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第315話 シマンドル川の虐殺 1

 敵が目論見通りに動くか不安に思いながらも、アルトイリス軍は街道をひたすら西進し続けたが、そんな彼らの元に斥候からようやく「フォントラル侯爵軍が出撃した」という一報が届いた。


「リク、とうとうフォントラル侯爵軍が、我慢できずに城から出て来たみたい。これで私たちの望み通り、攻城戦を避けて野戦で決着を付けられるわ!」

「うん……正直なところ、僕もホッとしてるよ。けど、ここら辺はフォントラル侯爵にとって自分の庭も同然だから、なるべく有利な地形で攻撃しようとしてくるはずだ。僕たちはあえてそこで待ち伏せて、出来れば相手の態勢が整わないうちに反撃したい」

「で、その決戦の場になるのが、この先のシマンドル川になるのね。……なるほど、ここは川の部分が緩やかな谷になっているから、橋を渡っている最中に背後から攻撃されるとかなり危険だわ」


 ヴィクトワーレは馬上で地図を開きながら、戦場となるであろう場所について確認していた。

 この先半日ほど進んだ地を南北に流れる「シマンドル川」は、流れがやや激しく、雨期になると増水するため、長年の浸食により地形を削って緩やかな谷間を形成している。

 そのせいで、川にかかる橋を渡っているときに背後から攻撃されると、河辺から脱することが難しくなり、陣形を整えるのにも非常に時間がかかってしまうだろう。

 なので、フォントラル侯爵側としてはなんとしてもこの場所で襲い掛かりたいだろうし、アルトイリス軍側は普通に考えればここで戦闘になるのは避けたいところだ。


「けど、それはあくまで『背後から攻撃されたら』の話だ。きちんと待ち構えていれば、十分対処できる」

「だけど、それでも坂の上から攻撃してくる敵を坂の下で待ち受けるのは不利じゃないかしら?」

「勿論普通なら不利だけど、それについてもきちんと対策があるんだ。これはサンシールから教えてもらったことなんだけど――――」


 リクレールとヴィクトワーレがこの後の戦いについて話していくうちに、アルトイリス軍はシマンドル川にほど近い村に到着し、一旦そこで野営する。

 斥候の報告では、フォントラル侯爵軍は城から出撃後、強行軍でこちらに向かっており、さらに自分たちとは異なる方向に向かって行ったとのことから、どうやら地元民しか知らない抜け道を進んできていると思われた。

 それがどこを通っているのかは、流石のリクレールにも分らなかったが、彼らの目的がシマンドル川での接敵と考えれば、明日早々には敵は自分たちの背後に現れると推測される。


「まず中央は僕とトワ姉の部隊が受け持つ。左翼にはサミュエルとジェニファーの部隊、右翼にはデルセルトとフルトヴェングラー、それにナナリーの部隊をそれぞれ展開する」

「万全の状態で待ち構えるわけですね。そうなると、敵は容易には攻撃してこなくなるのでは……?」

「んなこたぁないだろうよ。ケツに火がついてるのは奴らの方だ、罠だとわかっても、ちんたらしてる暇はないだろうぜ」

「彼らは高所側にいる自分たちが有利だと思うであろうな。それこそが思う壺だとは知らずに」


 村の野営地で作戦の最終確認をするリクレールと、付き従う将軍たち。

 数日前は不安でいっぱいだった彼らだったが、敵が出撃捨て来たという報告を受けてからは、不思議と気分が落ち着きはじめており、戦闘計画が現実味を帯びるにつれ、むしろやる気が高まってくるのを感じた。

 これはやはり、ここまでの敵の動きがリクレールが予想した通りになっていることが大きいのだろう。


「そして、マティルダとベルサ、そしてアリシアは、村人たちから教えてもらった上流と下流の浅瀬から迂回して、敵の背後に回り込む。これで敵は坂道に閉じ込められたまま包囲されることになるだろう」

「はい、このマティルダにお任せください! 敵を完膚なきまでに叩きのめしてやりますよ!」

「焦らないの、マティルダ。敵将を逃さないよう、努めなくては」

「うひゃぁ……あたしがこんな大役を任されていいんですかね! ですが、任されたからには敵将をひっとらえてきますから、期待しててくださいね!」

「あはは、もちろん無理はしないようにね」


 こうして、アルトイリス軍は万全の状態でフォントラル侯爵軍を待ち受けることとなる。

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