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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第11章 鴉は舞い、狼は奔る
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第225話 田園地帯の罠 2

「なに、敵は一戦も交えずに逃げただと?」

「はっ……各傭兵隊長たちからはそのような報告を受けております。なんでも、敵はこちらの姿を見るなり、物資すら放棄して慌てて逃げ出したとか」

「妙だな、あんなところに陣地を構えるような命知らずの連中が、傭兵どもが向かって行っただけで戦わずに逃げるものなのか?」


 陣地を襲撃した結果、敵が尻尾をまいて逃げだしたという報告を聞いたロパルツは、気難しい顔の眉間にさらに皴を寄せ、腑に落ちないといった表情をしていた。

 彼とて武一辺倒の猪武者というわけではなく、ブレヴァン侯爵軍の誇る代表的な将軍ゆえ、こういったことへの嗅覚は比較的鋭い方だ。


「敵の罠という可能性は?」

「それも考えられますが、あの付近は遮蔽物がない田園地帯が広がっており、隠れる場所と言えばいくつかある風車小屋程度です。兵が伏せていたとしてもたかが知れておりますでしょう」

「だったら益々わからんな。とにかく、しばらく奴らの動きを見定めるぞ」


 こうしてロパルツは敵にどのような罠があるかを見極めるため、積極的に打って出ることはせずに相手の様子を伺うことにした。

 そして3日後、またしてもゼークトが率いるアルトイリス軍の援軍部隊がマコンクールの田園地帯に進出し、前回の場所とはやや離れた位置に陣地を構築し始めた。

 それを見たロパルツは、今度は以前の倍の2000人の傭兵を向かわせ、建設中の陣地を襲撃させると、ゼークトたちもまた前と同じように一戦もすることなく、陣地に物資を置きっぱなしにして撤退した。

 傭兵たちは先を争って物資を奪い取り、一部では物資を横取りしようとする者たちで喧嘩が発生するほどだったが、それでも敵の反撃などはなく、ほとんどタダ同然で戦利品を手に入れて帰ってきたのだった。


 またさらに3日後、ゼークトたちは性懲りもなく田園地帯に進出し、前回よりもさらに距離が離れた場所に陣地を築き始めた。

 ロパルツはまたかと思いながらも、前回よりさらに数を増やして3000人の傭兵を襲撃に向かわせたところ、今度もゼークトたちは戦わずに物資を放棄して逃げ出し、傭兵たちは味方同士で戦利品を奪い合いながら、何事もなく戻ってきた。


 この一連の戦い(と呼ぶのも烏滸がましいほどお粗末なやりとり)で、東陣地の傭兵たちはすっかり敵の援軍を侮り始め、ブレヴァン侯爵軍の正規兵たちも、傭兵たちばかりがいい思いをするのを恨めしそうに眺める始末であった。

 そして、当初は罠を警戒していたロパルツすらも、ただ単に敵が馬鹿なだけではないかと思い始めており、もしどこかで敵が伏兵を出してきたとしても、姿を現したときに正規軍で蹂躙すればいいかとすら考えるようになった。

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