表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
306/316

第306話 フォントラル侯爵家

 アルイリス侯爵領からブレヴァン侯爵領に向かう経路の途中には、帝国直属の中小貴族の領地が存在するが、その中でもひときわ広大な領地を持つのが、領内に広大な森林地帯を持つフォントラル侯爵家である。


 現侯爵家の当主ビゼー・フォントラルは立派な顎ひげを蓄えた貫禄のある男で、それなりに高い野心と、それなり巧みな領地経営手腕、そして、それなりの軍事的才能を持っている。

 フォントラル侯爵の最大の功績と言えば、オルセリオ協約で帝国貴族同士の私闘が禁じられる直前に、モントレアル侯爵と所有を争っていた鉄鉱山のある土地を奪ったことで、そこから産出される鉄からできた工具で、大量の木材を生産することで、かなりの財を築くことに成功したやり手であった。

 しかし……そんな比較的優秀な侯爵と言えるビゼーは、とある厄介な問題を抱えていた。


「ビゼー様、あなたはいつになったらアルトイリス侯爵家を攻撃されるのですか? 我が主からは、一刻も早くアルトイリス侯爵家に攻撃を加え、これ以上敵の敵の増援を阻止せよ何度も催促されおります」

「し、しかしですな……バラドワイズ殿、我らは南のモントレアル侯爵の対応にも兵を向かわせておりますゆえ、アルトイリス侯爵家を攻撃するのはいささか兵力不足と言わざるを得ません。せめて、彼らが領地を空けてからでなければ……」

「それでは遅すぎます。いかに重要と言えど、鉱山が獲られても後で取り返せばよいのですから、今は兵力を集中させ、アルトイリスを攻撃すべきです。これ以上計画が遅れるのであれば、皇帝陛下もさぞかし失望されることでしょうし、お望みの土地は手に入らなくなりますわ」

「だ、だから、某はそこまでしてあのような痩せた土地が欲しいわけではない! 周囲の中小貴族の領地が我が支配下にはいりさえすれば、それで十分なのだ!」


 フォントラル侯爵家の首都プラージュ城の玉座の間では、フォントラル侯爵ビゼーが、紺色のローブで全身を覆い、フードを目深に被った女性――――バラドワイズから強い口調で詰問されていた。

 というのも、ビゼーはブレヴァン侯爵トライゾンとの密約で、今回の内戦でアルトイリス家を直接攻撃して、彼らの援軍を阻止できれば、周期の中小貴族の領地と、アルトイリス侯爵領の半分、そしてモントレアル侯爵領全部を与えるという破格の好待遇を約束されており、その上、攻撃のための兵力まで貸してもらうことができた。

 今ビゼーの手元には約5000人の兵力があり、さらにはリクレールの粛清を辛くも逃れた一部のアルトイリス家の貴族が亡命してきたことで、将軍も一応必要な数揃ってはいたのだが…………いざアルトイリス侯爵領を攻めようかという段階で、南からモントレアル侯爵軍が侯爵家の至宝と言ってもよい鉄鉱山をかすめ取ろうとする動きを見せているため、それを阻止するために2000人近い兵力を国境の守備に回さざるを得なくなった。


 そうしているうちに、アルトイリス軍が自分たちより多い兵力を用意し始めている上に、各地でマルセラン側の軍が敗北し続けていることと、皇太子レオニスの生存が確認されたという報告が立て続けに入ったことで、ビゼーはアルトイリス侯爵家への攻撃を躊躇するようになってしまったのだった。


「勿論ビゼー様のご事情は存じておりますが、我が主からはこれ以上待てないと警告されております。私も忙しいので、一旦はこの場去りますが、もし次に私がこの場を訪問した時にもまだ進行を躊躇するようであれば…………息子様を代理の侯爵にするという手段もございますので、どうかお忘れなきよう」

「むぅ…………」


 こうして、ブレヴァン侯爵の命令を一方的かつ脅迫的に伝えたバラドワイズは、傍若無人な態度のままその場を後にした。

 トライゾンとその部下の傲慢な態度に、ビゼーは内心ダース単位で文句を言ってやりたかったが、立場が立場なのでどうすることもできず、果たして本当にアルトイリス侯爵領を攻撃すべきか、頭を抱えることになる。

 だが、彼への難題はそれだけでは終わらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ