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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第11章 鴉は舞い、狼は奔る
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第250話 史上最大のイリュージョン

「こんなところに敵がいるわけがない……こんな方から敵が来るわけがない……無意識の思い込みを利用して、意表を突くのが手品の肝だ。さあ、今夜は史上最大のイリュージョンを見せてやろうじゃないか」

「おおっ!」


 リヴォリ城の北側に青狼学級を送り届けて以来、姿を見せていなかったシャルンホルストは、この日の夜、なんと陣地の南側に突如として現れた。

 彼が率いる兵力は500人程度で、そのまま敵の陣地に乗り込むのは自殺行為にしかならない程度の数しかいなかったが……事前の準備を重ねて、最も効果的なタイミングを見計らっていたのだ。

 彼らはこの日のために、地元の人しか知らない道を通って敵陣の裏側へと抜けると同時に、高所から敵の陣地の構造と彼らの日々の動きの調査を長い間かけて観察し、その結果としてブレヴァン侯爵軍の南陣地がどのようなスケジュールで動いているのか、そして弱点となる場所はないか念入りにチェックしていた。

 そして、敵陣地は武器庫の位置が比較的襲撃が容易であることを突き止め、しっかりとした計画を立ててから攻め込んだのであった。

 ブレヴァン侯爵軍にしてみれば、何の前触れもなく自分たちの後ろから敵が沸いてきたのだから、たまったものではない。


「目標は敵の武器貯蔵庫だ、各自自分が与えられた役割を全うするように。ただし、無理は禁物。実行が不可能だと判断したら、すぐに逃げて構わないからな」


 シャルンホルストは改めて仲間や兵士たちに沿う通達すると、自ら先頭に立って剣を抜き、召喚獣たちが蹂躙していった場所から突入した。


「よくやったサンシール、使い捨てとはいえ、凄い威力だな」

「ククク、理論を実践で試すのは初だったが、上手くいって何よりだ。この後は私も、人間の軍の指揮に移ろう。召喚獣は制御不能だからな」


 一応、サンシールはもう数匹くらい弱い精霊などを召喚することはできるが、それはもしものための保険として取っておくとして、彼女自身は戦わずとも指揮に専念することは可能なので、突入してきたアルトイリス兵の一部の指揮を担うこととなる。

 召喚術士たちが召喚してけしかけた魔獣や召喚獣たちは、一時的に見張りの兵士たちを混乱に陥れたものの、一体一体の強さは大したことないため、次第に敵陣を津秩序に走り回ってバラバラになったところを、兵士たちに倒されてその数を減らしていった。

 サンシールが放ったケルベロスも、あらかた人間を喰らい尽くして、ついでに兵士たちの夕食を横取りして満足したのか、次第にやる気をなくしていき、途中で地面に黒い染みのようなものを作ってそこに溶けていく形で姿を消していった。

 魔獣たちがいなくなったことに安堵するブレヴァン侯爵軍だったが……間髪入れずに、今度はきちんとした人間の軍が攻めてきたのだからたまったものではなかった。


「畜生っ! こいつらどこから湧いてきやがったんだ!? こいつらも召喚された魔獣の一部か!?」

「なんでこんなところに敵軍がいるんだ! 偵察の兵はさぼってたのか!?」

「と、とりあえず食糧庫と侯爵閣下の安全を優先しろ!」


 完全に指揮系統が乱れたブレヴァン侯爵軍は、組織的な抵抗ができず、各自がバラバラに動くほかなかった。


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