの】計算すること

【苦手なもの】エルフ族

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