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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第55話 ミュレーズ家からの招待状

 アルトリス城に戻ってすぐ、リクレールは家宰のサミュエルの元へと向かった。

 セレネから手紙が届いていないかを確認するためだ。


「閣下、3日前にミュレーズ侯爵家から書状が届いております」

「ああ、やっぱりか! すまない、危うく重要な連絡を見逃すところだった」

「明日にもリクレール様の元にお送りしようと準備しておりましたが、そのご様子ではコンクレイユ侯爵様からお話があったようでございますな」


 主君がかなり長い間本拠地を離れ、別の町で仕事に没頭していたというのに、サミュエルはそれをとがめることなく淡々と報告をする。

 実際、まだマリアが当主だったころは彼女がよく戦場に駆り出されており、留守の間の領地の管理はサミュエルが代行していたので、彼にしてみれば主君が本拠地にいないのはいつものことであった。


「内容は葬儀への出席参加のご案内ですが、セレネ様個人からも閣下宛てに手紙が届いております」

「セレネから? なになに…………へぇ、セレネが来年頭に新しく組織される遠征軍の総指揮官になるんだ。すごいじゃないか」

「先の戦いで西帝国諸侯は壊滅的な被害を被りましたが、それは魔族軍も同じこと。体勢を立て直す前に、東帝国諸侯で反撃に打って出るようですな」

「東帝国の皇帝陛下の判断が早くてよかった。これで少なくとも姉さんの死は無駄にならないし、セレネに譲った聖剣もさっそく役に立つね」


 親友が人類の希望となったことを素直にうれしく思ったリクレールだったが、同時に大きな懸念事項が出てきた。


「アルトイリス家次期当主として、かつて姉さんが婚約していたミュレーズ家の葬儀に出ないわけにはいかないけど、そうなると東帝国帝都アルクロニスまで行かなきゃならない。片道だけでも20日はかかるだろうから……年の瀬までに戻ってこれるかどうかって感じかな。それ以外にもと東帝国に行ったついでにしておきたいことはたくさんあるし、可能であればサミュエルに同行してもらうのが望ましいんだろうけど」

「それは流石に領国経営に支障が出るかと……」

「やっぱりそうだよね。たぶんトワ姉も一緒に出席するだろうから、ある程度はお願いできるけど、ほかの家に準備を頼りっぱなしは流石に体面が悪い。そうなると適任はあの人しかいないか」


 リクレールの頭に浮かんだ最有力候補は、太っちょ貴族のガムランだった。

 当主になってから家臣たちに様々な仕事を割り振ってきたリクレールだが、その過程で大体だれがどの程度使えるのかある程度見え始めてきた。

 その中で、サミュエルに次いで内政面で役に立つと判断したのがガムランだ。

 正直なところ、性格も見た目も佞臣にしか見えないし、おそらくある程度は隠れて私腹を肥やしているだろうが、商人の家系だからか実務能力はなかなか高い。

 というより、アルトイリス家の貴族たちはどれも武の家系ゆえか、驚くほど実務能力に欠ける者ばかりなので、リクレールもだいぶ困っているくらいだ。

 そんなわけで、リクレールは直ちにガムランを呼び出した。


「およびですかなリクレール様っ!」

「やあガムラン、忙しいところ悪いね。…………なんか、ちょっと、というか結構痩せた?」

「だ、誰のせいだと…………いえ何でもありませんぞ!」


 呼び出しに応じて執務室に入ってきたガムランだったが、しばらく見ないうちにリクレールが一目で見てわかるくらい、肥満体がスリムになっていた。

 まだ太っちょを脱したとはいいがたいが、リクレールから大量に仕事を押し付けられたことで運動量が増え、結果的にダイエットにつながったようだ。

 ガムランは先日のサバチエ伯爵家反乱が終結した際、見返りとしてサバチエ伯爵家が保有していた領地の半分をねだったところ、リクレールからは「それだけ広大な土地を持つ貴族に見合う働きを今後もすると誓うなら」という条件で本当に旧サバチエ伯爵領半分をもらってしまった。

 ガムランの所領はサバチエ伯爵家と隣接しており、ラクロとお互いに目の上のタンコブ状態だったので、それが消えたばかりか領土の半分をもらえることになったことで喜んでリクレールに今まで以上に働き忠誠を尽くすことを誓ったのだ。

 その有能さゆえに酷使されまくるとも知らずに…………


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