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聖剣を継げなかった少年は、魔剣と契りて暴君を志  作者: 南木
第11章 鴉は舞い、狼は奔る
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第223話 ブレヴァン侯爵家の四将軍

「トライゾン様、斥候からの報告が入りました! ここより10セレル(約16km)西のバニュ丘陵にユルトラガルド家の援軍と思わしき軍勢が目撃されました。兵力はおよそ2000程度とのこと」

「ふん、おそらくそれはアルトイリス軍だろうな。奴らめ、もう動いたか、予想よりもだいぶ早いな。して、連中はこちらに一直線に向ってくるつもりか?」

「それが……敵の軍勢はいったんその場で進軍を停止し、丘陵地帯の小山に陣地を構築しているようです」

「随分と離れた位置に陣地を構築するのだな、まあ無理もない。2000程度ではわが軍相手に手も足も出んだろう。さしずめ、形だけでも援軍に来たことをアピールするのが目的なのだろうな」


 リヴォリ城を包囲する円周陣地の南側に位置する本陣で、トライゾンは斥候から敵の援軍が迫っているという報告を部下の騎士から受けていた。

 斥候によれば彼らはユルトラガルド家の旗を掲げているようだが、トライゾンはすぐに彼らの正体はアルトイリス軍の兵士で構成されていることを見抜いた。

 だが……彼は援軍の本当の目的までは見抜けていなかった。

 トライゾンは、援軍の目的が単なるリヴォリ城への救援軍だと思い込んでしまったのである。


「して、将軍4人にはどのような指示を?」

「うむ……2000人程度とはいえ、城攻めの途中で後ろから攻撃されるのは厄介だ。東陣のロパルツには背後を警戒し、敵の方から攻めてくるまでは手出しするなと伝えておけ。それ以外の陣には当分無理攻めすることなく、城を弱らせるのを優先させよ」

「かしこまりました」


 こうしてトライゾンは将軍たちに大まかな指示を出すと、自らは包囲されたリヴォリ城を眺めながら、暖かい紅茶を啜るのであった。


 リヴォリ城を包囲するブレヴァン侯爵軍は、南北4つの陣地にそれぞれ重要な将軍が1人ずつ配置されて指揮を執ることになっていた。

 まず、トライゾンの本営がある南側陣地には、ブレヴァン家随一の猛将と言われるドヴォルザークがおり、東には先程名前が挙がったロパルツ将軍が、北には女将軍ヨランドが、そして西にはユルトラガルド家を裏切ってブレヴァン侯爵軍の攻撃を招いた張本人であるボルツ伯爵がいる。

 その中で、東に陣地を構えるロパルツは、ブレヴァン侯爵から通達された伝令の文章を読んで、若干面倒くさそうな顔をした。


「東から敵の援軍が来てるから、攻撃は控えて背後に気をつけろだぁ? ちっ、それじゃあほかの連中が攻めてる間も、俺たちは増援の足止め優先ってことかよ、つまんねぇな」


 やや白髪交じりの金髪で、鷲鼻気味の厳つい顔をした中年男性ロパルツは、比較的好戦的な人物であり、性格的にもやや短慮かつ直情的だが、ブレヴァン侯爵軍の騎士団を束ねるだけあって戦いにはめっぽう強く、無骨でまっすぐな剣を振るう戦い方をすることから「鉄腕卿」の異名を持っている。

 そんな彼は今回の戦いでも自軍の一番槍を目指す気満々であったが、背後に邪魔な軍が現れて攻城戦に本気を出せないことが非常に不服そうであった。


「敵兵は高々2000人だろう? だったら俺たちの軍で一気に踏みつぶした方がはやくねぇか?」

「しかし将軍、侯爵閣下からは敵が近づいてくるまでは、こちらから手を出すなとお達しです」

「ふん、トライゾン様が軍に口を出すと碌なことがねぇんだがな……まあいい、敵の増援がリヴォリ城への救援だとすれば、待ってりゃそのうちここに突っ込んでくる。その時に反撃して一網打尽にすれば文句ないだろ」


 トライゾンの軍事的センスのなさは将軍たちもよく知っているようで、ロパルツも上司の命令にわかりやすく悪態をついたが、敵を待ち構えていればそのうち向こうから来るだろうと考え、ひとまず今は敵を待ち構えることにしたのだった。

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