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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第53話 足りないもの

 さて、リクレールは幼いころから体が弱いことを自覚していたので、自分は戦場で姉を支えることができないと痛感していた。

 そこで彼は武で役に立てないなら、せめて智や政で少しでもサポートできないかと考えた末、アルトイリス領を豊かにして、マリアが心置きなく戦場に出れるよう支えることを決めた。


 アルトイリス侯爵家やコンクレイユ侯爵家は強力な軍事力を持っていたが、その反面領地は山がちだったり、荒れ地や痩せた土地が多く、自力では軍隊を養えないため、物資の調達はほかの国や本国に頼り切りの状態が続いていた。

 そのためにリクレールは士官学校に入った後は授業の合間に書庫の本を読み漁り、長期休みや実践学習の期間でこのアンクール周辺の土地や、コンクレイユ侯爵領の一部を借りて、学んだことが実際に役に立つことを証明したのだった。

 書庫で学んだ知識や、わざわざ士官学校の紹介で専門家を呼び寄せてまで農地開発を行ったおかげで、交易の中継点でしかなかったアンクールはここ数年でかなり豊かになり、人口も増加した。

 コンクレイユ家も今まで何の役にも立たなかった荒れ地が農地に変わったことで、国力は今もなお増加している。

 武闘派が多いアルトイリス家ではリクレールの手腕はあまり認められなかったが、リクレール当主になったからには今まで出来なかった領内丸ごと再開発に着手できるようになったので、リクレールは家臣たちを総動員して内政に当たらせていたのだった。

 もっとも、そのせいで家臣たち……特にサミュエルやガムランは今までにない量の業務を裁かねばならず、リクレールも本城に帰る時間が惜しいほどの多忙な日々を送る羽目になったのだが…………


「そうか、人が足りないか。やはりラクロをはじめとした貴族を粛正したのはやりすぎではなかったか……」

「いえ、いいんです。今必要なのは、アルトイリス家のために働ける人であって、誰でもいいわけではないんです。むしろ、あいつらの存在は侯爵家にとっての足枷でしかないので」

「ううむ、そう言われると返す言葉がないな。しかしまさかそなたからそのような言葉を聞く日が来るとはな」


 一方でベルリオーズが、リクレールが戦場に赴いたことと並んで信じられなかったのが、アルトイリス家の不平貴族を躊躇なく粛清したことだった。


(サミュエルか、もしくはガムランあたりが、政争でラクロ一派を一掃したのではと思ったが……どうやら、この子は本気だ。事情があるとはいえ、この歳で家臣の粛清をするとは、少々先行きが恐ろしいな)


 コンクレイユ家は比較的結束が固く、ベルリオーズ自身も身内を非常に大事にする人格者なだけに、家臣を粛正したり領土を没収するやり方はあまり好ましく思えなかったが、とりあえず家臣がリクレールを利用したのではなかったのが不幸中の幸いであった。

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