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第32話 モントレアル領の戦い 11

「忌々しい魔族軍ども、よくも我らの領土を好き勝手荒らしてくれたな! この恨み、2倍……いや、10倍返しで食らわせてやろう!!」


 そう、今まで城に籠っていたモントレアル侯爵軍が、この好機を逃すまいと城から打って出てきたのだ。

 これによって魔族軍は四方から包囲される形となった。


「あいつら、どさくさに紛れて美味しいところを持っていきやがって。でもまあ、あんだけ自分の領土を荒らされれば仕方ないか」


 結果的にモントレアル軍は苦労を全部アルトイリス軍に担わせ、最後の混戦で手柄だけ取っていく形になったことにシャルンホルストは思わずぼやいたが、モントレアル領の人々からしてみれば今まで散々やられてやり返さないという選択肢はないのだ。


「よくも俺たちの家を! 畑を!」

「仲間の仇! 仲間の仇だ!」

「この時をどれほど待ち望んだことかぁぁっ!!」


 実際、モントレアル軍の騎士や兵士たちは凄まじい形相で、今までの恨みを爆発させるかのように剣や槍と言った武器を、魔族軍相手にがむしゃらに浴びせかけた。

 その様子は、すぐ近くで戦っていたアルトイリス軍の兵が見て思わず「これじゃどっちが魔族かわからん」と口にするほどだったという。

 対する魔族軍も、退路が完全に断たれたことで却って一部の兵士はここが死に場所と覚悟し、死兵になって奮闘する者もあらわれたが、勢いに乗るアルトイリス軍と恨み骨髄のモントレアル軍を留めることはできず、抵抗むなしく打倒されていった。


「ギェッ、ギッ!」

「ぎゃうっ!」


 ある者は後ろから槍で突き刺され。


「がはっ……あ、ああ……」

「く、くそぉ……こんな奴らに……」


 ある者は馬蹄にかけられ。


「うぐあっ! あがっ……!」

「おごっ……た、助け……」


 もはや一方的な虐殺と言ってよい光景を目の当たりにしたリクレールは、再び気分が悪くなり思わず目を背けたくなったが、ここで自分が逃げるわけにはいかないと歯を食いしばり、目に見える敵が最後の一兵まで動かなくなるまで戦場を駆け抜けた。

 こうして、モントレアル領を荒らしまわった魔族軍残党およそ4000人は、運良く戦場から逃げ出して離脱することができた数人を除いて全滅したのだった。


「勝った……か」

「はい、リクレール様。わが軍の完勝でございます」


 長かったようなあっという間だったような、不思議な感覚だった。

 あまりにもいろいろありすぎて、リクレールは自分の初陣を勝利で飾れたことが現実かどうかあやふやだったが、サミュエルが力強く肯定してくれたことで、これが夢ではなく現実であることを確信した。


「リク、無事でよかったわ! あんな巨大な魔族を倒すだなんて、もう私とも遜色のない強さ……魔剣ってすごいのね」

「なんだかんだで俺も戦場に出るのは久しぶりだったし、そもそも兵を指揮するなんて初めてだったが、まぁうまくいってよかった。士官学校で学んだことは無駄じゃなかったな」


 仲間たちも続々と駆け付け、勝利とお互いの活躍を労った。

 そして、命がけの戦場で必死に戦って生き延びた兵士たちも、自分たちで勝ち取った勝利に大いに沸きあがった。


「やった、やったぞ! 俺たちアルトイリス軍が勝ったんだ!」

「ああ、あの魔族軍相手に完勝だ! 俺たちだってやれるんだ!」

「誰だよリクレール様が弱いとか言ってた奴、滅茶苦茶強かったし、指揮も完璧だったじゃないか!」


 兵士たちは無邪気に喜んでいるが、リクレールはまだやることがある。

 まずは被害の確認からだ。


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