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第29話 モントレアル領の戦い 8

 その一方で、見張りだった魔族兵はそのままヤンガラがいる本陣まで知らせに行くのだが……大軍で包囲しているのが仇になり、攻撃を受けた陣地からヤンガラがいる場所まで遠く離れていたため、知らせが届くまでかなりの時間を要してしまった。

 だが、同じころ魔族軍の本陣では、略奪に行ったはずの魔族軍兵士がパニック状態で逃げ帰ってきたことで、人間の軍がすぐそこまで来ていることを知った。


「お前ら、どうしたそのザマは!?」

「はぁ、はぁ……ヤンガラの兄貴、てぇへんだ! 滅茶苦茶強いニンゲンどもの軍が俺たちに襲い掛かって……!」

「オベルの兄貴も死んじまった! せっかく集めた戦利品も、奴らに奪われちまった! ちくしょうっ!」

「オベルが死んだだと!?」


 ヤンガラは雷が落ちたかのような大声を発し、周囲の魔族兵たちを驚かせた。


「あの忌々しい聖剣を持った奴らはどっか行ったんじゃなかったのか?」

「それが……今度のニンゲンはメスみてぇなひょろいオスのくせに紫色のデッカイ剣をぶんぶん振り回しやがって……! 下っ端たちはおろか、部隊長まで布切れみてぇに斬り殺されたんだ!」

「クソっ、ニンゲンの新手か! 面倒なことになったものだな……」

「ど、どうする兄貴っ!?」

(オルグがやられた上に、逃げてきた奴らのあの怯えよう……紫色のデッカイ剣を持ったとかいうのがどんな奴らかは知らねぇが、相当強力な戦力なのは間違いねぇ。かといって下手に動けば、城の中に追い詰めたニンゲンどもが襲ってくる可能性もある)


 ヤンガラは難しい選択を迫られた。

 歴戦の武将である彼は、人間を見下しがちな魔族軍の中でもかなり敵の戦力を正確に考察できるのだが、それゆえ今自分たちがただならぬ危機的状況に陥っていることも理解した。

 そして、彼の頭の中には「撤退」の二文字が浮かんだが…………


(今ここで逃げたら、舎弟どもに示しがつかねぇ。敵がどのくらいの数いるのかわからねぇが、今は数で力押しするしかねぇな)


 明確に不利だと判断できないうちから退却していては魔族の……ひいてはオーガの部族内の威信にかかわる。

 ヤンガラがここで踏みとどまって戦うことを選んだところで、先程ヴィクトワーレの騎士団から襲撃を受けた部隊の見張りが、ものすごい勢いで本陣に駆け込んできた。


「ヤンガラさまぁっ!! てぇへんだてぇへんだ!! ニンゲンどもが俺たちの背後から攻めてきた!」

「落ち着け、まずは敵の数は分かるか」

「そ、それが……数えちゃいなかったけど、そんなに多くはなかったですぜ。けど、連中妙に強くて……」

「なるほどな。あと一つ聞くが……ここに来るまでに、そのことをあちこちで言いふらしたりしたか?」

「……実は、敵襲だって叫びながらここまで走ってきたもので」

「なんだと、やっちまったなぁ!!」

「ひ、ひえぇ、堪忍してくだせぇ……」


 伝令がここにたどり着くまでに敵襲だ敵襲だと叫びながら来たということは、すでに魔族軍の半数以上にそのことが伝わってしまったということだ。

 おそらく今こうしている間にも、一部の魔族の部隊は勝手に持ち場を離れて、攻撃を受けた陣地に加勢しようとしていることだろう。

 ヤンガラは余計なことをした伝令を思わずぶん殴ってやりたい衝動にかられたが、思いとどまって思考を切り替えた。


「こうなっちまったからにはやることは一つだ、全員、俺に続け! 遅れるやつがいたらぶん殴るぞ!」

「おうっ!!」


 ヤンガラの号令で、魔族軍の兵士たちは一斉に鬨の声を上げながら突撃を開始した。

キャラクターノート:No.015


【名前】ヤンガラ

【性別】男

【年齢】14

【肩書】魔族軍軍団長

【クラス】オーガウォーリア

【好きなもの】一本気が通った奴 家族

【苦手なもの】野菜

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