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第35話 帰路

 モントレアル城で一晩休んだアルトイリス軍は、翌日城を出発してアルトイリス領への帰途についた。

 連戦続きで疲労していた兵士たちも、大半は休養を取ったことで体力や気力を回復しており、仮に今日中にもう一度戦うくらいだったら十分可能だろう。


「いやー、魔族と戦うと聞いた時は生きた心地がしなかったけれど、なんだかんだでほとんどみんな生きて帰れたな。よかったよかった」

「しかもリクレール様は帰ったら私たちにご褒美をくれるんだって! どれくらいもらえるか、今から楽しみ!」

「帰ったら仲間たちに僕たちやリクレール様の武勇伝をたくさん聞かせてあげようよ!」


 もうすでに戦いは終わったものと思っている兵士たちは、のんきにおしゃべりしながら歩いていた。

 するとそこに当のリクレールがやってきて、おしゃべりをしている兵士たちをとがめた。


「そこ、行軍中は私語を慎むように。領地に帰るまでが戦いだ、昨日油断した魔族軍がどんな目に遭ったか忘れたとは言わせないから」

「ご、ごめんなさいリクレール様っ!」


 敵がいないだろうと思い込んで奇襲を食らって全滅させられた魔族軍の姿を思い出した兵士たちは、すぐに私語をやめて列を乱さないようきちんと行軍するようになった。

 ただ、リクレールも兵士全員の様子をいちいち見るわけにはいかないので、兵士たちに蔓延している気のゆるみを完全に解消することはできなかった。


(うーん……魔族軍もそうだったけど、僕たちも明らかに兵士たちを束ねる隊長級の人材が足りていないな。昨日は勢いで何とかなったけど、毎回こんな戦い方ができるわけじゃないからね)

『わたくしもそう考えます。しかし、こればかりは一朝一夕で解決できるものではありませんわ』


 昨日の戦いで圧倒的兵力を誇った魔族軍があっさり負けたのも、兵士たちを統率する隊長クラスの人員が兵力に比してかなり少なかったことが原因の一つだ。

 そしてそれはアルトイリス軍にも言えることであり、本来はアルトイリス家に仕える貴族が担う役割なのだが……


(今からそれをさらに減らすことになる)


 そんなことを考えながらも、アルトイリス軍は特に新たな敵と戦うことなく無事に本拠地アルトイリス城に到着した。

 城に到着するとすぐに留守を任されていたアンナが遠征軍を出迎えてくれた。


「リクレール様、ご無事で何よりです。そして、何倍もの魔族軍を僅かな損害で壊滅させたことも伝令から聞き及んでいます。リクレール様にかのような軍才があったこと、私としてもとても誇り高いです」

「ありがとうアンナ。しっかりと留守を守ってくれて」

「その件についてなのですが、リクレール様にお耳に入れたいことがあります。可能な限りお人払いをいただけますか?」

「……わかった、サミュエルとトワ姉、シャルだけ一緒に話を聞かせたいけどいいかな」

「本当なら他国の方にこそ聞かせたくないのですが、ヴィクトワーレ様とシャルンホルスト様であれば……」


 アンナは何やらリクレールに密かに報告したいことがあるようだが、リクレールにはすでにある程度内容の予想はついていた。

 ひとまずリクレールはサミュエルに命じて執務室の人払いを命じると、ヴィクトワーレとシャルンホルストだけを部屋に招き入れた。


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