第233話 青狼の狩り 3
「こちらに向かってくるブレヴァン侯爵軍の傭兵たちを確認したわ。数はおよそ500くらい」
偵察に出ていた青狼学級の生徒が、レムリアに敵の接近を報告した。
比較的大きな村へと続く森に挟まれた比較的広めの道、そこを今まさに略奪に向かうであろう傭兵団が意気揚々と歩いていた。
ここまで来る間に、すでに村を1,2個荒らしまわって来たらしく、人力で牽く荷車には金の入った袋や、食料、薪と言った物資がそれなりの量積まれているそうだ。
おそらく、荷車の積載にまだ余裕があるので、積めるだけ積んで帰ろうとする魂胆なのだろう。
「よし、みんな! いよいよボクたちだけの初めての実戦だ、緊張するかもしれないし、失敗することもあるかもしれない。けど、そんな不安を感じたら……今までの訓練の日々を思い出すんだ。大丈夫、ボクたちが学んできたことは、決して裏切らない」
初めて戦場に立つ学生たちは、多かれ少なかれ緊張した面持ちだった。
かく言うレムリア自身も、顔が引きつりそうになるのを抑えるのに精いっぱいだ。
「お前たち、事前に言ってある通り、今回私は後ろから見守るにとどめる。よほどのことがない限り、私の指示は仰ぐな、各自で判断して行動しろ」
ローレル先生も、彼らの初実戦を後ろから見守るだけにとどめるようだ。
いざとなった時は助けに入るだろうが、基本的に担任の助力は得られないと考えてよい。
「今回は『フォーメーションB』で行く。1班は私が、2班はセルニに任せる。合図は笛で出すよ」
「承知したわ」
青狼学級が持つほかの学級にはない特徴として、彼らは「フォーメーション」と呼ばれるいわば「作戦のテンプレート」を叩き込まれている。
こうすることで、事前に細かい打ち合わせを行わずとも、即座に自分たちが何をすべきかわかるというわけだ。
レムリアが通達した『フォーメーションB』は、級長と副級長の部隊に分かれて敵を左右から挟み撃ちする作戦であり、生徒たちは指示に従って道の両側の森に身を潜ませた。
(やはり……みんな緊張してる。向こう側の殺気も分かるくらいだ……やっぱり実戦だと勝手が違うか)
森を縦断する道は異様なほどに静まり返っている。静まり返りすぎて却って不気味に思うほどだ。
そして、レムリアにも仲間たちの緊張が伝わってくるようで、もし相手の警戒心が強ければ、彼らは気配を察知されてしまっていたかもしれない。
しかし…………略奪に赴く傭兵たちの一団は、もうこのあたりに敵はいないと思い込んでいるようで、周囲を警戒する様子は微塵もなかった。
バカみたいに笑いあいながら、村で暴虐の限りを尽くた時の話で盛り上がっている者もいれば、歩きながら酒瓶を煽っている者すらいた。
そして、彼らはまんまと生徒たちが身を伏せている場所を通過しようとしたところで――――森の中に甲高いホイッスルの音が鳴り響く。
「あ? なんだ今の音は?」
傭兵たちが、どこからか聞こえてきた音にふと足を止めた次の瞬間、森の両側から一斉に矢が放たれた。




