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第42話 不平貴族討伐戦 5

 そのころ、ラクロも何やら外が急に騒がしくなったことに気が付いて、急ぎ館の外に出たところで、守備兵から敵襲の報告を受けた。


「いったい何が起こっている!?」

「閣下、アルトイリス侯爵軍の総攻撃です! ものすごい数の兵がわが城を取り囲んでおります!」

「ものすごい数だと? バカも休み休み言え、そのような大軍をあの小僧が用意できるはずがないし、他家の援軍が来たという情報はない! 何かの見間違いではないのか?」

「……っ、閣下! こちらへ!」


 敵の様子を見ようとラクロが城壁の方に向おうとしたが、そこにちょうどアンナの部隊が放った火矢があちらこちらに打ち込まれたことで、彼直属の守備兵が慌てて安全な場所へ避難させる。

 そして、ようやく安全かつ城の外の様子が見えるところに行くと、確かにものすごい数の松明がじわじわと城を包囲しようとしているのが見えた。

 ラクロ自身、それなりに知識はあるが、実戦経験自体乏しいため、無数の松明が数を多く見せるだけの偽装だとは見抜けず、見るもおぞましい敵の数に暫く唖然としてしまった。


「くっ……あの小僧、いったいどこからこれだけの兵を!? と、とにかくだ! 城門を重点的に守れ! なんとしてでも援軍が来るまで耐えるのだ!」


 増援が来ないことなど知る由もないラクロは、兵士たちに命じて東と南に位置する城門に戦力を集中するよう命じた。

 だが、そのころ東門では別の事態が発生していた。


「サバチエ城の兵士たち、よく聞け! 僕こそがアルトイリス侯爵家の新たな当主となったリクレールだ!」

「あ、あれが新しいアルトイリス家の侯爵様……」

「まだ子供だって話は本当だったんだ……けど、あの手に持っている大きな剣は……?」

「周りにいるのはコンクレイユ侯爵騎士団だ! あんなのと戦うとなれば、俺たちじゃひとたまりもないぞ」


 ヴィクトワーレの騎士団が持つ松明の灯りに照らされながら、リクレールが城門を守る兵士たちによく見える場所に堂々と立っていた。

 城兵が矢を射かけてくれば命中する距離なので、リクレールの左右にはすぐ守れるようにヴィクトワーレ配下の騎士……マティルダとベルサが控えている。


「見ての通り、君たちの城は完全に包囲されている。この数で攻め入れば、君たちは一晩で……皆殺しに出来る。けれども、もし今すぐに城門を開いて降伏すれば、君たちの命は助けてあげよう。それに…………」


 リクレールは懐からいくつか金貨が入った袋を取り出した。


「一番早く城門を開いた人と、領主のラクロを生け捕った人にはご褒美を上げようじゃないか。さあ、もう一度問おう、降伏するか……反乱軍として城を枕に討ち死にするか、選ぶといい」


 リクレールが言い終わらないうちに、すぐに城内で変化が起きた。


「降伏だ! 俺は降伏するぞ!」

「門を開けたら褒美貰えるらしい! 早い者勝ちだそうだ! 俺が先にもらう!」

「お、お前ら! あんな子供の言うことを聞くな、持ち場に戻……ぐわっ!?」


 恐怖と混乱で完全に戦意を失っていた傭兵たちは、命惜しさと報奨金目当てに速攻で持ち場を放棄し、あまつさえ止めようとする正規兵を問答無用で殺害した。

 そして、彼らは先を争って東門に殺到し、閂を上げて城門を開いたのだった。


「リク、城門が開いたわ。彼らはお金に目がくらんだようね……」

「僕もまさかここまでうまくいくとは思わなかった……。でも、おかげでこっちの被害はほとんど出さずに済むし、何より相手の兵の一部はこの地方の領民だ、殺してしまったらその分生産力が落ちてしまう。それはともかく、降伏してきた兵を武装解除させよう。反乱の首謀者……ラクロの身柄も早く確保しないと」


 こうして、リクレールの……もといエスペランサが企んだ通り、籠城側の傭兵が命惜しさに反乱軍から寝返り、自ら城門を開いて続々と降伏したのだった。


キャラクターノート:No.018 ラクロ


【名前】ラクロ・サバチエ

【性別】男性

【年齢】47

【肩書】サバチエ伯爵

【クラス】ソルジャー

【好きなもの】領地開発

【苦手なもの】硬い食べ物

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