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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第52話 コンクレイユ侯爵

「リクレール様、お食事の最中で恐縮ですがご来客が…………あら、本日のお食事はお気に召しませんでしたか? お望みでしたら作り直し致しますが」

「え? そんなことはないし、今食べ終わったばっかりだ」

「そうでしたか。どことなく不機嫌そうなご様子でしたので」

「あ、いや、たぶん気のせいだよ、あはは!」

(頭の中で言い合いしてたら、顔に出ちゃってたか……気を付けないと)

『申し訳ございません、わたくしが出しゃばったばかりに』


 リクレールは表情を整えるために、いったんふうと深呼吸し、残った昼食をある程度平らげてから来客と会うことにした。

 そして、来客というのはリクレールもよく知る人物だった。


「久しいなリクレール、今は忙しいかね?」

「ベルリオーズさん!」


 リクレールに会いに来たのは、ヴィクトワーレの父ベルリオーズ……現コンクレイユ侯爵当主その人である。

 年齢は50代後半で、ヴィクトワーレと同じ金色の髪はその半数が白髪となっているが、この歳になるまで戦い続けてきた風格が表情から滲む偉丈夫であった。


「ワシも用があってたまたまノールドの町に来たが、リクレールも近くに来ていると聞いたものだから、ついで顔でも見ようと思ってな」

「姉の葬儀ではお世話になりました……ベルリオーズさんを初めコンクレイユ家が後ろ盾になってくださったおかげで、僕も何とか当主としてマリア姉さんの後を継ぐことができました」

「ああ、ヴィクトワーレからはいろいろと聞いている。あの後も随分無茶をしたそうではないか。正直なところ、お前さんが戦場に立つだけでなく、あまつさえ魔族軍を次々に斬ったと聞いた時には耳を疑ったものだが…………顔つきが変わったな、戦場を経験した男は顔で分かる。ヴィクトワーレや騎士団の子たちが言っていたのは嘘ではなかったのだな」

「はい、僕は聖剣を受け継ぐことはできませんでしたが、今はこのエスペランサに力を借りています。まだ少し振り回されている感じがあるのは否めませんが、いずれはこの剣の使い手にふさわしい存在になりたいです」

主様メーテルは謙虚でございますね。わたくしとしては、主様メーテルはすでにわたくしを振るうにふさわしい方ですわ』


 主が褒められるのはエスペランサも嬉しいのか、彼女の声もどことなく誇らし気に聞こえた。

 ともあれ、立ち話をするというのもなんなので、リクレールはメルティナに確認して談話室を借り、話の場を移すことにした。

 ベルリオーズは侯爵家当主であるだけでなく熟練の戦士でもあるが、経験が豊富すぎるのか、話を一度始めるとかなり長時間喋りっぱなしになるので、最低限それなりに座り心地がいい椅子が必要だ。


「それにしても、先程は顔つきが変わったとは言ったが、やはり疲れもあるようだな。ワシが言えたことではないが、十分に休んでいるのか? マリアの葬儀に顔を出したときもやや憔悴していたが、そのころより明らかに細くなったぞ」

「やっぱりわかりますか……お恥ずかしい。僕もきちんと休むように心がけているんですが、やはり当主となったからには早く手を付けなきゃって思うことがおおくて」

「やれやれ、当主になってからもその性格は変わらんな。そなたの頑張りのおかげで、このあたり一帯や我が領はかなり生産力が増大したのだから、ワシもあまり止めることはできんが……そなたまで倒れてしまったらいよいよアルトイリス家は途絶えてしまう。当主になったのじゃから、自分ではなく家臣を動かすのが要じゃぞ」

(それについては言われなくても分かってはいるんだけど……サミュエルもアンナも、僕のせいで手いっぱいだからなぁ)


 ベルリオーズの言葉にもっともだと頷くリクレールだったが、それが可能かと言えばまた別問題なのだった。


キャラクターノート:No.021


【名前】ベルリオーズ・コンクレイユ

【性別】男性

【年齢】56

【肩書】コンクレイユ侯爵 侯爵家当主

【クラス】セイバー

【好きなもの】剣術 長話

【苦手なもの】頼みを断ること

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