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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第11章 鴉は舞い、狼は奔る
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第252話 詰問

「ドヴォルザークよ……このことをどう弁解するつもりだ」

「いや、その……」


 襲撃のあった日の翌朝、南陣地の司令部テントでは、トライゾンの前でドヴォルザークをはじめとした将や騎士たちが揃って項垂れていた。

 はっきり言って、今回の夜襲はほとんど事故のようなものであり、余程陣地構築に精通している人でなければ対策など不可能なのだが、トライゾンの手元に上がった被害報告の内容に目を通したトライゾンは、どうしても彼らをなじらなければ気が済まなかった。


 一応、あれだけの混乱にもかかわらず、兵士の被害は100人にも満たなかったのだが、何より武器貯蔵庫が襲撃されたことにより、南陣地に蓄えられていた膨大な数の物資……特に攻城戦に必須な矢の束の大半が焼失してしまった。

 不幸中の幸いだったのは、武器の貯蔵場所は広大な陣地に2か所あったので、すべてを失うという事態は免れたものの、大雑把に数えて用意していた矢の半分を失ってしまったというのは、あまりにも痛すぎた。


「特に貴様は、無能な奴は味方でも容赦なく殺すと言っていたな。貴様は今の自分をどう評価する?」

「……某は偵察を怠っておらず、見張りも通常定める人員を手配しております。しかし、やはり傭兵どもの無能さは如何ともしがたく……また、敵がここまで来たということは、東陣地のロパルツが何もせず目の前を素通りさせた可能性もあるかと」

「ふん、あくまで他人に責任を転じるか。だがまあ、今回は貴様のこれまでの功に免じ、処罰は保留とする。今回のミスは今後の活躍で帳消しにするんだな」

(責任を転じているのは閣下も同じだろうに……)


 そもそも、侯爵軍の最高司令官は目の前にいるブレヴァン侯爵なのだから、今回の夜襲の被害の責任の一端はトライゾンにもあるはずだ。

 そのことを棚に置いて、部下たちだけを詰るトライゾンに、ドヴォルザークは内心で不満を漏らすも、侯爵家に仕える重臣である以上、腕っぷしに自信があろうとも、彼に逆らうことなどできなかった。


「とにかく、これ以上の醜態をさらすようであれば、功臣の貴様と言えど、容赦なく処罰するからそのつもりでいることだ。それと、大量の矢を失った以上、しばらく大規模な攻撃は控えねばならんな」

「し、しかしそれでは、敵に力を温存する時間を与えることに……!」

「貴様は脳みそまで筋肉でできているのか! 矢がなくてどうやって城兵と撃ち合うというんだ! そうでなくとも貴様は傭兵を損耗させすぎる、どうしても攻撃をしたいというなら、すぐに失った分の矢を用意するんだな」

「……承知いたしました」


 ドヴォルザークとしては、とっとと攻城戦を再開するか、さもなくば敵の援軍を優先的に撃破したいのだが、慎重派のトライゾンがそれを許さないし、何より今回ばかりはトライゾンの言うことが正論だった。

 彼の頭の中では、すでに今回の夜襲に対する反省は抜け落ちており、どうやって失った分の矢を補充するかを考え始めるのだった。

 だが――――


「それともう一つ、即刻現在の警備体制を見直せ」

「警備体制の見直しですと!?」

「あれほど容易く武器貯蔵庫が襲撃されたのだぞ、陣地の防備に不備があったとしか考えられん。これがもし襲われていたのがここだったら、わが軍は瓦解していたところだったのだぞ。そうでなくとも、食糧貯蔵庫を襲撃されれば、戦いどころではない。このような不安を抱えたまま、攻城戦を続けることなどできん。早急に、私が納得する警備体制を整えなおすのだ、いいな?」

「くっ……承知、いたしました」


 防衛を強化するということは、すなわち、それだけ攻撃に回せる兵が減るということだ。

 そして、実はこれこそが、シャルンホルストが夜襲を仕掛けた真の目的だったのだ。

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