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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第3章 ミュレーズ家からの招待状
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第50話 アンクールの町

 アルトイリス侯爵領最北端の町、アンクール。

 コンクレイユ侯爵領との国境になっている大河……ミッドルタ川の南岸に位置する比較的大きな町で、川の北岸にはコンクレイユ侯爵領側の町ノールドとは、大きな中州を挟んで架けられた橋で行き来できる交通の要所である。

 アンクールの町の中でひときわ目立つのが、川沿いの高台の上に位置する、まるでワインボトルを並べたような複数の尖塔を持つ小さな館で、ここには代々アンクールを治める町長が住んでいる。

 だが、ここ数週は別の住人が住み着きつつあった。


「あらリクレール様、帰ってきてすぐにお仕事ですか。たまには少しお休みした方がよろしいのではないでしょうか」

「メルティナさん……じゃなくて、メルティナか。御覧の通り、やらなきゃいけないことが山積みだからね、これが片付いたらアルトイリス城に戻るよ」


 アンクールの町長をしている妙齢の女性メルヴィナは、館の一室を借りて書類の山と格闘するリクレールを見て、笑顔ながらも心配そうに声をかけてきた。

 リクレールが本来の居城であるアルトイリス城ではなく、アンクールの町に滞在しているのにはいくつか理由があるが、やはりこの町がアルトイリス侯爵領の交通の要衝を担っているため、東西に広い領内を動き回るには、本拠地アルトイリス城ではなくこの街を起点にした方が便利という事情がある。

 今まであまり国政に携われなかったリクレールは、まず1から自分のものとなった領地を見て回り、実際に何が問題になっているかを把握することに努めたが、そのためには時間がいくらあっても足りないので、時間の節約のために一時的にこの街を政務の拠点としていた。


 もう一つの理由というのが、単純にリクレール自身がアルトイリス城よりもアンクールの館のほうを実家のように思っているからだった。

 本拠地アルトイリス城は侯爵家にとって重要な軍事拠点であり、大貴族が住む場所というより軍事要塞の色が強いので、地理的にやや不便な場所に存在する。

 その上、まだ姉のマリアが当主だった時代は、兵士や騎士が大勢詰めていたせいで慢性的に居住空間が不足しており、後継者とみなされていなかったリクレールを城の中に住まわせている余裕はなかった。

 そのためリクレールはほかの場所に住まざるを得ず、それを受け入れて住む場所を用意してくれたのがメルティナだった。

 姉のマリアは時間さえあればリクレールに会いに来てくれたが、サミュエル以外のアルトイリス家家臣とはあまり交流を持たなかったので、先日のように家臣団の対立を招いてしまったわけだが…………それを差し引いても、リクレールにとっては住みにくいアルトイリス城より、アンクールの町のほうが「我が家」と感じているようだ。


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