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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第56話 太っちょ貴族におまかせ

「実はガムランにとっておきの仕事を任せたいんだ」

「仕事でございますか……今リクレール様から仰せつかっている仕事で、わたくしめは手一杯なのですが」

「まあまあ、それは僕も分かっている。とりあえず仕事については後で調整するよ。それより、次の月の初めに僕はミュレーズ家の葬儀に参加するんだけど、そのついでに東帝国の帝都アルクロニスでいろいろとやっておきたいことがあるんだ。ガムランには遠征の用意と、僕に同行して現地での仕事に携わってほしいんだけど、だめかな?」

「某は領地から離れられぬゆえ、ガムラン殿が適任であることに疑う余地はない」

「な、なんと……! このガムランを旅のお供に……! なんという光栄っ、是非ともやらせていただきますぞ!!」


 遠征の同行者に選ばれたということは、それだけの重臣と認められた証に他ならない。

 ガムランは歓喜のあまり涙を流して震え上がった。


「で、では某は何をすればよろしいので? できることであれば、何でもご命令くだされ!!」


 激やせするほどの大量の仕事を押し付けて苦悩していたことなどすっかり忘れたのか、まるでご主人様の命令を待つ大型犬のように晴れ晴れとした表情を見せるガムランに、エスペランサが内心で『扱いやすくて助かりますわ』と称賛半分、呆れ半分でつぶやいた。


「ミュレーズ家のことに関しては僕とトワ姉が対応するだけで十分だと思う。ガムランにお願いしたいのは、人と金の調達だ」

「ほほう、そう来ましたか。それならば、商売経験のある某がうってつけですな!」

「サミュエルに今のアルトイリス家の財政状況について調べてもらったんだけど、僕が思っていたほどは悪くはなかったし、なんなら騎士たちがいなくなった分支出が減ったから、無駄遣いしなければ財政は好転していくはずだ。けど、僕が計画するアルトイリス家の富国強兵のためには、今のままだとお金が圧倒的に足りない。そこでまずは、侯爵家が持っている財宝を売り払って資金を作ろうと思うんだけど、どうかな」

「なるほど……それは思い切ったことをなさいますな。わたくしめは背に腹は代えられぬと考えますが、ほかの貴族たちからの反発は必死でしょうな」

「某も心情としては侯爵家代々の家宝を手放すというのは憚られるのですが……今は軍備を優先しなければ、文字通り宝の持ち腐れになりましょう」

「どうせ売るならできる限り高く売りたいよね」


 今のアルトイリス家は、リクレールが魔剣を持っていることで何とか最悪の事態には備えられているが、それでも軍備の弱体化が著しく、このままではまた魔族の大軍が攻めてきたときに対応できなくなる。

 そのためには一から軍を作るだけでなく、しばらくは傭兵を大勢雇わなければならないだろう。そうなれば、兵を雇用するためにかなりの大金が必要になるため、今のうちにまとまった金を調達しておきたい。

 また、この先人材を確保するうえでも、やはりそれなりの金が必要になるだろう。


「あとはみんなも分かっていると思うけれど、アルトイリス家は人員がかなり不足している。僕が当主になってからも人材探索をしているけど、なかなかいい人材が見つからないし、そもそも来るのを待つ時間も惜しい」

「その点、東帝国の首都であれば人口も多い分、人材も見つかりやすいだろうという思惑でございますな」

「果たして帝国の首都からこんな辺境に来てくれる人がどれだけいるかはわからないけどね」


 こうして、東帝国に行くための準備をすることが決まり、ガムランは早速仕事に取り掛かった。

 相変わらず彼は自分の利益になることがわかると、リクレール並みにハードワークをこなしてくれるので、リクレールとしても非常に扱いやすかった。


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