第237話 青狼の狩り 7
二手に分かれた青狼学級の生徒たちは、早速各地で村や町を荒らしまわる傭兵団に対して、要所要所で奇襲を仕掛け、散々に打ち破って見せた。
何しろブレヴァン侯爵軍の中で略奪に向かう傭兵は全体で3000人程度であり、数自体はそれなりにいるが、それぞれがバラバラに動いているせいで一部隊ごとの兵士数はかなり少なかった。
一番多かったのが初日に戦った傭兵団の500人で、そのほかは300人前後が多く、中には100人程度で行動している部隊もいた。
そのような少数の部隊を相手に、1000人全員で殴りかかるのは確かに非効率的であり、500人規模の部隊2つで十分相手することできたのだった。
そうしているうちに、彼らは3日間で総計2500人ほどの敵兵を撃破することに成功した。これはヨランドが持っている兵士全体の四分の一に当たる大戦果であった。
ただ、兵を分けたことで敵を全滅させることができず、わずかとはいえ取り逃がしてしまうことも出て来た。その数少ない生き残りの兵士たちは、すぐに陣地に逃げ帰り、略奪に向っている最中に正体不明の敵兵に襲われたことを報告するのだった。
「なんザマスって!? 略奪に向かわせた傭兵部隊が負けて帰ってきたザマスの!?」
「は……はいっ! 所属は不明でしたが、おそらくは例の敵の援軍部隊かと……」
「キイイィィィィ!! よくもワタクシの邪魔をしてくれたザマス!! ロパルツは何をしているザマスか!?」
まさかこんなところに敵がいるとは完全に想定外だったヨランドは、怒りで手に持っていたハンカチを食いちぎらんばかりに嚙み伸ばし、恐ろしい厚化粧のところどころにひび割れを生じさせていた。
「それで、敵はどのぐらいいたんザマス?」
「わかりません……それなりにまとまった数はいるようですが、偵察兵からもそのような部隊を発見したという報告は上がっておりません」
「ヌヌヌ…………もういいザマス! このままでは目障りザマスわ! もっと大勢の偵察兵を出すザマス! そして見つけ次第根絶やしにしてやるザマス!」
「ははっ!」
今までは油断して積極的な偵察を怠っていたが、元々彼女の部隊は戦利品になるものを見逃さないために偵察兵を多めに配備している。
こうして、軽騎兵からなる少数の偵察兵をいくつか出したところ、斥候の一部から敵を発見したと報告が入った。
ヨランドはその報告を聞くと、これからの攻撃に支障をきたさないよう、積極的に排除しようと試みた。
「侯爵からは敵の増援を無理に追うなと言われておりますが……」
「現場には現場の、将には将の判断があるザマス! いちいち杓子定規に命令を聞いてはいられないザマス!」
ある意味彼女の言うことももっともであるが、ここで青狼学級の部隊を一気に撃滅しようとするのは、あまり良いとは言えなかっただろう。
ヨランドは直ちに部下の騎士に兵3000人を率いさせ、後方をウロチョロする敵の増援が発見されたという地点まで出撃していったが、彼らはいつの間にか姿を消しており、どこに行ったのかわからなくなった。
一体どこに消えたのか、再度偵察兵を出して探りを入れたところ、なんとここからかなり東の村で敵部隊を発見したと報告があり、ブレヴァン侯爵軍は直ちにそちらに軍を向けたが、やはりすぐにいずこかへと消えてしまった。




